混線2
「そう。何のエネルギーも加えずに。別の言い方をすれば、あらゆる時刻が混線していると言った方が良いかもしれない。例えばだ、日本のどっかの昔話に、夜、腰の曲がった婆さんが目から光を発して大声で喚きながら走って行くというものがある」
「で?」
「その様子を想像すると、何を連想する?」
「バイク…かな…」
「だろ」
「ならタイムトラベルはありふれた自然現象だと?」
「そうかも知れないし、そうでないかも知れない。時間が一方通行だという考えが、間違っているのかもしれない。例えばほら」
彼が手を叩いた。直後、彼の端末のアラームが鳴る。
「おっと、治まったか。何回繰り返した?」
「何回って…」
「アラームが鳴るまでに何回この会話を繰り返した?」
「4回だな」
「そうか、あまり多くなくて安心した。それと数えられてたんだな。良かった」
「良くないって。どういうことか説明しろよ」
「なんかの現象を知るには、現象そのものを見るか、理論としてみるかしないと無理だろ。で、現象そのものを見る手っ取り早い方法として、そっちに注意を向けさせようとしてこんな話をしてたんだ。気づかなければそのままだろうから」
彼の端末のアラームがまた鳴った。彼が端末を睨みつけている。
「設定しといた時刻アラームが聞こえたということは、こっちもやっと治まった。結構しんどいな」
「こっちもだって? 何回繰り返した?」
「何回かな? 100回で数えるの止めたから、分からないな。で、そっちは何回繰り返したんだっけ?」
「だから7回だって言ってるだろ」
「ふーん。単純にこっちの混線がそのまま影響するわけじゃないのか。それに、他にも何かが起きてるのかもしれないな。まぁいいや。それでややこしい話になるが、こうやって混線が治まったので、混線はなかったことになってる」
「でも繰り返したのを覚えているぞ」
「そこなんだよね。どうなるんだろうね? MIBみたいなのが出てくるのかな?」
部屋の扉が開く。
「管理局の者です。これは記録に残されている干渉です」
「管理局? どこの?」
彼が質問した。
「細かい事は内緒です。局長からの伝言があります。『混線の方向でよろしく』とのことです。なお、この後すぐに混線によって巻き戻されます。私が来た事はなかったことになります。局長からの伝言を再度。『混線の方向でよろしく』とのことです。では失礼します」
「そこなんだよね。どうなるんだろうね? MIBみたいなのが出てくるのかな?」
なんとなく二人共、部屋の扉を見る。
「でも、こうやって混線があるっぽいことは分かった。ん? こんなに『混線の方向で進められる』っていう確信を持てるのはなぜなんだろう?」
「私にもなぜかわからない確信があるな」
「というわけで、一緒に研究しないか?」
こんな誘いを断れるわけがない。




