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-5歳 つまりヒロイン不在の悪役令嬢たる10歳の私の話

前後編の予定だったのにまだまだ続くみたいです。思ったよりキャラ濃かった…。

書いても書いても終わらない…。というかラブコメなんだろうかこの話って。ただのコメディじゃないのか?

父の話を聞いてから、二か月後に私は登城とうじょうした。

その二か月間はなにをしていたかというのは推して知るべし、登城のための準備である。

礼儀作法はともかくとして、まさか普段着を着ていくわけにもいかないというわけでドレスを採寸から作ったわけである。

父からも母からも兄からもしっかりと言い含められたがまったく納得のいかない婚約披露(うへえ…!)のための打ち合わせと称しての初顔合わせ。


(本当に、金のかかった城…)


実家はそれぞれどちらも明媚であるが、それは地方にもよるものである。

南の土地にある父の街は色ガラスが配された、風通しのいい窓が大きく屋根の張り出したもので、壁は白木でできた全体的に白っぽいものが多いもの。

それに対し、逆に北の地方にある母の街は窓が小さく、その代わりのように多くあり、黒っぽい石造りで屋根が鋭く尖ったものだけど、雪が多くて埋まるから見分けがつくようにって小人のトンガリ帽子が並んでるみたいになっていて、冬は白と黒だけに染まる街並みの屋根だけが色味が多くてちょっと可愛い。


それぞれの風土に合わせるように南では涼しさを求め、北では熱を求めた作りになっている。


そのどちらもが実家であり、どちらもを我々兄妹は愛している。

特に兄が不在である今年は、どちらもに顔を出さねばならないので私は結構多忙なのだ。


来年からは私も学園へ通わなければならないため、今年は去年の兄よりも名残惜しまれることは間違いない。

ああ、じっさまたちに泣かれるのつらいよう。

ここが私の踏ん張りどころだ!がんばれ!リカルダ!(もう自分しか言わなくなってきた)

じっさまたちが泣く前に私が泣くぞ!それでいいのか!


-------------------------------------------------------------


真っ白な三連塔に鈍く光る金の屋根、所々に彫られた芸術品と呼んでもいいだろう彫刻などは目を見張るものがある。

初顔合わせってことで、先に登城している父が後から来るらしいけど、今日の私は母と一緒に来ている。


屋敷で見る母とは違う、しっかりと化粧をした母の薔薇色の唇はつややかでどこか婀娜(あだ)めいている。

娘の私ですら、どきりとするほどの艶やかさで行き交う貴族たちと挨拶を交わす姿は流石としか言いようがない。

吊り気味の目がどこか色っぽく潤み(化粧で)、扇を持つ指先は既婚と知っていてすら視線を奪うものなのか。

挨拶を交わす貴族たちも陶然とした目を向けている。 母も女優だなー。見習わねば。


「お母様…」

「何かしら?」


お色気過多な母にうんざりと呼びかけるが、慣れたものなのか母に動じる様子はない。

まあ、面の皮なんてぶあつくないと政治家なんてやってらんないよねー(偏見)


「そんなにお色気が過ぎて大丈夫なんですか?」

「今のところ、やりすぎて困る事はないわね。

 ………いざという時に味方になるから」


誰もいない廊下で優雅に歩きながら母は扇の陰でニヤリと笑う。

軍事公爵(将軍)であるバルフェット家総代の母は、なんというか豪快な人だ。

格好にはこだわらない為、毎日外装担当の侍女が苦心していることも知っている。

侍女がやらないと何にもせずにシャツ一枚で飛び出していくような人だしなあ。かあさま…。ほろり。

本来であればドレスよりも馬を。扇よりも薔薇よりも槍を愛でる人だということも知っている。

しかし、それはそれ。これは、これ。

と、いうわけでドレスを着れば婀娜っぽい仕草で魅了する母は、着実に味方(ファン)を増やしている。

そんな母は大層にもてるが、寝台までこぎつけるのは今となっては渋いダンディだけれども当時からすれば優男然とした父のみ(二か月口きいてないけど)というのが実際のところだ。


事情が事情であるため、半年ぶりに顔を合わせると熱烈な余りに子供をほったからかしにして、何日も寝台に籠る生活をしているのは公爵家における公然の秘密(トップシークレット)と言ってもいいだろう。

それで何で子供が二人なんだという疑問は「しっかりと避妊をしているから大丈夫」という母の赤面ものの科白でここ数年は閉じられている。

平気で子供にそういうこと言うな!バカ!バカ!想像しちゃうでしょ!バカ!


