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第9話〜遭遇戦〜バウンダーウルフ 覚醒編

すいません。遅くなりました。

今回は少し短くなってしまいました。許してください。

それでは本編へどうぞ。

「おりゃ、おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」


俺は今現在、無抵抗のバウンダーウルフを全身くまなく切り刻んでいる。その様子は、周りから見ればただの弱いものいじめにしか見えないが、実際こいつには、重傷を負わせられている身なのでそんな世間体は気にしない。というか、そもそもこの行為自体が誰の目にも見えていないのだから、何の心配も要らないのだ。


え?


誰かは必ず見てるはずだって?


そんな一方的なリンチは何があっても許さないって?


ざんねんでした。今の俺は誰にも見つけられないよ。


なんでかって?


それは、俺の世界から音が消えた直後の話に戻る。


─────

俺は、その瞬間死を覚悟した。迫り来る炎の玉。逃げられない。だけど、生きたい。矛盾する感情の中で、俺はただ時間が進むのを待っているだけだった。


だが、突如周りの音が一切聞こえなくなるという謎の現象が起きる。それと同時に、俺の方に向かってきていた炎の玉が顔すれすれで止まり、空中に静止、固定された。


炎の玉に当たらなかった俺は爆発し骨が塵とかすこともなく、万有引力の法則に従って、地面の上に降りる。


「助かった・・・のか?」


俺は安堵の息を溢す。自分は死ななかった。助かった。それだけで頭がいっぱいだった。だが次の瞬間、俺は周りの景色を見たとたんに頭がオーバーヒートした。


「なん、なんだ?これ。」


そこには、今までに見たことのない景色が広がっていた。勿論、異世界の景色のことではない。今さら、そんな現実めいたことには構っていられない。俺が見たのは、常識的にはまずどこの世界だろうとあり得ない光景だった。


そこにたたずむのは、大きく口を開いたままこちらを見つめ続けるバウンダーウルフの姿。一見、今から俺を襲おうとしているようにしか見えないのだが、その考えはすぐに捨てられることだろう。


1秒、2秒、3秒・・・・いくらたってもバウンダーウルフは眉毛1つ動かさない。それはまるで、博物館に展示されている剥製のようだ。


空中で静止、固定されている炎の玉もそうだ。バウンダーウルフが俺に向けて放ったそれは、前に進むという力が加えられていたはずなのだ。それなのに、空中でいきなり停滞を始めてしまった。


その他にも土埃、小さな虫、太陽、雲、全てのものがその場で移動を停止していた。そこが、空中であろうと、宇宙空間であろうと法則なんかお構いなしにだ。


「これじゃまるで、時そのものが止まっているとしか考えられない現象じゃないか。」


だが、そこでふときずく。そんな状況下で俺だけは動けているじゃないかと。その事実を踏まえて考えると、ただ時間が止まっているだけではないことがわかる。


「俺だけが動ける。周りの時間は止まっている。そんな現象あるのか?・・・いや、待てよ。まさかっ・・」


俺はとっさに自分のステータス欄〈劣化〉の部分を見る。するとそこには、新たに追加された項目が記されていた。


〈劣化〉→〈加速〉

・自分の時間だけ継続的に3600倍に加速させる。加速していられる時間は、本人の魔力量に依存する。(例:魔力300=5分)


「えっとつまりは・・・・」


死ぬ直前で新たな能力が目覚めて、スキル保持者の生命の危機に能力が反射的に発動。自分だけが加速するから、周りの音が俺の耳に入らず、突如音が消える。そして、只今絶讚加速中・・・・


(正直に言うと驚きが隠せない。隠せないのだが・・・)


「時間制限あったよな。・・・・・・。」


『とにかく、今の内にぶっ殺すっ!』


─────

そして、現在に至る。


ね?


この行為を見つけることなんて常人には無理でしょ?


俺は剥製のように動かないバウンダーウルフの足の部分を狙って斬りまくる。普通なら血がたくさん飛び散り、辺りは血の海とかすのだが、俺基準で時間が1/3600倍加速しているバウンダーウルフは血が飛び散るのが圧倒的に遅い。そのため、俺が加速を解除すると、一気に全身から血が溢れ出し、出血多量で即死する。


なんとも、酷い仕打ちなのだが生きる為にはこうするしかない。余裕を持って、敵を倒す。これが本当に1番ベストなことだ。


「そろそろかな・・・」


俺は自分の魔力量の限界が近づいて来たところで、バウンダーウルフを斬るのを止めた。そして、万が一死んでいなかったときの為にバウンダーウルフから10メートルほど離れる。


