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牢獄からの解放〜ガリ勉JKの脱出冒険〜

作者: りょう
掲載日:2025/08/24

「はつ、あんた頭いいねぇ。お母さんこんなもんなんにも分からんわ」


 母は娘の100点の答案用紙を見ながらせんべいをかじり、あぐらをかいて言った。


 はつは、母親が羨ましくなった。


 自分のように競争しなくても、安住していられるからだ。


 私は私。


 あんたとは違うんだ。


 はー。


 早く大人になって隠居したい。


 若者らしくないことを、はつは考えた。


 私には私の道があり、世界がある。


 はつは、普通の女子高生が興味を持つものには目もくれません。


 それはアイドルや、性、恋愛、スマホ、コスメ、ファッション等です。


 はつは、朝から晩まで勉強、勉強、勉強です。

 

 はつは学年トップの成績だ。


 でも、はつには友達がいない。


 勉強が出来るという事こそが私のアイデンティティなんだ。


 負けるわけにはいかない。


 誰にも、自分にもだ。


 はつは強くそう思っています。


 勉強ではいつも一番であるという事が、私の存在を肯定してくれる唯一の事だ。


 だがこの事が極度のプレッシャーになり、はつはいつも追い詰められていた。


「お主、走れるかの」


 はつの頭上で、いきなり話し声が聞こえた。


「ん?」


「お主じゃよ、お主」


 はつは上を向いた。


 仙人みたいな、ハゲた爺さんが雲に乗って浮かんでいる。


「うわ!」


「気づいたか。お主、走れるかの」


「走るって、どこへ?」


 はつはドキドキしている。


「天国じゃ。わし、天国から落ちてしもうた。天国へ通じる道を教えるから、走って閻魔ちゃんに話してきてくれんか。神様が足を踏み外して、地上に落ちてしまったと」


「ってことは、おじいさん、神様?」


「そうじゃ」


「へー、びっくりした。神様ってホントにいたんだね」


「で、走るってどこに?」


「この道じゃ。えい!」


 神様が杖を振ると、道が現れました。 


「約10キロじゃ。そんなに遠くはないじゃろ」


「まあ。うん。わかった。なんか困ってるみたいだし。じゃ、行ってきます」


「待て待て。わしの身代わりとして、この人形を持って行きなさい」


「ふーん」


「これを閻魔ちゃんに見せればよい」


「わかった」


 はつは人形をカバンに入れた。


「では」


 はつは走り出した。


「すまんねー。頑張ってくれよー」


 振り返ると、もう出発地点は小さくなっていた。


 大丈夫。


 どんなところに通じているか知らないけど、10キロなんてすぐよ。


 はつは勉強に追い詰められていた自分を忘れていた。


 もしかすると、神様が不意に現れた事がはつの警戒心を弱めたのかもしれない。


 はつは何も考えず、ただ無心で走っていた。


 頑張って神さまの頼み事をクリアしたはつは、ベッドの上で目を覚ました。


 はつは、交通事故に遭い、生死を彷徨っていたのだ。


「はつ! あんた大丈夫!? 眼を覚さないから心配したよー!」


 母親ははつに抱きついた。


「あれ? あたし、たしか天国への道を走っていて……。あ!カバン!」


 夢じゃないなら、神様の人形があるはず。


「お母さん、あたしのカバン取って!」


 やっぱり。夢じゃなかったんだ。


 カバンの中には、神様の人形がありました。


 なんか、いきなりで、刺激的な体験だったかな。


 うーん。


 いつもの世界がちっぽけな感じがするかも。


 無事達成出来たんだし、こんをつめなくても、自分を解放してやっても、意外とやれるじゃん。


 はつは、夢ではあったが、非日常を経験した。


 日常に縛られることが、いかに小さなことか、思い知った。


 日常。


 それは勉強であり、自尊心であり、牢獄であり、精一杯背伸びしたアイデンティティだった。




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