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第6話:初めてのデスペナ


「おぉ、初めてスキル生えた。」


「私もです。マスターはどのような?」


「《剣術》だね。」


「私もです。今後派生していったら個性が出てくるかもですね。」


 新しいスキルが生えたことで、警戒が疎かになっていた。別にここはセーフティエリアではない。


 ドゴォ。

 

 背後から忍び寄る突撃ウサギに気が付かず、その体当たりは、残り1割のHPを簡単に消し飛ばした。

 

「マスタァァァ!」




 初めての死に戻り。


「げっ!デスペナは最大HPの半減が2時間か……。」


 気が付けば、噴水が特徴的な大きな広場に俺は立っていた。1番最初に湧いたところだ。


「"心配しないで、ゆっくり戻っておいで。"っと。」


 悲痛な叫び声が最後聞こえたし、フレンド欄からメッセージを送っておいた。


 周りを見渡すと今までは気が付かなかったが、広場で露店をやっている人の姿がチラホラ見える。


 特に目を引くのが、様々な洋服?コスチューム?を置いている、後半で裏切るタイプの腹黒そうなイケメンだ。


 少しジロジロ見すぎてしまったようだ。


「いらっしゃい!」


 バッチリと目が合ってしまった。


「これは何を?」


「防具を売ってるんや!見た目重視のな!」


 フード付きのパーカーとか、ダメージジーンズとか、メイド服とか、チャイナドレスとか……。


 小洒落た洋服とかコスプレ衣装が、ところ狭しと並べられている。だいたい1着10000Gから。


「防御性能が無いから、完全にオシャレ着や。全然売れへんねん。」


 俺の《幻装》の使い道はコレかぁ……。


 リアも欲しがりそうではあるが、如何せんお金がない。


「メッチャ欲しいんだけど、手持ちがないんだよなぁ。次はいつ販売する予定?」


「気分やねん。全然売れへんから……。」


 俺がランダムで引き当てたスキルを、死にスキルにさせないために彼には頑張ってもらわなければならない。


「いつか絶対に買いに行くから、フレンド交換しない?」


「おぉ、ホンマかいな!よろしゅう頼んますわ、未来の太客様!」


 腹黒イケメンは、ウィンクを決めても絵になる。


 フレンドリストのリアの下に『オーラリス』が並んだ。



 

 残念ながら彼は、リアが戻ってくる前に金策へと平原に行ってしまった。もう飯を買うお金も、ギリギリらしい。


 入れ違いで俺のことを見つけたリアは、飛びついてきた。


「マスター、気分は悪くありませんか?」

「私としたことが不覚です。」


「全く問題ないよ。そもそも紙装甲だから仕方ないよ。リアのせいじゃない。」


 少し落ち込んでしまった様子のリアを励ますように声をかける。


「それよりも仇は取ってくれた?」


「そりぁ、勿論です!ギッタンギッタンですよ!」


「アハハ。さすがリアだ。」

「そういえば、リアを待っている間に、面白い人に会ってさ。その人オシャレ着を売ってるの。」


「今……なんと……?」


 先程の少し落ち込んだ様子とはうって変わり、俺の肩をユサユサとしながら詰問を行うリア。


「いや……あの……オシャレ着……、メイド服とかフード付きのパーカーとか……。」


「マスター?」


 目が血走っている。このゲーム作り込みすごいなぁ……。


「はい?」


 深呼吸をするために一拍おかれる。

 

「その方は今どこに?」


「……えぇと、金策に行かれました。」


 焦点の合っていない目は、もはやどこを見ているか分からない。今にも地面に手をついてしまいそうだ。


「あのぉ、絶対に買いに行くと思いまして、フレンド登録はしてありますよ?」


 再びガバっと距離を詰められて、少し身を引いてしまった。


「くうぅ!さすがマスター!」


 今度は今にも踊りだしそうだ。


 というか、既にその場でくるくる回っている。


「そうと決まれば私たちも金策です!行きますよ!」


「あのぉ、デスペナ……。」


「チッ!何分?」


「あと1時間です……。」


 この娘怖い!




