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第4話 チュンチュン うれし恥ずかし朝帰り!

~ 一週間の準備期間を経て、お泊り当日 ~


 日曜日の午後、私はお出かけ前に、寮のお風呂に入り、髪と身体を綺麗に洗って、全身のムダ毛処理をした。ヒデ君のアパートにはお風呂ついてないからね。

 うん、髪サラサラ、お肌なんてツルツルのスベスベ。ゆでたまごみたい。完璧!


 私は、脱衣所に誰か入ってこないかキョロキョロしながら、例のよそいきの黒い紐パンを穿き、黒のブラも着けて、鏡の中の私にニコっと微笑みかけた。

 お、ふふふ、大丈夫。だんだん慣れてきたぞ。これ、セクシーでなかなかいいんじゃないの。


 だけど、お洋服は、あんまり気合入れずに、普通のをチョイスした。脱いだときのギャップ萌えを狙うわよ。

 胸を強調するアイボリーのピッタリしたセーターに、タイトな茶色のツイードのミニ。それとベージュのコートと、ニーハイの黒いブーツ。うん、いいんじゃない。私、背高いから、こういうの似合うわよね。


 そして、寮を出て、聖蹟桜ケ丘から電車に乗って3駅。ヒデ君が住む街へ。いざ!

 

 ******


 夕方5時に改札で待ち合わせ。

 私が電車を降りて、沢山の乗客と一緒に北口の改札まできたら、外で「おーい」って背伸びして手を振るヒデ君がいた。

 私は、改札を抜けて、「来たよー」って、キュっとヒデ君に抱き付いて、手を繋いで二人でお買い物に出かける。


「今日さ、友達からカセットコンロとプレート借りて来たから、焼肉にしよう。ちょっと奮発して高い肉買おうよ。あとビールも」

「へー、いいねー。そうしようそうしよう」

「ほんとは、記念の日だからさ、どっかこじゃれた店で乾杯とかするのかも知れないけど、俺、そういうのちょっと苦手で‥‥‥」

「ううん、そんなことない、お家で一緒に作った方が楽しいよ。私、ヒデ君のそういうとこ好きよ!」 そう言って、私は、組んだ腕をギュってした。


 駅ビル地下の高級スーパーで、二人でカートを押しながらお買い物。なんか新婚さんみたいで、嬉しいな、楽しいな。


「カルビとロースは外せないよな。あと、タン塩も」

「うん。あ、あと私、豚トロと塩ホルモンも欲しい!」

「渋いチョイスだなー。だけど、そんなに食べられる? まあ、残ったら、明日の朝二人で食べたらいいのか」


 ふふふ、『明日の朝、二人で食べる』だって‥‥‥。ふふふふ。


 その後、ピーマンとシイタケとナムルを取って、レジへ。

 えっ? 12000円もするの?‥‥‥た、高っ!

 うん、だけど、今日は記念日だもの! 高いなんて言いっこなし!


******


 ヒデ君の部屋で、デスクにコンロをセットして、お肉は大皿に並べて、ヒデ君が作っておいたワカメスープと白いご飯もよそって、さあ、準備完了!

 ビアグラスにビールを注いで、「かんぱーい!」ってカチンとやって、焼肉パーティの始まり始まり! ジュッジュー!


 お、美味しい! さすがいい肉。夢中で食べちゃう。また、これ、白いご飯と合うわねー。

 二人とも、会話少な目で、もぐもぐ、グビグビと、お箸が止まらない。焼肉って、どんどん焼けるから、なんだか場が静かになるわよね。


 そしたら、私がオーダーした、豚トロと塩ホルモンを焼き始めたところで、プレートから激しい煙が! わー、脂が焦げてるー。火が、火が立ち昇ってるわよ!

 あっという間に、部屋の半分から上に白い煙が充満して、「ちょ、これ、眼に染みるわよ」「ケホケホ、これはたまらん」ということで、窓を開けて、換気扇フル稼働、玄関も開けて風を通す。

 あはは、こういうアクシデントも楽しいわね。だけど髪に脂の匂いがついちゃったな。まあ二人とも同じだから、いいんだけどね。


******


 ご飯のあとは、ヒデ君が借りてきた映画のDVDを見て(「シェルブールの雨傘」だった。主演のカトリーヌ・ドヌーブが綺麗だった)、午後9時30分になった。

 

 そしたら、ヒデ君が、「じゃ、一緒に風呂屋行こうか?」って言ってきた。


 え? あ、そういうことになるのか。そりゃそうよね。

 ん? だけど、私、今、超セクシーな紐パンなんですけど。ほぼ全裸みたいなんですけど。お風呂屋さんの脱衣所で、子供とかお母さんとか、おばあちゃんがいるところで、こ、これ、とても見せらんないんですけど‥‥‥。


