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24話 あの世のご都合設定

 自称・天使アンチは俺を無視して準備運動中。それを見て思考能力を取り戻したので、気になる事を聞いてみる。


「アンチさんがどうしてここに?」

「どうしてって、お前を助ける為に決まっているだろう?」

「え?あっ…」


 “助ける”の言葉で、カードの最後の文を思い出す。カードをもう一度確認しようとポケットを確認するもそこにはなく、「こいこい」をしても現れなかった。なぜカードがなくなったのかは不明だが、カードそのものが消えた事で、とりあえず自分の命が助かったのだけは分かった。


「…助けて頂き、ありがとうございます」

「礼には及ばん。お前は××ポイントを5ポイント貯めた。だから助けた。それだけだ」

「ポイント…?」

「ん?ああ、なぜ5ポイント貯まっていたのにすぐ助けにこなかったという疑問だな。それは封印の力が最も弱まるのが期限終了の今日、奴が自動処理を発動させたタイミングだからだ」

「封印…?タイミング…?」

「そうだ。…おっと、そちらも礼を言ったのだからこちらも言っておかないとな。…封印を解く手助けをしてくれて感謝する。お前の××ポイントのおかげで力を強めることができた」


 話が一方的に進むので理解しきれない。とりあえず「いえいえ」と頭を下げた。

 消えたカード、封印、タイミング、謎ポイント。これらのワードから、このアンチさんがカードに封印されており、俺が謎ポイントを貯めたのがきっかけで封印解除できたと推測するのが妥当だろう。

 封印される理由は大体の場合、その対象が邪魔で面倒だから。彼は天使アンチという事だから、邪魔だと思っていたのは天使で、封印したのも天使と考えるとしっくりくる。


封印までされるって事は余程天使にとって邪魔な存在だったんだろうな。


 その“余程”の部分が気になったので聞いてみる。


「なぜ封印されていたのですか?」

「あいつらの邪魔をしたからだ。具体的にはあいつらの悪魂(アクダマ)加工工場を破壊した事とかな」

「悪魂工場…?」

「ん?ああ、そうか。人間のお前が知るわけないものな。…人間が死ぬとこっちの世界では魂になる。大きさは目玉くらい。で、その魂はその人間の現世での行いによって白い善魂(ゼンダマ)と黒い悪魂に分かれる。魂は天使にとって人間界でいう所のガム。噛んでいると旨味が出ておいしいし、何より暇つぶしになるという事で今大流行中だ」

「そうなんですね…」


けったいなものが流行ってんなぁ…


「で、美味しいのは悪魂の方だからそれを大量生産する流れになった。悪魂になりやすいのは意志が弱く、自分で物事を決められない無気力で自堕落的な人間とデータは揃っていたから、その傾向のある人間をピックアップし、リストを作った。

 次に味だ。研究が進み、現世で悪い行いをした回数が多いほど旨味が増す事が分かった。そこで、人間を直接洗脳して悪い事をたくさんさせてから試しに殺してみたのだが、どうにも味がよくならなかった。更に研究を進めると、直接殺したり、直接洗脳したものではないもの…つまり、天然ものでないと味が整わない事が分かった。

 これには奴らも困る。手っ取り早い方法は使えないという事は、人間の生き方に委ねなければならず、時間がかかるからな。自分達が直接手を下さなくても勝手に悪事を重ねて自動的に死んでくれる装置があればいいのに。そういった奴らの都合満載で作られたのが服従カードだ。これを人間に使わせれば間接的に悪い事をさせられ、期限を設ける事で安定生産可能だと考えた。が、支配力の制御が上手くいかずに支配力が働かない誤作動が頻繁に起こった。そこで目をつけられたのが我々だ」


我々って事はアンチさんみたいなのが複数いるって事だよな?


「我々は支配力が高い。それをどうにか利用できないか考えた。そして、我々が研究をしょっちゅう邪魔しにくるものだから、これに対して何か対策はないかとも考えていた。この2つの疑問を同時に解決する方法として考えられたのがカードへの封印だ。我は奴らに捕まり、拘束された。奴らの予想通り、カードに我を封印する事で支配力の制御が安定し、誤作動が起きなくなった。かつ、このカードを使って作られた悪魂は天然物の味に近く美味。こうして奴らは我々を次々とカードに封印していった。

 封印前にカードにほとんどの力を吸い取られた。しかも封印中は力が回復せず、封印を内から破る事は不可能。だが、このまま奴らの思い通りになるのも癪だった。そこで我は残った力を使い、カードに言葉を記す事にした。天使に見つからない様に細工を少し施してな。ただ、途中で力が尽きて途中までしか書けなかったのが失態だった。これでは伝わらないと思って諦めていたのだが、それをよく読み解いてくれた。改めて礼を言う」

「いえ…」


あの文だけ色違いだった理由はそれね。


 色々納得した上で、もう一つ疑問が浮上。なぜ彼が天使アンチなのかについてだ。


「どうして奴らと敵対しているのですか?」

「奴らが自分達の都合で他の者の自由を奪うのは見ていて非常に不快だったから…それだけだ。だから、我もお前と同じ様なものだよ」


 初めてニコリと笑う。そして、彼が登場した時に吐いた台詞を思い出して納得した。


『気に入った』のはそういう理由ね。


 共通の認識。天使と違い、この人(?)は信用できる様な気がした。

 天使という言葉で最初に天使が言っていた言葉を思い出す。


「奴が言っていたんですけど、天国の施設が忙しい事になっていて人手不足って話は本当なんですか?」

「ん?何だその話は?というか、そもそも天国も地獄もないぞ」


 嘘なのを確認するつもりで聞いたのだが、思わぬ衝撃事実を知る。


「ないのですか」

「ああ。おそらくだが、天国地獄という概念をつくる事で人間に善悪の思想を自然にすり込ませ、強く意識させる為だろう」

「つまり、うまい悪魂をつくる為のただの設定だったと」

「そういうことだ」

「ほぇー…」


 素晴らしく納得。確かに死んだ後の事なんて誰も知らない。だからこそ、その後の事は全て妄想の産物であり、信じる必要のないテキトーな概念なのだ。


そう考えると、死ぬ事も生きる事も特別な事じゃないな。誰かの妄想で『幸せにならなければいけない』『長生きしなければいけない』って勝手にルールをつくられ、それに縛られて苦しんでいるだけ。それを特別だって勝手に決めつけられて。


 考えなくてもいい事が分かり、それを思考から捨てた事で一気に頭が軽くなる。その上で最後に残った疑問を聞いてみる。


「あなたの封印を解く為に貯めたポイントって結局何ですか?」

「××ポイントの事か?」

「はい」


やっぱり、××の部分がうまく聞き取れない。


「××ポイントは××ポイント。言葉のままだ」

「は、はぁ…」


分からない…。あっ、そうだ。貯める方法を聞いてみたら何か推測できるかも。


「そのポイントを貯める方法は?」

「ん?知っていて貯め切ったのではないのか?」

「はい」

「…まぁ途中で説明文が切れていたからな。ただ、5ポイント貯めたのは事実。方法を知っていないと貯められないポイントだからこそ、今更その方法を教えるのは野暮だと思うのだが…。さてはお前、わざと聞いているな?」

「わざとじゃないです!本当に知りません」

「本当か?」

「本当です」


 無言でジロジロと顔を見られた後、ようやく信用してもらえたらしく、話し出した。


「××ポイントを貯める方法は…おっと、奴らに気づかれた様だ。またの機会に話そう」


 彼がそう言うと視界は一気に暗転した。

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