表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

第3話:職に就く


 本作がリリースされたのは約3ヶ月前、最前線組は次の街『セカンド』に辿り着いてから足踏みしている状態らしい。


 今俺たちが何をしているかというと、武器を買いに来ている。初期の所持金は1000G。昼食を食べようとすれば100Gかかる。


 工房に飾られている剣や槍は最低でも10000Gから……。


 仕方なく隅に纏められていた、一律500Gの練習用に作成された木剣を1本ずつ購入。


「まいどあり!」


 筋骨隆々な工房の親父は、こんな買い物でも素晴らしい接客だ。次来る時は飾られている剣を買えると良いなぁ。




 武器も購入し、準備万端。ウロウロしながらマップを埋めつつ、街を出るための門を探す。


 街の外にはモンスターが蔓延っているため、この街は立派な城壁に囲われている。


 マップを埋めながら、門を探したので幾分か時間が掛かってしまった。


「おう!外へ行くのか?」


「はい。モンスターを倒しに行こうと思って。」


 きちんと制服を着こなした、50代くらいの門番さんの問いかけに、リアが木剣を見せながら答える。


「おぉ!そらぁ、良いことだ。」 

「して、身分証明書は持っているか?無いと中へ入るのに面倒な手続きが、必要になるが……。」


「「身分証明書ですか?」」


 俺とリアは首を傾げる。


「やっぱり、異世界からの来訪者さんだったか。」

「1番手っ取り早いのは、この街のギルドに登録して職を得ることで、ギルドから身分証明書を発行して貰えるぞ。」


「ご丁寧にありがとう御座います。ギルドへ行ってからまた来ます。」


「おう!」


 手をヒラヒラさせながら、俺たちを送り出してくれた。このゲームの『現地人(NPC)』って普通の人間と区別がつかないな……。




 街ゆく人に声を掛け、ギルド通りなる場所を教えて貰った。その名のとおり、冒険者、商人、鍛冶、etc。様々なギルドがズラッと並ぶ。


 やはりというか、1番大きな建物は冒険者ギルドであった。俺はてっきりリアは冒険者になるものだと思っていたが、マップの端に捉えた『料理人ギルド』へと一直線に向かった。


 カランカラン。ドアを開けると綺麗な鈴の音が響き渡る。


「こんにちは。本日はどのようなご要件でしょうか?」

 

 可愛らしい制服に身を包んだ受け付けのお姉さんは、笑顔でリアに問いかける。


「ギルドへ登録したいのですが。」


「あっ!ご登録ですね!少々お待ち下さい。」


 パタパタと音がするような気がする。慌ただしく何かを取りにいった受付のお姉さんは、丸い水晶玉を持って戻ってきた。


「お待たせ致しました。ステータスの登録を行いますので、この端末に手を置いて下さい。」

 

「はい。お願いします。」


 リアの手が置かれると、その水晶は淡い光を放ち、少しの間、明滅を繰り返す。


「ありがとう御座います。コチラが『ギルドカード』になります。料理人ギルドが身分を保証する証になりますから、失くさないようにお願いします。」


 水晶が置かれた台座から出てきた、金属製の薄いプレートには、料理人ギルドの紋章とリアの名前が、刻印されている。


 この後、ギルドについて軽い説明を受けて、俺たちは料理人ギルドを後にした。


「マスターはどのギルドへ?」

 

