第8話:言葉
あれからまた更に一週間が経ってしまった。
急げば急ぐ程、時間は待ってはくれない。
後9日…。
明日は俺と佳奈の結婚式がある。
俺はまだ結婚できる歳ではないから…正式にではないが…。
結婚式は教会でする。
二人で忍びこんで…
俺と佳奈の二人だけでする。
そう考えるだけでワクワクした。
「久しぶりだな…明日が早くきたらいいのにって思うの…。」
佳奈は弱弱しく病室のベットの上でほほ笑む。
佳奈は恐れていた。
明日がくる事を…。
自分の死が近付く事を…。
「明日の晩…11時に迎えにくるから。」
教会は病院のすぐ近くだ。
だから計画は立てやすかった。
「うん…。待ってる。」
そういって佳奈は何かを噛み締めるかのように目を閉じた。
「結婚…できるんだね??結ばれるんだね?」
佳奈は目を閉じたまま…俺に尋ねた。
「うん。そうだよ…。正式には…できないけど…。」
俺が結婚できる歳になった時は……二人は一緒ではないから…。
「正式とか…関係ないよ…。心が繋がれば…一度でも繋がれば…それで私は充分だから…。」
佳奈の言う意味がよくわからない。
「…佳奈??どういう意味…?」
「ううん…なんでもない…。」
そう言った佳奈の顔は……なんだか切なかった。




