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Valkan Raven 作者:待草雪

#2(未冊子化・執筆途中分)

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2363683/名前:akaituki
新学期始まったね!さーあて張り切って依頼しようぜ、人wwww殺しのwwwww
2363684/名前:匿名希望
>>2363683
ガキ死ね、厨臭え乳臭え死ね
2363685/名前:匿名希望
新年度めんどいんごwwwww新入社員めんどいんごwwww皆殺しにしてくれんごwwwww
2363686/名前:匿名希望
>>管理人
↑が面倒だwwwwwよwwwww老害wwwww殺せwwwww
2363687/名前:minakotosio32615
超ウザイマジサイアクなんだけど。私超ーチョー可愛いのに面接通らないの意味ワカンナイ。面接官と内定取ってる奴マジムカツク殺シテ
2363688/名前:匿名希望
>>管理人
↑ナルシストwwwwwのwwwww痛いwwww豚wwwwキタwwwww殺せwwwww
2363689/名前:匿名希望
>>管理人
>>2363686と>>2363685と>>2363683と>>2363688と>>2363687。
2363690/名前:匿名希望
>>2363687
ブス雌豚がブスなのに着飾って肉工場に面接ですか?ご苦労様、いつか良いお肉になれれば良いですね



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 町外れの過疎地に建つ廃アパートは、静寂に満ちている。唯一聞こえてくる水の音が不自然に忙しなく、それが蛇口から出ているからだと知ったのか知らぬままか、古い木造のベランダから飛び立った小鳥達を追うように、一羽のカラスが黒い羽を広げて空を滑空する。
 わずかに開いた窓から吹く春風に満ちたアパートの一室で、黒いワンピースに白のエプロンを付けた魅姫は、二度焼かれた右手の甲を庇いながら炊事場で皿洗いを終わらせる。水を入れたヤカンをカセットコンロに置いて火を付け、綺麗なキッチンから一歩出ると、目の前に広がっている清潔ではない居間に深い溜息を吐き、足下に転がっている大量のペットボトルを拾い出した。
 ――”家事は全てお前がしろ”、それが彼が私に求めた報酬だった。だから炊事や掃除をする為にこの部屋に出入りしている。"居ろ"とは別に言われていないのだが、私をあの苦しい場所から逃がしてくれた恩返しがしたいから、私が出来るだけ此処に居る。
 あれから三日経って、知る事が出来ている彼の情報は少ない。未だ出会って三日しか経っていないからなのもあるが、殆ど教えて貰えない事が最大の原因だった。
 鈴鷺璃音すずさぎ りおん、二十二歳。登録数字は1946。職業は、殺し屋。
 好きな食べ物、不明。嫌いな食べ物も不明。本人から聞いていないが好きな物は多分音楽と、巨乳……は確実だろう。三日前に見てしまった押入の中の18禁の森に、その系統しか無かったから。
 帰国子女なのだろうか、会話の時々と外来語が流暢な英語になる。昼間は大抵家にいて首元まである髪は下ろしているが、夜の『仕事』の時は邪魔になるからと、ポニーテールにする。そして、
 凄く偉そうなのに掃除と家事が全く出来なくて、姿と声は完璧なのに他の色々な所がとてもだらしない。――
 散らかされた部屋を片付け終わり、沸かしたお湯で煎れた緑茶を二つ卓袱台の上に置く。窓を閉じて新品のカーテンに空中浮遊の踊りを辞めさせると、卓袱台の側に座って湯飲みを持ちながら、向かいに座っている青年の手首を見つめる。
 ――洗い方が雑なのか、袖が伸びきっている黒いVネックシャツが気になる。今度こっそり新しい物を買って刷り替えておこう。そう思ってしまうくらい袖が気になって仕方がない。――
 怠惰全開で煙草を吹かすイケメンに茶が波のように揺れる程の溜息を吐き、魅姫は蔓延する煙草の煙に耐えながら相手の隣に移動すると、MacBookの画面を覗き見る。『殺人依頼掲示板』と呼ばれているwEBサイトを埋め尽くしている、素性の知らない他人達の暴言と我が儘と理不尽の羅列に、下らなさと共に怒りを感じた。
「今日も依頼の書き込みがないね。"おしゃべり"は一杯流れてるけど」
「滅多に来ねえよ。この間はお前の次がたまたま直ぐに来ただけだ。まあ何処に行っても溢れる程の人間しか居ねえんだから、毎日選ぶ程の殺しがある方が俺も地球も万々歳だがな」
 くわえていた煙草を灰皿に吐き捨て、璃音はパソコンのキーボードを高速で叩く。プログラムの書き込まれたファイルがDockから広げ出されて掲示板の投稿欄にコピー&ペーストされると、大量の書き込みが次々と掲示板から消されていく。
 魅姫はパソコンの画面から溢れそうな程積まれた吸い殻の山に視線を移すと、壁に立てかけられているギターケースを眺める。黒い布で出来た質素なギターケースは異様な不気味さを纏いながら、汚れた木の壁の前で制止を続けていた。
 ――あの中身が楽器では無いのは知っている。……安易に取り出してはいけない物だとも。だけど本当は脅威では無い物なのも知っている……やっぱり怖いから出して欲しくは無い物だけれど。
 もう私には関係ないと言われたけど、この人はネットの掲示板を通じて仕事をしている。「指定型殺人掲示板」を運営・管理しており、書き込みの中からふさわしい物を選別し、依頼人と交渉して、金銭を受け取ってから実行するという手順らしい。
 相手の端末を支配出来る程の高度なプログラムを使うのは、書き込みの大半が軽率な遊び感覚の物だからだと、出会った日に教えて貰った。それでも平気で他人を殺したいと書き込む人がこの世界に大勢居るという事実に、サイトを何回見ても驚いてしまう。
 何この人達、馬鹿なの?どうして誰も彼も死んで欲しいの?あなた達こそどうして生きているの?何の為に生きてるの?誰かの運命を決めつけられる程、あなた達には権力も責任感もあるの?――
 灰汁のように湧き上がる嫌な気持ちごと飲み込もうと、息を吹きかけて冷ました茶を一気飲みする。不審に思ったらしい相手に向けられた睨み眼に怖じ気付くが、少女は湯飲みに急須の中身を全て注ぐと、渋くなった茶に口を付けながら青年を見つめた。
 ――知ってる。やり方が滅茶苦茶で人が怖がるのを楽しんでいるけど、彼は本物の殺し屋じゃない。だからあの廃教会の事は……夢。夢なんだから、もう忘れたいのに。――
 あぐらをかいている細い足首が目に映り、脳内に三日前の記憶がぶり返してくる。黒い傘ごしに見た残虐な映像をかき消したくて首を何度も振り、残りの茶を胃に流し込むと、右手の甲が激しく痛み出す。
 焼き付けられた四つの0が水膨れを起こして巻かれた包帯に膿を染みこませている。残っていた痛み止めの粉末薬をポケットから出して口に入れ、胸に渦巻いている様々な疑問を聞く為に話しかけようとした時、
 相手の背中が壁を叩く。ギターケースが手の平に向かって倒されると、鋭くなった茶色の目が睨んできた。