「じゃあ、『解除』。」


そう言った瞬間だった。


「ベチャッッ!!」


バウンダーウルフの全身から、四方八方に爆発したように勢いよく血が飛び散る。


「ボンッ!」


そして、バウンダーウルフの放った炎の玉も地面に激突する。


「グ?ォ!?」


バウンダーウルフはそのまま断末魔にならない声を上げながら、なんで?みたいな顔をして、その場に横たわった。その姿は、予想していたものより惨かった。


「やばい思ったよりエグいな。」


俺はバウンダーウルフの生死を確認するため、近くまで寄る。すると案の定、鼻を刺すような激臭が漂ってきた。


「うっ、呼吸は、げほっ、してなさそうだ。」


俺は生死を確認すると、直ぐ様その場から離れる。そして、地面に腰をおろした。


「はぁ、なんかあっけなく終わったな。」


「ハルアキくーん!」


そこへ援護する役として後方についた、ニーナがやって来た。


「どうした?そんなに急いで。」


彼女は息をぜえぜえさせながら、手を膝の上についている。その様子から、余程頑張って俺のところに来たということが分かった。


「ハルアキ、君。心配、したんだよ。あのまま死んじゃうかと。」


「おいおい、俺がいつ死ぬなんて言ったんだ?まあ、今回は本当に危機一髪だったんだだが。」


「でも、どうやってあの状況から今の状況に一瞬で持っていくことが出来たの?やっぱり、ハルアキ君が勇者様だから?」


「んー。詳しい話は、美香が起きてからにするよ。大分魔力を消費して疲れたし、しばらく寝ててもいいかな?」


「うん。いいよ。じゃあ、ミカが起きたら起こすね。それまで、二人の体は私が責任を持って守っておくよ。」


「そうか。頼んだぞ。」


俺は疲れすぎて、とっとと休憩したかった。だがこの後、俺達にはモヤイ宅襲撃という予定があるので、深い眠りにはつかないようにしたい。


俺はそう思いながらも、地面に横たわると深い眠りについてしまった。


─────

その頃、とある屋敷のとある一室では、まだ若い20代くらいの男が喚いていた。


「あー、退屈だお。新しいおもちゃが手に入ると思ったのに邪魔されたお。我を誰だと思っているんだお。」


「左様でございますね、モヤイ様。ですが、また明日件の村に参られる予定がありますよ。」


「そうだったお。今度は、ちゃんと納税を払って貰わなくちゃ困るんだお。例えそれが、人間だったとしてもだお。でゅふ。」


モヤイはとっても気持ち悪い笑顔を作る。だが彼は知らない。これから下る〈天罰〉のことを。悪魔を怒らせたら、取り返しのつかないことになることを。


─────

俺が寝て2時間たった頃、美香とニーナは昼ご飯の用意をしていた。昼ご飯といっても、主食が無いただの肉だけなのだが、美香の手にかかれば香ばしくて肉汁溢れる肉料理に変わる。俺はその香ばしい匂いに誘われ、深い眠りから目覚めた。


「ん?あ、ん、いい匂いがする。」


「あっ、起きた。ミカー、ハルアキ君起きたよー。」


「ほんと?ニーナちょっと料理番代わってー。」


そう言うと美香は、ニーナに料理番を任せ俺の元にやってきた。


「おはよう、お兄ちゃん。ぐっすり寝てたね。よく眠れた?」


「ああ、おかげさまでね。それより、体の方はもう大丈夫なのか?倦怠感は無い?」


「うん、大丈夫だよ。私も眠ったら、ばっちり良くなったよ。」


「そうか。それは、良かった。で、バウンダーウルフの死体はどうしたんだ?」


「ああ、あれなら、インベントリの中にしまって置いたよ。物凄く酷い傷だったけど、どうやったの?後で教えてー。」


「いいよ。飯の時にな。」


「分かったー。」


そう言うと美香は、再び料理をしにニーナの方へ帰っていった。


俺はそれから暫く、美香とニーナの料理に奮闘する姿を眺めながら、新たな〈加速〉の能力について考えていた。


(自分の時間だけを継続的に3600倍に加速する能力。つまりは、現実時間の1秒が1時間に感じられる能力。その範囲の中で動ける時間は個人の魔力量に依存する、か。あの時はバウンダーウルフを殺すことだけしか頭になかったが、よくよく考えてみれば恐ろしい能力だな。ゲームに出てくるチートみたいだ。これがあれば、夢の実現は容易くなるか?いや、容易すぎてなんかヌルゲーになりそう。それじゃ、面白くないな。ピンチの時と遊ぶ時以外は、極力使うのはよすか。)


「出来たよー、お兄ちゃーん。」


丁度考えが纏まったそのとき、タイミング良くご飯の用意が出来た。俺は立ち上がり、テーブルと食器の用意をする。相変わらずニーナは口元からよだれを垂らしているが、どうみても可愛いとしか思えなかった。


美香は料理した肉をそれぞれの皿にのせ、フライパンを簡易コンロの上におき席につく。


「「「いっただっきまーす。」」」


俺達はささやかだがとても美味しい料理を食べながら、バウンダーウルフの件で会話を弾ませた。その話のなかで〈加速〉の能力を手に入れたことが二人伝わると、俺をやり過ぎなまでにべた褒めしてきた。それはもう、うざいくらいに。だが、自然と悪い気持ちはしなかった。なぜなら、二人は心の底から俺を思ってくれていたからだ。これは、俺のことが好きな者だけにしかできないことだと思う。なんだか照れくさい。


そんな楽しい時間は、1時間ほど続いた。だがきずくと、すでに気温が1番高い時間帯となっていた。


「おっと、話しすぎたな。そろそろ、片付けてモヤイの屋敷に向かわないと。」


俺達は食器を片付け、再び出発する準備をする。


「よし、もう一回気を引き締めるぞ。」


「「うん。」」


俺達は行く手を阻まれながらも、目標に向かって進んだのだった。

読んでくれてありがとうございます。

実は、現実の方で今日から2週間ほど忙しくなってしまいます。なので、本編の投稿を2週間ほど休ませていただきます。本当にすみません。

もし、誤字脱字、感想等がありましたら、言って下さい。


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