「んぅ……どうしよう。」


 プラプラと通りを進んでいくと、徐々に人が少なくなってきた。きた道を戻ろうかと考えていると、ふと、あるギルドが目についた。


 おそらくは賢者の石がモチーフであろう紋章、『錬金術師ギルド』だ。


 人気が出そうな職業なのに、建物はボロく、閑古鳥が鳴いている。


「ごめんください。」


「んん?……っおぉ!いらっしゃいませ!」


 濃い色のローブに身を包んだ若いお兄さんが受付をしていた。久々の来客だったようで、とても驚いた様子だ。


「このギルドに登録したいのですが……。」


「おぉ!本当ですか!」


 俺の手を取りブンブンと腕を上下に振る。


「あ、あのぉ、登録を……、」


「あぁ!失礼しました。つい嬉しくて……。ちょっと待ってて下さいね!」


 浮足立った様子で、多分水晶を取りにいった彼。


 「あれでもない……、ガラガラァ……、これでもない……、ガラガラァ……、あっ、あった。」


 雪崩のような大きな音がしたり、彼の独り言はここまで聞こえていた。


「えへへ、お待たせしました。この水晶に手を置いて下さい。」


 俺は苦笑いしつつ、手を水晶においた。リアの時と同じように、淡い光がを放ち、明滅を繰り返す。


「ありがとう!コチラが『ギルドカード』で、錬金術師ギルドが身分を保証する証になりますから、失くさないで下さいね!」


 水晶の台座から出てきた、金属製の薄いプレートには、ギルドの紋章と俺の名前が、刻印されている。リアのカードとはプレートの色も違うみたいだ。


 テンションが上がってしまった、彼のギルドについての説明はそこそこ長く、リアの機嫌は少しだけ斜めになった。




 満を持して、再び門へと向かう。


「ちゃんと登録できたか?」

 

「「勿論!」」

 

「そりゃ何よりだ!夜には門を閉めちまうから、ソレまでに戻って来いよ!」 


 門番さんの注意を有り難く受け取りに、遂に俺たちは、初戦闘へと洒落込むのであった。




 門を出てすぐの平原では、青色の半透明な見た目の『スライム』と、一見可愛らしいが体当たりが重い、『突撃ウサギ』が、主な魔物だ。


 現実のダンジョンでも出現するらしく、このゲームを練習に使っている人もいるらしい。


 俺等の初戦闘はスライムが3匹。


 スライムの体当たりはとっても遅く、AGIに振っている俺たちは、難なく回避することが出来た。問題は中々倒れないこと。


 物理攻撃に耐性があるようで、2人でタコ殴りにしてようやく一匹といった感じだ。


「マスター、ウサギの方を狩りましょう。」

 

「あぁ、そうだな。俺もウサギが良い。」


 初戦闘終了後、リアがウサギを提案するくらいには、厄介であった。


 戦果としては『魔石(F)』が3つと、『スライムゼリー』が1つ。持ち運べる枠には限りがあるが、便利で使い易い『インベントリ』へと収納された。


 続いて突撃ウサギ2匹との戦闘。その可愛らしい見た目に騙されて、俺はすごい勢いの体当たりをもろにくらってしまう。


 VITに全く振っていないので、一撃でHPが半分以上持っていかれる。痛覚にはリミッターが掛かっていて、「何も無い所で転んだけど、なんとか手をつくことが出来た。」くらいの衝撃と痛みだ。


 気を引き締めて、木剣を正眼に構える。


 リアは舞うように攻撃を避けてカウンター気味に攻撃を繰り出している。


 俺の不格好ながらも力の籠もった振り下ろしは、クリーンヒットとはならなかったモノの、右足にダメージを入れることに成功した。


 リアの方は《連撃》の効果も相まって、3度めのカウンターで、討伐を成し遂げた。


 右足を引き摺っているウサギの攻撃は、先程よりも断然鈍く、簡単に避けることが出来た。しかし戦闘初心者の攻撃も中々当たらない。


 リアがおかしいのだ。あんな、ばかすかカウンターが当たるなんて。


「マスター頑張れー。ウサギになんて負けるなー。」


「うっ、うっさいわい!」


 ウッキウキで煽ってくる彼女に対して、息も絶え絶えな俺の返答。リアはケラケラと笑っている。


 半ば八つ当たりの横薙ぎが、見事ヒットして、突撃ウサギはドロップ品を残して消滅した。


「ふぅー。づがれだぁ。」

 

「マスターはまだまだですね。Lv上がったら幾分かマシになるでしょうし、もう少し戦いましょ!ねっ!」


 ウサギ狩りは夕焼けが綺麗に見える時間帯まで続いた。リアの動きはさらに洗練され、俺の動きは多少マシになったと思う。


「門が閉まる前に帰りましょうか。マスター歩けますか?おんぶしてあげましょうか?」


「……歩けるよ!」


 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、悩んだのは秘密だ。



 

===☆1=========================

初心者の木刀


ATK:1


初心者向けに作成された木刀。

お値段以上に丈夫。

===============================

 

===☆1=========================

魔石(F)

 

魔物からドロップした極小の魔石。

使い道は殆ど無く、売却額にも期待できない。

===============================


===☆2=========================

スライムゼリー

 

スライムからドロップしたヒンヤリとしたゼリー。

傷口に塗ると、少しだけ治りが速くなる。

===============================

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