気性を示すような深紅の髪に琥珀の目を持つ母と、透けるような銀髪に森のような深い翠の目を持つ父の組み合わせは大変眼福がんぷくっちゃ眼福なのである。


ちなみに言うと、兄は赤に翠の目。

私は銀に琥珀の目と、気持ちのいいくらいぱっきりと別れた色彩を持っている。

大体普通は混じっちゃって、赤に負けるか、銀に負けるかで桃色兄妹(エロ漫画か!)になってしまうところ珍しい。


赤髪は母の一族のみの色彩(いろ)のため母の領地を継ぐことになり、後から生まれた銀の私は父の領地を継ぐことが決まっている。

そう。……生まれた時から決まっているのだ。 決まっているのだよ!


今のところ物騒な話だけど死なない限りはということで、北と南どちらもの教育を受けている。


教育が早いのは二倍の内容を把握しなければならないこと、決まっているとはいえ兄の方に『内政の才』があれば父の領地に、私に『武の才』があれば母の領地を継ぐ可能性があるからだ。

だから、どちらの領地へも随行ついてかなければならないし、どちらの領民からも信を得なければならない。

最近やっと、ついていけるようになったんだよ!えっへん。みたか私の才能を!


(だから、こんなところで油を売っている暇なんてないんだけどね…)


私はこの!婚約《茶番》に二か月も犠牲(無駄)にした。

本来では随行なければならない父の領地にも母の領地にも顔を出さず、面倒な礼法を再履修(おさらい)させられ必要もないドレスのために苦心させられた。

それも今日でおしまいだと思わなければやっていられない。

昨年の兄の出来と同様のところまでいかなければ、父の、母の、民から『外れ』の当主だと認識されてしまう。


「……さっさと終わらせて、さくっとおとなしくてかわいい婿が欲しい」


時代錯誤(アナクロ)だろうが何だろうが、こんなことになるならさっさと許嫁を決めて貰えばよかったと肩を落とすけど、世間に恋愛結婚(ラブストーリー)を推奨させた両親は頓着しない。

(自分たちは政略結婚だったくせに……!)

婚約を告げられてから何度となくギリギリと奥歯を噛み締めるが「顎が鍛えられるからやめなさい」以外の小言のない両親である。


「リカ…。そろそろ人目につくからその顔をやめなさい」


たしなめられてはっと顔を上げたところで、見慣れた父の姿が目に映る。今日もキラキラしてるなあ。父よ。まだ娘はおこだからな!


「小さな僕のおひい様。今日は大変だったね」


にっこりと笑う父は娘の目から見ても信用できない。言われた科白(ことば)も信用ならない(不信)

銀に翠という儚げな色彩(いろ)に騙されがちだけど、腹の底まで真っ黒な内政公爵である。

そういうところがいい。と母は断言するが、私は自分の夫がこんなのは嫌だ。


実際の所、誰からも文句を言わせず両公爵というものを認めさせたのは、

大衆に二人の話を歪めて伝え、大いに歓迎され、人気を博させたのもこの父の手腕(クソ親父の悪どい手並)である。


「本当にそう思ってらっしゃるのでしたら、この茶番を終わらせていただけますよね」


つん、と鼻をそらしそう言うが、二か月ぶりに口を利いたせいか父の顔は笑み崩れたままだ。


「さぁ?どうだろうね。かわいくて頭のいいリカルダを殿下がお気に召したら僕にはどうにもできないな」


にこにこと厚顔に残酷なことを言う父である。

その台詞に鼻で笑って「お父様」と脅せば、同時に母からも「ジーク」と窘めるような声がする。


「………さ、さあ。殿下がお待ちだ。急いだほうがいい」


妻と娘から冷たい目を向けられた父は流石に平静(クール)ではいられないのか、笑みを収めると神妙とした動作で続く間への扉を開けた。


---------------------------------


「初めまして。我が花嫁どの」


と言われ、親に勝手に決められた婚約者(でんか)に両手をつかまれた所で頭が真っ白になった。


(え、え、え???)


もちろん両手を掴んでいるのはこのたび私と婚約しやがりました(涙)

ヴィンセント・ネルン・オズワルト第一王子殿下である。


(あー!!!はいはい。……理解しました。神様どうもありがとうございます!!!)


やったあああああ!!!と、快哉かいさいげたい気分でにっこりと笑みを浮かべた。

タクティクスゲームなら無条件で、勝利条件を満たした気分である。

ポーカーであれば最初に来たカードがロイヤルストレートフラッシュだったようなものである。


まさかの(タイトルすら忘れた)乙女ゲーム転生。

まさかの悪役令嬢ポジション。

とどのつまり私は当て馬の振られ役である。

快哉を挙げずにはいられまい。

この見るからに金のかかっている城の外見(はいけい)で、気づけば良かったのだ。


5年前の違和感はこれか!!!

