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4話 2つの凶器

宿の風呂。


「あなた、綱引きの時すごかったわね♡」


リリアーナがセレスティアに話しかけた。


「え?」


「久しぶりに熱くなっちゃったわよ。エルフって力強いのね♡」


「ま、まあね...100年鍛えてるから」


(鍛えてたんだ...)


「そ、そう?」


(なんでちょっと誇らしげなんだこのエルフ。40対3の構図だぞ)


「私、力で引っ張られたの初めてよ♡」


二人が妙に仲良くなっている。


(...綱引きのおかげ?)


私の視線が、ふとセレスティアの胸に——


「...ん?」


パァン!


「いったあああい!!」


「すまない。乳首とハエを見間違えてしまったようだ...」


「見間違えるわけないでしょ!!」


(けしからん…)


翌朝。


宿の食堂で朝食をとっていると、隣のテーブルから声が聞こえてきた。


「おい、聞いたか?バジリスクの話」


「ああ、岩山に出るってやつだろ?」


私の耳がピクリと動く。


バジリスク。石化の魔眼を持つ蛇の魔物。


99回分の記録にも何度か出てきた。確か、弱点は——


「でもよ、今回のは普通じゃないらしいぜ」


「普通じゃない?」


「ああ。なんでも、石化が『見たら終わり』じゃなくて、『近づいたら終わり』らしい」


「はぁ?そんなバジリスク聞いたことねえぞ」


「だから噂になってんだよ。討伐依頼も出てるけど、誰も受けねえって」


(...近づいたら石化?)


99回分の記録にはない情報だ。


新種?それとも、進化した個体?


『ニケちゃ〜ん♪』


頭の中にアテナの声が響く。


(アテナ様...)


『バジリスクの話、聞いてたでしょ?』


(はい。99回の記録にない情報でした)


『そうなのよ〜。実はね、あのバジリスク、ちょっと特殊なの』


(特殊?)


『詳しく知りたい?』


来た。この流れ。


(...いくらですか)


『信仰度15♪』


(高っ)


『だって、レアな情報だもん♪』


(...10で)


『14』


(11)


『13。これ以上は下げないわよ?』


(......分かりました)


【信仰度:20 → 7】


『まいど〜♪』


商売上手すぎない?


『じゃあ教えてあげる。あのバジリスク、"霧"を出すの』


(霧?)


『そう。石化の霧。目を閉じてても、霧に触れたら石化しちゃうの』


(そんなの、どうやって倒すんですか)


『それはまた別料金よ♡』


(...鬼)


『なんか言った?』


(なんでもないです)


アテナの声が消えた。


「...ニケ?どうしたの?」


セレスティアが心配そうに私を見ている。


「ううん、なんでもない」


リリアーナも私を見ている。


「...バジリスクの話、気になってるんでしょう?」


「え」


「顔に出てるわよ」


鋭い。


「...うん。ちょっと気になって」


「ふうん」


リリアーナが優雅に紅茶を飲みながら言う。


「討伐するの?」


「...まだ分からない」


「そう。じゃあ私も行くわ」


「え?」


「婚約者だから。ニケちゃんが戦うなら、私も戦う。当然でしょう?」


「だから婚約して——」


「私も行くわ」


セレスティアが割り込んできた。


「ニケ一人で行かせるわけないでしょ」


「セレスティア...」


「それに、私だって戦えるんだから」


二人が私を見ている。


一人は100年引きこもりのエルフ。


一人は怪力の竜人族。


(...この二人と、石化の霧を出すバジリスクに挑む?)


正直、不安しかない。


でも——


「...ありがとう」


私は小さく笑った。


「じゃあ、3人で行こうか」


【現在の信仰度:7】


100回目の冒険。


最初のボス戦が、近づいていた。


(続く)

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