第6話:悪化
俺はその次の日も部活を休んで佳奈の所へ行った。
「あっ聡。部活大丈夫なの??」
佳奈は前より割と元気だった。
「いいんだよ。佳奈が病院にいるんじゃメールだってできねぇもん。」
「ゴメンね…。」
佳奈は重く謝った。
「いいって。そうしたくてやってるんだから。」
本当はキツかった。試合が近いのでダブルスでくむ相手に迷惑を掛けていた。
「ならいいけど…無理しないでね。」
佳奈は前と一緒で明るいが、たまにこんな風に暗くなる。
ごまかしきれない感情が佳奈にはあるんだ。
時間は無情にもどんどん進んでいく。
佳奈の命の残りを聞いてからもう一週間経ってしまった。
佳奈は自分の体が弱くなるだけ明るく振る舞った。
「佳奈…大丈夫か?」
「なんともないよ!これ位いつもの事だよ(笑)」
佳奈は最近よく咳こむ。
とても苦しそうに。
「ゴホッゴホッ…う…」
佳奈の口からは…血がでてきていた。
それをおさえていた手も真っ赤だった。
「佳奈っっ!!大丈夫か!?今誰か呼ぶから!!!」
俺は病室を走ってでた。
出た瞬間運良く佳奈の担当の医者と会った。
「あのすみません!!相沢さんが…。」
ドサッ…
佳奈の病室から何かが落ちる音が聞こえた。
俺は医者をおいて病室へ飛び込んだ。
佳奈が床に倒れていた。
「佳奈っっ!!」
佳奈に駆け寄ったが意識はなかった。
医者がきて…その後に看護婦が走ってきた。
そして佳奈は運ばれていった。
しばらくして…応急処置が終わった様で佳奈は病室に戻された。
まだ佳奈は眠っているようだった。
「佳奈…後…23日しかない…。俺何してゃればいいんだよ…。」
そう呟いた。
佳奈になげかけるような…独り言。
「こんな…自分が無力だなんて…しらなかった。」
「聡は…何もしなくていいんだよ…?私の側にいてくれるだけでいいんだもん。それだけで…私は笑っていられる。」
佳奈はいつの間にか起きていた。
「でももう…時間がないよ…佳奈の残り…少ない…。」
「聡…私怖いよ…。咳が酷くなる度…時計の針の音が聞こえる度…すごい怖い…。私の死が近付いてくる…。聡がいるだけで…本当にいいから…。」
佳奈の言葉は俺を世界中の誰より特別にしてくれた。
「ありがとう…佳奈…。」
「私のセリフとらないでよ〜(笑)」
佳奈は涙を拭いながら笑ってそう言った。