「『突撃ウサギ分隊長の角』の魔石(E)ですか。売り払ってお金にしましょう!」


「それは別にいいけどさ、見た目の前に武器とか新しくした方が良いんじゃない?」


 以前もお世話になった、 広場内のベンチへと腰掛けて、戦利品の確認を行う。


「私の調べたところによりますと、このゲームには魔王が足りていないのです。」


「はい?」


 フンス。といえ効果音が目に見える。自信満々なリアには悪いが、思わず聞き返してしまった。


「これはビジネス的に狙い目ですよ。マスターには魔王になって頂き、その様子を私が配信します!」


「えぇー。やだよ。」


 VASTの開発元であるレガリア・テックでは、4倍もの思考加速を活かして、VRオフィスを有料で提供している。その売上の一部が配信者へ還元される。


「『亜空間ストレージ』欲しくありませんか?」


「そ、それは……。欲しいけども。」


 亜空間ストレージ、所謂青狸のポケットだ。欲しくない人などいないだろう。しかしまぁ、とんでもなく高いのだ。


「VASTでの配信では、キャッシュ以外にもレガリア・テック製の製品を選ぶことが出来ます。それもかなり割安で。……さらに限定デザインです。」


「……っ。わっ、わかった。」


 俺は……弱い……。笑いたくば笑え……。




「話を戻しますが、戦利品は売却するとして、昨晩集めたドロップ品は錬金術しますか?」


「魔石は上位の魔石に出来ることが分かったけど、スライムゼリーとウサギ肉が何になるか確認したいよね。」


「ではマスター。頑張って下さい!」


 満面の笑みで渡されたのは、大量のスライムゼリーとウサギ肉、そして魔石(F)だ。


「えっ?コレ全部リアが一人で?」


「そりゃ勿論です。丸一日時間がありましたから。」


 4倍の思考加速分が頭から抜けていた。思わず苦笑い。


 リアにニヤニヤと観察されながら、《簡易合成》を繰り返し、MPが切れては自然回復するのを待ち、また《簡易合成》を繰り返す。


  スライムゼリーは10個で『食用スライムゼリー』 に、ウサギ肉は10個で『高級ウサギ肉』になった。


 どちらも食材ということで、リアの《美食家》と相性が良さそうだ。


「ところでリアの《美食家》の効果って?」


 魔石を《簡易合成》する手は止めずに、思えばよく知らなかったリアのRスキルについて聞いてみる。


「食事を介した効果の倍化ですね。」


「リアの《料理》の腕が上がると、戦闘力も上がるの?」


「そのとおりですね。だいぶゲームナイズされてしまいました……。」


 ゲームナイズもなにも現実でスキルを持っていないと思うのだが、ツッコミ待ちだろうか。


「それじゃ、食用スライムゼリーは嬉しい誤算だね。料理に使ったらリジェネ付きそう。」


「ふふっ、そうですね。美味しい料理作って見せますから、期待してて下さいね。」


 このゲームの味の再現度は本当に高い。スライムゼリーという未知の食材にはとても興味がそそられる。


「あっ、魔石(E)が10個……。もっかい《簡易合成》していいかな?」


 手元の魔石(F)は10個の魔石(E)へと生まれ変わった。もう一度やれば魔石(D)が生まれる筈……。


「売却額も対して変わらないでしょうし、検証も兼ねてどうぞ。」


 予想通り『魔石(D)』が1つ手に入った。


 予想外だったのはその売却額。Eが1つ100Gのところ、Dは1200Gで売れたのだ。これからも沢山《簡易合成》することになりそうだ……。


 


===☆3==========================

突撃ウサギ分隊長の角

 

小さな群れを率いる突撃ウサギの角。

傷がついていないものは、とても貴重。

===============================


===☆3=========================

食用スライムゼリー

 

錬金術で作成された、食用のスライムゼリー。

ほんのり甘く、疲労回復効果があるかも?

===============================


===☆3=========================

高級ウサギ肉

 

錬金術で等級が上げられた、ウサギ肉の塊。

風味豊かで、お祝いごとの際によく食べられる。

===============================


===☆3==========================

魔石(D)

 

魔物からドロップした小さい魔石。

日常的に最も多く使われる。

===============================


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