兄の顔やら自分の顔やらで「ん?」とずっと思い続けてきたのはこれか!!!

テレビのCMにつられて何の気なしDLしスマホでぽちぽち暇つぶしにやっていた全年齢対象(だれでもできる)の乙女ゲーム。


そのメインヒーロー様が、私の目の前にいらっしゃる。


CMで一番最初に見る顔!あーあーあー!見たことあるー!ってやつ。

興味がなくて他のチャンネルに変える前に出るこのご尊顔(かお)

とどのつまり、一番ヒロインとくっつく可能性がある男!

CMにつられた人はとりあえず殿下(ここ)から始めるでしょ?知らないけど(笑)


それが、ヴィンセント様(殿下)


「こちらこそ初めまして。お会いできて光栄ですわ。殿下」


私の人生はまだ終わってないどころか、完全に勝利したという内心の喜びと実際に見るイケメン様の顔に興奮が止まらず、満面の笑顔を見せてご挨拶。

ひゃっほう!神様いい仕事してんじゃないか☆やるなお前!


初めましてこんにちわ。そしてありがとう。

さようなら。お元気で。

わたしは人生の勝ち組だ。おっけー☆りょーかーい!


これなら、あと5年後に見事にうっかりヒロイン様と恋に落ちていただいて(敬語)婚約破棄されても誰からも文句が出ない。

少なくとも私は文句を言わない。言う訳がない!やったぜ☆


うまくサポートして、恋するようにけしかけてを片手間にやっておけば何の問題もない!

南も北も要所だから、「元」婚約者が公爵やってても表向きは問題ないだろう。

「元」婚約者って響き…!最高だね☆


ギスギスするのが面倒だからさっさとヒロインと友人にでもなってしまえばおけ!(引きこもりのぼっちですが何か?)

王妃とつながり作っとけば色々と便宜も図れるだろうし(悪役らしくね?今の私!)


私は私の領地で『やさしくかわいい癒し系の夫』と過ごせれば何の問題もない!


いざとなれば、兄が私と同じ理想の『やさしくかわいい嫁』さえとってくれて子供をポコポコ作ってくれれば養子を取ってもいい!

そうすれば結婚する必要のない私(婚約破棄され令嬢)は学園で色恋のために奔走する必要もなく、安心して勉学のみに邁進できるではないか!

す、素晴らしい…これ以上の幸せってあるのか私。いやない!(反語)


あと5年後までにやっておけばいいことを頭の中で整理しながら、ヴィンセント殿下に感動(よろこび)の目を向ける。


放逐ほうちくされることを待つまでもなく、面倒なことをしなくていい。

天使のラッパが頭の上でパッパラパーと鳴っているような気分で、頬は紅潮し目は潤んでいる。


「………ああ。こんな美しい姫を頂けてうれしい限りだ」


兄と同い年の殿下は、私から目をそっと逸らすとそう言った。


艶めく黒髪と、泣き出しそうな深い蒼の目の王子は豪華声優を起用してるだけあってたいへんなイケボである。

まだ、声変わり途中の掠れたような声がまたかわいいねー(棒読み)


その王子から、褒められて嬉しくないわけもなく「ありがとうございます」と笑顔を向ける。


(どうやって断ったものかと悩んだ二か月を返してほしいけどね)


禿げたらどうするのかと侍女のネリーに本気で怒られるくらいの勢いで髪を掻きむしって悩みに悩んで周囲に当たり散らした二か月を返してくれ。

私のあまりの喜びようが伝わっているのか、両親はポッカーンとした表情でこちらを見ている(もちろん家族しかわかんないレベルだけど)


「気が合ったようで良かった。殿下(むすこ)に庭でも案内させよう。二人で存分に語り合えばいい」


両親の様子には気づかず王が朗らかにそう言うと、いわゆる「後は若い二人で」というお見合いでよくあるパターンな流れになり(まあ若すぎるけど)言われるがままに殿下のエスコートでテラスから庭に降りる。

5年後には破棄わかれるとわかっている王子と二人きりになったが、そのために特に好かれたいとも嫌われたいとも思わない相手と、勝手に私の中で位置づけられたため、悠々(ゆうゆう)とした気分でエスコートを受けながら、庭に咲く珍しい花を案内されて笑顔で対応する。もう、今なら何時間でも笑ってられるわ、私。


