混線1
「タイムトラベルって話があるだろ」
「あるね。パラドックスが起きないのは、タイムトラベルが出来ないからだとか、タイムトラベルが出来てもある事が起こるのは変えられないからだとか、タイムトラベルしていろいろやった結果こうなってるとか」
「それで別のアイディアとしては、タイムトラベルは出来ないけど、時間線を移動することでトラベラーにとっては擬似的に出来てるという考え方とか」
「うん」
「だが、時間線を移動するという擬似タイムトラベルも可能なのだろうか?」
「と言うと?」
「今、私達がいるこことTimeLine:1(TL1)とする。それと、どっかの時点で時間線が分岐していたとする。これは発生していたのだとしても、もともとあるのだとしてもいい。これをTimeLine:1.1(TL1.1)とする。で、これは不可能なことだが、TL1の今、時刻0(T0)において、宇宙全体のスナップショットを取ったとするだろ」
「神視点的なものとしなら、想定だけは」
「で、TL1のT0において、TL1.1に移動したとしよう。その場合、TL1.1の時刻はいつだ?」
「単純に考えるならT0だろうな。T0でないなら、時間の移動もしているか、TL1とTL1.1では時間の進み方が違うということになるかもしれない」
「ということは?」
「時間線を移動しても擬似タイムトラベルにならないかもしれない?」
「そう。では、擬似的であろうとタイムトラベルが可能な条件とはどうなる?」
「時間線毎に時間の進み方が違う?」
「それも一つ。だがなぜ? 物理定数に一切影響せずに? 他には?」
「これは超神視点のような感じになるが、宇宙が始まった時刻が違う?」
「そう。母宇宙のようなものがあるとすれば、超神視点的に言えばそうかもしれない。その場合、各TL毎に初期条件は僅かであっても違っただろう。TL1のT0で全てのTLのスナップショットを取ったとしよう。そしてTL2に移動したとして、擬似的であってもタイムトラベルになるだろうか?」
「移動してもおそらくは全く異なる世界だろうな」
「ということは、タイムトラベルをするには、この時間線の中で行なわなければならない。その場合について思うんだけど、じゃぁトラベラーに関しての時間線はどういう扱いになるんだ?」
「それは主観的なものだから…」
「主観的なものだからそういう特定の時間線は存在しない? なぜ?」
「なぜと言われてもなぁ。じゃぁそういう時間線があったとして、どうなるんだ?」
「要は、トラベラーはタイムマシンがなくてもタイムトラベルするかもしれない。ただの箱に入って、出てきたら、時間を移動している。あるいは、周りの方が一変している」
「何のエネルギーも加えずに?」
「そう。何のエネルギーも加えずに。別の言い方をすれば、あらゆる時刻が混線していると言った方が良いかもしれない。例えばだ、日本のどっかの昔話に、夜、腰の曲がった婆さんが目から光を発して大声で喚きながら走って行くというものがある」
「で?」
「その様子を想像すると、何を連想する?」
「バイク…かな…」
「だろ」
「ならタイムトラベルはありふれた自然現象だと?」
「そうかも知れないし、そうでないかも知れない。時間が一方通行だという考えが、間違っているのかもしれない。例えばほら」
彼が手を叩いた。
「タイムトラベルって話があるだろ」
「あるね。パラドックスが起きないのは、タイムトラベルが出来ないからだとか、タイムトラベルが出来てもある事が起こるのは変えられないからだとか、タイムトラベルしていろいろやった結果こうなってるとか」
私がいる時間線はここだけ。私はここから抜け出せないのかもしれない。
「日本の昔話」:この昔話は実際に存在します。
ループものは、replay(誰の作だったか?)とか、結構昔にあったり。それを元にした?replay/jだったかがあったりとかします。なのでループの中身そのものは書きにくいですね。




