プロローグ『死、その先に』
はじめまして、読んでくださってありがとうございます!
これは、"天使が神になりかわった世界"で、少年が地獄から神を目指す物語です。
序章なので少し短めですが、どうぞ最後までお付き合いください!
たぶん――死んだのだろう。
頭上には空。目の前には、天使としか思えない存在が宙に浮かんでいた。
その姿は、少年が幼い頃に聖書で読んだ天使の描写そのものだった。
純白の翼に、何十万もの青い眼。間違いなく、彼は天使であり、
そして自分は――命を終えたのだ。
「――罪人、ツバサヤ・クロトは、生前に十三もの罪を犯した。」
山が裂けるような声が辺り一帯に響き渡る。
クロトは反射的に耳を塞ぎ、呻き声を漏らした。
同時に、彼の足元に――いつの間に存在していたのか、
不快な灰色の巨大な門が広がっていた。
……どう見ても、良い場所じゃない。
「――罪人、ツバサヤ・クロトには、地獄にて二万年の苦痛を命ずる。」
天使は目を見開き、クロトを睨みつけた。
複雑な感情が胸をよぎったが、それを考えている余裕はなかった。
門が、ゆっくりと、だが確実に開き始めていたのだ。
――このままじゃ、落ちる。
クロトは拳を握りしめ、天使に向かって叫んだ。
これほど大きな声を出したのは、生まれて初めてかもしれない。
「……俺は、冤罪だ!」
「何が冤罪だと?」
「その十三の罪、全部……俺じゃない!他人に押しつけられたんだ!」
その瞬間、天使の目が横に細く裂けた。
その表情を見るまでもなく、望む答えは返ってこないと悟った。
それでも――一縷の望みに賭けた。
「――証拠はあるか?」
またしても山を割るような声が響く。
同時に、門はさらに軋む音を立てながら開いていった。
そして次の瞬間――
ツバサヤ・クロトは、堕ちた。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
ツバサヤ・クロトという少年の物語は、まだ始まったばかりです。
次回は、彼が地獄で出会う「何か」が登場します。お楽しみに!