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12話 女神の使い・フワリン

第12話


日が傾いてきた。


「ねぇ、次の町まであとどれくらい?」


セレスティアが聞いてきた。


「羅針盤は方角しか——」


「分からない、でしょ。知ってるわよ」


「...うん」


「今日中に着くの?♡」


リリアーナが不安そうに聞く。


「多分、無理かな...」


「じゃあ野営ね」


セレスティアがため息をついた。


「野営!いいですね!」


フワリンが目を輝かせた。


「星空の下で眠るの、素敵です♪ きっとニケ様も見守ってくださいます!」


(見守るも何も、私ここにいるんだけど...)



森の中に開けた場所を見つけた。


「ここでいいでしょ」


「私、火を起こします!」


フワリンが張り切って走り出した。


「あ、待って——」


言い終わる前に、フワリンが転んで、薪に躓いて、鍋を倒した。


「きゃっ」

「...」


「す、すみません...全部やり直します...」


「座ってていいよ」


「でも...」


「座ってるだけで十分だから」


「...はい」


フワリンが大人しく座った。


小さい体がさらに小さく見える。



なんとか夕食の準備ができた。


セレスティアが作ったスープ。意外と美味しい。


「セレスティア、料理上手なのね」


「100年間、一人で生きてきたからね」


「...それ、ちょっと切ない」


「うるさいわね」


四人で火を囲んで食べる。


「美味しいです...」


フワリンが感動したように言った。


「ニケ様の教えでは、食事は感謝して食べるものだと...」


「そんな教え、出してないけど」


「え?」


「あ、いや...一般的にそうだよねって意味」


「はい!ニケ様は食べ物を大切にする方ですから!」


(知らないでしょ、私のこと...)


「ニケ様の教えでは、仲間との絆を大切にせよ、と...」


「それも出してない」


「え?」


「いや、その通りだなって」


「ですよね!ニケ様は仲間思いの女神様ですから!」


セレスティアが私を見てニヤニヤしている。


「ニケさん、大変ね」


「...何が?」


「勝手に教えを作られて」


「...」


(同じ名前だと色々面倒だな...)



食事が終わり、火を囲んだまま話が続いた。


「フワリンは、なんでニケ様を信仰してるの?」


リリアーナが聞いた。


「小さい頃、病気だったんです」


フワリンが静かに話し始めた。


「治らないって言われて...でもある日、夢にニケ様が出てきて」


「夢に?」


「はい。『諦めないで』って言ってくださったんです」


(...夢?私、そんな夢に出た覚えないけど)


「それから回復魔法が使えるようになって...病気も治ったんです」


「すごい...」


「だから私、ニケ様に恩返しがしたくて。ニケ様のために働きたいんです」


フワリンの目が真っ直ぐだった。


(...なんか、申し訳なくなってきた)


『あら、いい話じゃない♪』


(アテナ様...)


『でも、あんたそんな夢出てないでしょ?』


(出てないです)


『じゃあ誰が出たのかしらね〜♪』


(知らないんですか?)


『さぁ?♪ 10ポイントで教えてあげる♪』


(信仰度2なんですけど)


『じゃあ無理ね〜♪』


(この人、本当に...)


「ニケさん?」


「え?」


「また、ぼーっとしてました」


「あ、ごめん...」


「上司のハラスメントですか?」


「...まあ、そんな感じ」


「大変ですね...」


フワリンが同情の目で見てくる。


(本当に大変なのよ...)



夜が更けてきた。


「そろそろ寝ましょうか♡」


リリアーナが欠伸をした。


「そうね。明日も歩くし」


セレスティアがテントに向かう。


「あの、ニケさん」


「ん?」


フワリンが私の顔をじっと見ていた。


「なんだか、夢に出てきたニケ様に似てますね」


「...え?」


心臓が跳ねた。


「雰囲気が...なんとなく」


「そ、そう?」


「はい。優しいところとか...」


「似てないわよ」


セレスティアが割り込んできた。


「こっちはチンチクリンのポンコツだし」


「まだ言う?」


「事実でしょ」


「ポンコツじゃないし、チンチクリンでも...」


自分の胸に手を当てた。フワリンの胸を見た。私より大きい。


「...」


「ニケさん?」


「...なんでもない」


(チンチクリンは否定できなかった...)


「でも私、ニケさんのこと好きですよ♪」


「え?」


「優しいし、話しやすいし。ニケ様の名前を持つ方だけあります!」


『あら、好意を持ってくれたみたいね♪ 信仰度が1上がったわよ』


【現在の信仰度:1→2】


(2...)


「ありがとう、フワリン」


「いえいえ♪ これからもよろしくお願いします!」


「ちょっとニケちゃん、浮気♡?」


「え?」


「私たち婚約関係なのに♡」


「こ、婚約...!?」


フワリンがそわそわし始めた。


「違うから!」


フワリンがにっこり笑った。


純粋な笑顔。疑いのない目。


(...いつかバレた時、どうなるんだろう)


そんなことを考えながら、私は眠りについた。


【現在の信仰度:2】


(続く)

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