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5話 共有財産という名の窃盗

朝食を食べながら、私は考えていた。


石化の霧を出すバジリスク。


99回分の記録にはない。つまり、対策も分からない。


『ニケちゃん、考え事?』


頭の中にアテナの声。


(...はい)


『バジリスクのこと?』


(そうです。倒し方が分からなくて)


『倒し方は...そうね...うん、まあニケちゃんなら大丈夫!』


(何しに来たんだこの人...)


『そうそう、神界から連絡が来たんだけど、ニケちゃんやったね。朗報!』


(朗報?)


『あのバジリスク、神界で"優先討伐対象"に指定されてるのよ』


(優先討伐対象...?)


『倒すと、信仰度にボーナス倍率がかかるの♪』


(倍率?)


『そう。基本の獲得信仰度に、倍率がかかって手に入るのよ〜』


なるほど。つまり、美味しい案件というわけだ。


(倍率はいくつですか?)


『それはランダムなの。0.5倍から3倍まで』


(0.5倍...)


『そう。ハズレだと半分になっちゃうわね♪』


(...事前に確認できないんですか)


『できるわよ?』


(いくつですか)


『信仰度10で教えてあげる♪』


(10!?高いですよ!)


『だってレア情報だもん』


(今7しかないんですけど)


『あ、そうなの? じゃあ特別に7でいいわよ♪』


(...いや、無料にしてよ鬼畜上司)


『なんか言った?』


(なんでもないです)


7を払えば倍率が分かる。


でも、そうすると信仰度が0になる。


(...やめておきます)


『え〜? せっかくまけてあげたのに♪』


(すみません。戦闘に備えて残しておきたいので)


『ふ〜ん、まあいいけど♪ 後悔しても知らないわよ〜?』


アテナの声が消えた。


...なんだろう、あの言い方。


少し引っかかるけど、気にしないでおこう。


「ニケ、どうしたの?」


セレスティアが心配そうに私を見ている。


「ううん、なんでもない。食べ終わったらギルドに行こう」



冒険者ギルド。


依頼書を受付に持っていく。


「バジリスク討伐ですね」


受付嬢が依頼書を確認し、眉をひそめた。


「お客様、この依頼は推奨ランクAです」


「はい」


「Aですよ?」


「はい」


「...本当に、Aなんですけど」


「分かってます」


受付嬢が何度も念を押してくる。


「過去に挑んだ冒険者、全員帰ってきてないんですよね…」


受付嬢がチラチラ見てくる。


「...」


「それでも、行かれますか?」


「行きます!」


受付嬢は何か言いたそうだったが、結局諦めたように判を押した。


「...ご武運を」


「ありがとうございます」


依頼書を受け取って、ギルドを出た。


「さて、準備しないと」


「準備?」


セレスティアが首を傾げる。


「霧対策。なんとかしないと近づけない」


「あ、そうか...」


「道具屋に行こう。何かあるかも」



道具屋。


店内に入ると、カウンターにいた店主が顔を上げた。


「いらっしゃい。...あ、さっきのお嬢さん」


店主がセレスティアを見て言った。


「魔法書、気に入ってもらえました?」


「ええ、とても」


セレスティアが満足そうに頷く。


...魔法書?


「あの、霧対策のグッズってありますか?」


「霧対策? ああ、バジリスクかい。あるよ」


店主が棚から布を取り出した。


「魔法繊維のマスク。これをつければ、霧に触れても石化しない」


「それ、3つください」


「毎度。30万zね」


私は財布を開けた。


「...あれ?」


足りない。


確か、力自慢大会の賞金があったはずなのに。


「セレスティア」


「なに?」


「私のお金、知らない?」


「ああ、それ」


セレスティアがあっさり言った。


「魔法書買った」


「...は?」


「いい本があったの。『上級風魔法大全』。探してたのよね」


悪びれる様子がまったくない。


「...私のお金だよね?」


「旅の仲間でしょ? 共有財産みたいなものよ」


「いや、違うよ」


普通に窃盗だ。


「私が出すわ♡」


涼しい声。リリアーナだ。


「え...」


「いくら?」


店主に向かって言う。


「30万zだよ」


「はい」


リリアーナが財布から金貨を取り出し、カウンターに置いた。


店主が固まった。


「...お客様」


「なに?」


「これ、金貨...1000万z分ですけど」


「あら、そうなの?」


リリアーナが小首を傾げる。


「ごめんなさい、細かいのがなくて」


「いや、お釣りが...」


「じゃあ、いいわ。取っておいて」


「は、はあ...」


私は呆然とリリアーナを見た。


(...この人の金銭感覚、どうなってるの)


「ニケちゃん、どうしたの♡」


「い、いや...ありがとう」


「当然よ。夫婦のお金だもの♡」


「夫婦じゃない」


「ふふ」


セレスティアが目を輝かせた。


「ねえリリアーナ、お金あるなら...あの魔法書もう1冊買ってくれない?」


(おっと?)


「あら、1冊でいいの?」


(おや?)


「全部いける?」


「ちょっと待って二人とも!」


私は慌てて止めに入った。


「あのー」


店主が困った顔で口を挟んだ。


「他のお客さんもいますんで...お静かに。あ、あと十分な額いただいてますので、全部持って行っていいですよ」


「よしっ!( ᐛ )و」


「セレスティア!」


私は金銭感覚のおかしい二人にお金の大切さを熱弁しながら帰路に着いた。


(『あらあら』)



町を出て、岩山に向かう。


「こっちよ」


リリアーナが先頭を歩き出した。


「...逆じゃない?」


「あら、そうだった♡」


「まあ、道なんてどこも繋がってるわ♪」


「繋がってないわよ」


「ほら、行くわよ」


セレスティアが先頭を切る。


「あの、あっちだけど…ほら看板に書いてある」


「「…」」


私が先頭に立ち、岩山の方角へ歩き出した。



「そういえば、バジリスクについて調べてみたんだけど!」


「お!ありがとう!」


「別に大したことないわよ」


セレスティアが少し頬を赤らめながら答える。


「それで何か分かったの♡」


「それが何も分からなかったわ」


(本当に大したことないじゃん!)


「100年の知識、役に立たずね♡」


(その通りだけど…言い方)


「あなたも100歳超えてるでしょ!」


「ふふ、年齢の話は禁句よ♡」


(ノリが若いな…)



しばらく歩くと、空気が変わった。


鳥の声がしない。虫の音もない。


岩山の入り口に、石像があった。


一体じゃない。何体もある。


「あら、なんかみんな面白いポーズしてるわね♡」


「ほら、これなんか片足上げてるわよ♡」


「トイレ我慢してたんじゃない?」


「絶対違うでしょ!」


「こっちは土下座してるわね♡」


「命乞いでもしたのかしら」


「悲しくなるからやめて差し上げて」


私は、マスクを手に取った。


「...行こう」


【現在の信仰度:7】


...7か。7…。7なんだよな…


心もとないけど、やるしかないよね。


(『ラッキーセブン!縁起よし♪』)


(続く)

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