「素晴らしいお庭ですね」

「……ああ。ここは4公爵の花が揃っているから」


と、すらすら説明してくれる割には浮かない顔でそう言うと池の真ん中にあるガゼボへと案内される。

東の公爵の領地でしか咲かない睡蓮すいれんが色とりどりに咲き誇っている池は、まるで前世に美術館で見たモネの絵画のようで思わずため息が漏れる。

遠くに見える青々とした木々は、北の領地にのみ咲く桜だろうか。

桜の季節に顔を出すことが出来なかったなと、鬱々(うつうつ)とそれを見ながら考えていれば殿下の笑うような気配がする。


「花が好きなのか?」


その硬い口調に感情の見えない顔つきはゲームのままだな。

と、思いながら殿下に当たり障りがないように頷いた。


「ならば、気に入った花があれば屋敷へ贈らせよう」

「いえ、ここで咲くことが花の幸せなら、私のところへというのはひどい仕打ちなので要りません」


ありがたい申し出ではあったがかぶりを振って断ったところで、「ん?んん?」と思い返す。

初対面で殿下の大切に育てている南の青い薔薇の花を、根こそぎ持って帰ってへこませたんじゃなかったっけ?

いま、ちょっとやってしまった感があったが、咲く花に罪はない。

というか、自分とこ(北でも屋敷でも)に戻ればいくらでも見られるし手に入る花を何で欲しがった?ゲーム版のリカルダよ。……謎だ。


まあいいかと思ったところで、侍女がしずしずとお茶の準備を始めた。

その流れるような美しい動作に目を奪われながら『そういえばここで侍女に無礼を言ってさらに好感度落とすんだよねー。でも、こんだけ綺麗な動作の人にイチャモンつけるのも変じゃね?』と、他人事のように思いながら美味しい紅茶やお菓子をほっこりと頂き、笑顔で侍女にお礼を口にすれば恐縮したように頭を下げられる。


「ところで」


と、お茶を堪能したところで殿下が口を開いた。


「ルーベルトから、その…君が婚約を嫌がっていると聞いた」


兄の名前が出て、きょとんと目を丸くしながら相変わらず兄はいい仕事してんなあと感慨深く思ってにっこりと笑う。今日は大サービスだよ!


「ええ、殿下にお会いするまでは」


だって、誰が面倒ごとに巻き込まれることをうれしいと思うだろうか。

答えは否だ。別に私はMじゃない。

でもそれは杞憂(きゆう)だった。

あなたはメインヒーロー。私は悪役令嬢(当て馬)


家族の愛するこの銀髪を振り乱して、琥珀の目に嫉妬と憎しみを滾らせてなーんてことをする必要がないし、したくもないし。

この人にとりあえず好かれなければいいだけ、物凄くという範囲でなければ嫌われなければいいだけ(つまり多少なら嫌われてもいい)という簡単なお仕事を5年ほどすればお役放免である。


うわべだけでも『愛されないと嘆く令嬢と、形だけの愛のない婚約に嫌気をさす殿下』というポジションでいればいいのだ。

ナイスポジション!ヘイ!ヘイヘイ!


ダウンロードして毎日ちまちまやるのが面倒で三日くらいしか内容を知らないけど(課金にうるさいアプリは速攻消しした)二人がうまくいってないのは三日でも分かったし。

まあ、うまくいってたら当て馬として出てくる必要ないよね。


(でも、確か、案外このひとの攻略って面倒なんだよねー)


と、つやめく黒髪を見つめながら嘆息する。

悪役令嬢(わたし)(ああ…いい響き~♪)を嫌がってはいるんだけど(ばっちこーい☆)親の決めた婚約を強い責任感から破棄することが出来ない。とか、いうやつ。

なお、こちらの情報は始める前に調べる派の私を身を粉にして教えてくれるウィキ○ディア先生が教えてくれました。

せんせい!ありがとう!もうちょっと細かく分岐とか読んどけばよかった(涙)

あ、めんどくさそ。つーか長そう。ああああ分岐多いな!めんどくさい!削☆除☆ってした前世の私を殴ってやりたいです!殴れないのであとで兄でも殴っておきますね!(おい)


長男って大変だよね。私は兄つきの長女だけど継ぐ予定あるから気持ちは分かるよ。重圧(プレッシャー)も多いもんね。

それを超えるくらいヒロインちゃんが頑張って癒してくれればいいけど、そうじゃなければ私の出番である。

はい、当て馬さまの出番ですよ!


