卒業日より
梅が散る。春がきた。
「百田先輩」
生徒会所属で書道部部長の百田先輩は皆に慕われる人気者だ。
優しくて暖かい人。
特に関わりの少ないこんな私に心配をかけてくれるような人。
「佐倉。お前どこに行ってたんだ?」
薄暗い東校舎の踊り場は昼間なのに日が入らず、階段をのぼってくる先輩には、私のシルエットしか見えていない。
私には眉をハの字にした顔も、三年間馴染んだ制服を彩る卒業生に送られたコサージュも見える。
胸元のきらびやかなソレが先輩を大人に見せて、私の胸をジリジリと焦がす。
あぁ、あなたは先に行ってしまう。
もう学校には来ない。会えない。
そして気付かない。
私が募らせ根付いたこの想いに。
ずっとずっと気付かないままで、いつか散る花びらのように私を忘れてしまうのでしょう。
「卒業おめでとうございます」
けれど、それでいい。それでなくちゃならない。
それが今、生きているあなたの一番の幸せなのだから。
「ありがとう」
さようなら。百田先輩。
膨らむ蕾から開花した桃の花はとてもとても綺麗でした。
最後までお読み頂きありがとうございます。
恋愛ものリベンジ!卒業シーズンに乗っかって卒業式の日の先輩と後輩のお話でした。
想いを告げずお別れしたので悲恋と銘打ちましたが、続きがあります。
続きは(個人的)ハッピーエンドの予定で今回より文字数多めで長くなります。よろしければそちらもお願いいたします。更新は4月以内の予定です。
ここまで読んで頂きありがとうございました。