第13話〜作戦続行不可能 1
とりあえず、お久しぶりです。
そして、すみませんでした。
今回の話は、かなり短いです。
ご了承下さい。
顔を赤らめながら話すアイツ。嫉妬して顔が少し膨れるアイツ。楽しそうな顔をするアイツ。自分が特別な存在だと勘違いを始めるアイツ。私を妹だからといってモブ化するアイツ。邪魔なアイツ。
『消そう』
私の深層意識、不変の感情、動物的本能、合理性、全てが『美香』という存在に警鐘を鳴らした。
『やつは危険だ』『新たな恋のライバル登場!』『・・・・殺す』『これ以上いらない』
叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ!胸が熱い。苦しい。楽しい。痛い。痒い。楽しい。
いらない。いらない。いらない。いらない。いらない。いらない。いらない。いらない。いらない。
私。私。私。私。私。私。私だけ。私だけ。私だけ。私だけが・・・・・
私だけが・・・・・お兄ちゃんを愛せる。
『私から奪うな』
流れが変わった。
───────
「?美香どうしたの?そんな暗い顔して。何かあった?」
面倒見が良く、どこまでもお人好しで優しいニーナは、下をうつ向いてぶつぶつ独り言を唱え始めた美香の隣に寄り添った。ただ自然と。さも当然のように。
そこに俺に介入する余地はない。というか、介入したくない。出来ない。
怖いのだ。
たった今あった出来事。美香が先ほど口にした言葉。
『「お兄ちゃん、待って。」』
その一言にどれだけ恐怖を覚えたことか。
俺だけでなく、
奴隷の彼女達も、
今自然と彼女の隣にいるニーナでさえも、
一瞬で背筋が震えた。
やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。
動物的本能。
人それぞれ形は違えど、思い出した。
遥か遠き、彼方。何億年も前に、人類がその身に刻んだ印。
DNA、遺伝子に組み込まれた記憶。
膨大に蓄積されてきた情報の宝物庫。
その全てを持って、今のこの状況を表すとしたら、誰もがこう思い出したはずだ。
『死』
蓄積されてきた情報が幾億兆にも重なりあい、混じり合い、歪んだとしても結果は1つの答えに集束する。
『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』『死』
感情ではない。そこに存在するものだ。身近に。そして、唐突に。
愛しくて、悲しくて、切なくて、惨たらしい。
誰もが一度は経験する絶対無二の運命。その象徴たるものが存在してしまっている。
これは、悪魔なんて生易しいものではない。
『死神』
誰もがそう感じた。
「・・お兄・・・」
今思えば、ニーナの根性、精神は人一倍だった。なぜならば、今もこうして俺の目のまで、美香の隣に寄り添っているからだ。
「大丈夫だよ。美香。安心して。お兄ちゃんなら、そこにいるよ。」
俺には無理だ。耐えられない。今の美香には、近づくことが出来ない。あの日の記憶が、新たに人類に刻まれた情報が、俺をすくませている。
「・・お兄・・お兄ち・・・・」
情けない話だが仕方がないのだ。なぜなら俺には、その絶対無二の運命を若いうちに経験する覚悟なんてまだ一つも出来ていないんだから。
「ほら、ハルアキくんも何か言ってあげて。ね?・・・ほ、ほら早くっ・・」
ニーナの声には、十分な元気が乗っていない。
やはり、彼女も怖いらしい。
そりゃ、そうだろう。前にあんな出来事があったんだから。
割りきってるほうが異常なんだ。友達だからと。分かり合える仲間だからと。恐怖の感情を押しきって、逆に信頼関係をもっと得ようとしている。
見るからに異常な雰囲気を醸し出しながら何もしてこない美香は、それだけで異質だ。異常だ。
前回の様子を知らないアンナさん達には分からないことだが、俺とニーナはしっかりと感じ取っている。
今回は違う。前のよりも酷い何かが起こる。
恐怖量は二人だけ倍々。余計な行動は一切起こせない。
「ああ、そ、そ、そそそうだな。な、なあ、美香?お兄ちゃんはここだぞ?」
噛みまくりだ。気のきいた言葉が出てこない。こんな状況だが恥ずかしいな、これ。
その様子を見たニーナが苦い顔をしている。
(なんだ余裕あるじゃないか。)
俺の心の中は彼女のおかげで少しだけ笑みで溢れた───
「私の所有物がなんで勝手に喋ってるの?」
───気がした。
覚醒は第2段階へと昇華される。
この回は、もう少し続きます。
なのでどうか作者が早めに上げるよう、文字数を多くするよう、願っていてください。