「Getting emotionally involved don't do you no good.」
(?)
「感謝するのは勘違いだと、前に言った筈だ」
 ネイティブイングリッシュの言われた警告を、英語力の無い少女は理解出来ない。威圧的な態度を取られて不気味な沈黙が煙草の煙に溶け込んで室内を包み込む中、部屋の隅に畳まれている布団の隙間から電子音の着信メロディと振動音が聞こえてくる。
 舌打ちをして立ち上がった璃音は汚れたスマートフォンを引っ張り出す。やまない振動音に心底機嫌を損ねたらしく、携帯電話を激しく睨むと、指で受話器のキーを叩いて電話を取った。
「Give me a e-mail.Don't make me say it again.」
 早口の英語の通話が背中越しに聞こえてくるが、内容は分からない。――彼は何故時々英語で話すんだろう?電話の相手は外国人?――
 耳と受話器の距離が離される度、大音量の英語がスマートフォンから聞こえてくる。説教でもされているらしく同じ単語を何度も叫んでいる若い男の声に言葉だけの相づちを打っていた璃音は、電話を切った後でズボンのポケットから千切れかけている黒い紐を取り出し、跳ね癖のある茶髪を一つに縛る。
 締め切った押入を開けてボタン代わりにベルトが三本付いたトレンチコートを取り出し、Vネックのシャツの上に羽織る。スマートフォンをポケットに入れて一服しながら吸い殻の山に湯飲みの茶をかけて消火すると、ポケットから黒い手袋を出して腕にはめながら卓上のMacBookを指さした。
「魅姫。俺が戻ってくるまでApartment houseから出るな。自分の部屋には帰って良いが、コレには絶対に触るな」
 相づちで返事をした少女の顔を見ずに、璃音はギターケースを担いで部屋を出る。孤独にされた魅姫は充満する煙草の煙を苦そうと窓を開けようとしたが、欠けている窓ガラスの一部を見るなり言いようのない不安を感じて手を止めた。
 ――どうして彼は髪を縛ってギターケースを持って行ったの?依頼は来ていない筈なのに。――
動悸に襲われ、キッチンに入って未だ冷めていないやかんの湯を急須に注ぐ。居間に戻って湯飲みに移し、色が付いた白湯を飲みながら無意識にMacbookを覗いてみると、黒い背景の中には相変わらず中傷と決めつけが数珠繋ぎになって高速で流れていたが、
染みのように画面の中央に赤いデジタル数字の列が現れる。悲鳴のような音を出して熱暴走を始めたノートパソコンを浸食していく数字はウイルスのように急激に増えて画面全体に広がっていき、赤く染まった画面が突然水をかけられたように黒に戻ると、
一件の書き込みだけが白いフォントに変わって掲示板に表示されていた。