「ですが、殿下に想われる方が出来ましたら、私に至らない部分がありましたら。いつでも身を引きますのでそうおっしゃって下さい」


それこそ、いつでもウェルカム☆状態である。至るか至らないかって言ったら、今の時点でもうすでに至ってないけどね。笑えねえ…。

喜々として父に伝えて、さくっと破棄し(別れさせ)てもらうから!それこそ今でもいいよ!と言わんばかりに笑む。うふふふふ。

ああ、ニヤニヤが止まらない。殿下に不審者って思われるって!別にいいけど☆

とりあえず伏線だけ張っておこうとそう伝えて、おいしいお茶で喉を潤した。


「君を愛せるよう努力する」


と、生真面目な発言が飛び出し、思わず仰天する。……うえええ?ま、真面目か!あ、真面目か(納得)

いや、いらないよそういうの。

本当にやめてくださいお願いですから。いやまじで。


「い、いいえ。お心のままにお過ごし下さい。私も、そのようにさせていただきますので」

「そのようにする、とはどういうことだ?他にいい相手がいれば、そちらを愛するということか?」


愛って言葉、10歳そこそこの子供が言うのは結構重いよなー、殿下やっぱちょっと堅物で重いひとだなー。思わずどもるわ。びっくりするわ!

ちょっと言ってみただけなのに、食いつくトコそこかよ。とちょっとひきながら、かぶりを振る。


「そんな無節操なことはいたしませんわ。

 ですが、無理に殿下の愛を頂きたいとは思いません。

 ………もちろん、良好に過ごしたいとは思いますけれど」


好かれたいわけでもないし、嫌われたいわけでもないよ!だから安心していいよ!という言葉を、オブラートに包んで伝えるけどいまいち伝わってないような気がする。

ちなみに最後の科白を付け加えたのは私の良心だから、そこのところだけはきっちり空気を読んでわかってほしい。


「君は思慮深く聡明な人だ」


好感を持たれたようなセリフに内心げんなりする。いやーいらんて。好感とか重いし。

いえ、短慮です。あなたに興味がないただの道化(仮)です。まじ勘弁してください。


「…………あまり買いかぶられますと早々に幻滅なさると思いますわ」


天才と名高い兄を持つと妹は苦労するのだ。

殿下と破棄わかれることが分かってる乙女ゲーム(恋愛遊戯)をやってる暇あったら単語の一つでも覚えてた方がまだ将来の利があるっつーの(ヒドイ)

そして早々にこんな酷い女の私に幻滅して!たのむ、お願い。

一目見て、なんだこの雌豚が!俺の好みはこんな色味のない女と違う!とか、言ってくんねえかな。

マジで頼む。にいさまの友達の人(殿下)

あんまり外に出られないことをいいことに、妹の特権を丸出しにして毎日学園から帰ってくる兄に我儘放題お使いを頼んでくるけどね!


あー。そういえば、今日は隔週で出ている雑誌の発売日だったけど、ちゃんと買ってきてくれてるかな。

朝、準備でそれどころじゃなかったからな。

ああ。たしかゲームのリカルダちゃんは、兄へのコンプレックスであんまり仲良くないんだっけ?

なんでかなー…兄は変人てんさいだけども、変人だからこそ、もうコイツ別モンだし☆って考えればいいのに。


私たち兄妹は今んとこ良好な関係(なかよし)を築いているけども。

あれ?良好だと思ってんの私だけか?


こうなると、攻略対象な兄へのルートもあるはずだから、そこはきっちりつぶしておかないとなあ。おっと、私ひどすぎる?(笑)

兄とヒロインちゃんがくっつくのは別にいいけど、それがイコール、私が殿下とくっつくというのは大変残念すぎる話だから。


とりあえず初回の対面(ごたいめーん)は和やか、かつ友好的に進んでいくことに満足して、私は控えている侍女に笑顔で紅茶のお代わりを頼んだのだった。

リカルダちゃんは真面目ですが、基本能天気で前向きなテンション高め少女です。

熱いバトスがほとばしっておりますが、うまく別れさせてもらえるんだろうか。この調子で(笑)

やっと殿下が登場しました。本当に濃い家族すぎて兄や両親の話も書きたくなるよね。


2016/10/14 改稿しました。一部ご指摘をいただきましたので修正と補足を少しだけ。

      あんまり変わってないような気がしますがとりあえずはこれでお許しください。


そういえばここまでの3話をいろいろちまちま改稿しましたが、

兄の一人称が当初は『俺』だったのか…。誰だよコイツ!って、ちょっとびっくりしました(笑)

ここまで書いてて後編どうするつもりだったんだろう、当初の私…。

そして、今更ですがルビのつけかたを覚えました!(遅いよ)

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