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2365702/名前:匿名希望

>>管理人さん
はじめまして。殺し屋のあなたの腕を信じて依頼します。殺して欲しい女がいます。お金は幾らでも払います。私の人生を滅茶苦茶にしたあの糞猿を、この世界から今直ぐ消して。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 時が経つ度に暗くなっていく室内は、静けさに包まれている。キッチンから湯が泡を吹く音が微かに聞こえてくるものの、不気味な静寂に耐えるように制止を続けているカーテンの隙間から、自然が夕刻を知らせてくるように朱色の光が差し込んでくる。
 逆さにした茶碗を二つ卓袱台に置きながら、魅姫は何度もパソコンの画面を覗く。今はメニューバーの時計に張り付いている数字の下には埋め尽くされる大量の数字と文字が滝のように流れているが、汚れたトラックパッドに指で何度も触れようとする度に、言いようの無い不安感を感じて手を膝の上に置く。
 岩のようになって長い待機を続けていると、沈黙は突然聞こえた忙しい音によって破られる。飛ぶように身を動かしてキッチンに入ってみると、カセットコンロの上の両手鍋から粘り気の強い水が噴きこぼれ出ており、白い大量の煙が漂ってくると共に、焦げた臭いが鼻についた。
 ――どうしよう、また御飯を失敗してしまった……またあいつに怒られる。――
 鍋を覆っていた火を消して揺れが止まった蓋を開け、食べられない湯浸かりの白米と零れ汁を痕跡を残さないように処分する。シンクの下の引き出しを開いて食べ物を探してみるが、積み重なった新品の調理道具と未使用のゴミ袋以外に物が一切置いておらず、それすらも自分が置いた物であると気付くと深い溜息を吐くと共に落胆した。
 ――晩ご飯は「いらない」と言われたけど、作らない訳にもいかないわよ。それにせめて、失敗した時に誤魔化せるような常備の食べ物くらいは置いていたい。……仕方がない、買い出しに行こう。言いつけを破ってしまうけど、コレくらいは許されるわよね。――
 首を何度も縦に振り、眩しさを感じて魅姫は居間のカーテンを完全に閉める。光を失った空間で唯一煌々と光るノートパソコンの画面に視線を向けながら、相変わらず最後尾が見える様子の無い”おしゃべり”達の数珠繋ぎに、更なる溜息を吐いてから身支度を整えた。
 ――さっきの書き込みが気になるけど……大丈夫、あいつは本当の殺し屋じゃない。それは3日前に確信した。だから態度が怖いからって、あの男に過度に怯える必要なんてもう無い。
 もう何にも怯える必要は無い。私の人生はこれからは、空しい物では絶対に無くなるんだから。――
 浅いヒールが付いた黒いパンプスを足に履き、扉に手をかけ勢いよく開く。鍵を持っていないので錠を解いたまま、璃音の部屋を出た魅姫はアルミの階段を下りてアパートを離れていく。田舎道を歩いている途中で何度も足音が不思議な谺をした気がしたが、背後に振り返ろうとする度に「勘違いよ」と、独り言と苦笑いをして行為を止めた。
 鉄の壁に覆われた町の上に広がる、血のように赤い空。点在する雲達が、直ぐ近くまで迫っている夜を詰め込んでいるように黒く染まって流れていく。
 小鳥達には結局受け入れて貰えなかったのだろうか。夕焼けの中で孤独なカラスが1羽、居場所を探し求めるように、沈む太陽に向かって飛び去っていった。
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