「いや、私、出がけに入ってきたから」

「へー、そうか。じゃ、俺だけ行ってくるか。煙の臭いがついちゃったからな」

「なっ、ちょ、ちょっと待って! 私も行く! ‥‥‥けど」

「けど?」

「き、着替えるから、ちょっとそっち行ってて!」

「? なんで風呂屋に行くのに着替えるの?」

「女の子には、いろいろあるのよ!」


 そうして、私は持参の白の下着に着替えて、ヒデ君と腕組んで、一緒にお風呂屋さんに行った。洗面器もって二人で歩くのは楽しかった。

 お風呂入って、髪を洗って乾かしたので、ちょっと時間がかかっちゃって、出て見たらもうヒデ君が待っててくれた。

 寒い中立ってたので、手が冷たくなってて可哀想。私、両手で包んで、ハーって息もかけて、あっためてあげた。


******


 さっぱりして部屋に戻って、さあいよいよなのね、というところで、

「ヒデ君。ちょっと待ってて。私、着替えるから」と、私はきっぱり宣言した。

「えー? またー? 何なんだ、さっきから」

「訳はあとで分かるわよ。寒くて悪いけど、玄関の方にいってて。私、着替えたら、ベッドに潜って、ヒデ君呼ぶからね」


 ヒデ君は、渋々部屋から出て行き、私は素早く着替える。が、緊張してうまく紐が結べない!

何度やっても、蝶結びが縦に! どうして? 

 ‥‥‥お、やっと上手くいった。 


 私はセクシー下着のまま、ベッドに潜り込む。

 あれ? くんくん。これ、なんだっけ? ああ、これお日様の匂い。昼間干してくれてたんだ。ふふ、あったかくていいな。

 あ、ヒデ君の匂いもするな。嬉しい、くんかくんか、いい匂い。


 ……が、そこで思い出しちゃった。せっかく忘れてたのに。

 このシングルベッド、だけど大きな枕。私の前に誰がいたのかしら? 女の子、何人、ここにいたのかしら? うう……、胸が、キューって、苦しいよう。


 ああ、もう、私のバカ! やきもち焼き! ヒデ君は、今、私を愛してくれてるんだから、それでいいじゃないの。前が誰かなんて、私に関わりのないことじゃないの。もう、私、堂々としてなさいよ!


 と、私は気を取り直して、部屋の外で待ってるヒデ君に、「待たせてごめんねー。もう来ていいよー」って声をかけた。


 そしたら、仕切りのカーテンを開けて、黒のボクサーパンツ一枚のヒデ君が、「うー、冷えた、さむー」って言いながら入ってきて、私の横にスポって、潜り込んできた。

 なんか、とっても普通の感じで、ちっとも違和感がなくて、前からこうだったみたいで、だから、私、「ほんとだ。可哀想。ごめんね」って言いながら、キュって抱きしめて、暖めてあげた。


 そしたら、肌と肌が合わさって、それがあんまりあったかくてびっくりして、二人ともハッっとして顔を見合わせて、

「ヒデ君。裸で抱き合うと、こんなにあったかいんだね。知らなかった。気持ちいいね」

「そうだな。人肌ってやつだな。これいいな。しばらくこうしていよう」って言い合いながら、ヒデ君は私の背中に腕を回し、私も手を回して、ヒデ君の胸に顔を埋めた。ヒデ君の肌の匂いだ。心臓がトクトク言ってる。今、確かに生きてるんだな。


 そうして、しばらく暖めあってたら、ヒデ君が、

「チュンチュン、とってもあったかくていいんだけど、やっぱりブラが邪魔だな。外していい?」って言って来たので、私、「うん、いいよ。その方がいいね」って答えて、ちょっと背中を反らせて、ホックに手が届くようにしてあげた。

 

 だけど、ヒデ君、なんだかうまく外せないみたいで、まごまごしてるので、

「どこか分かんない?」って聞いたら、ヒデ君が、

「うん。俺、女の子とするの初めてだから、こういうの分かってなくて、ごめんな」 だって。

 

 なんという、衝撃の一言。


 私、それ聞いて、思わず、

「な‥‥‥もう、バカ! ヒデ君のバカっ!」って、大声で言っちゃった。

「うわ、またかよ。何で?」

「なんででもよ。もう‥‥‥だけど、ふふ、そうなのか。ふふ、この、この!」

「うわ、かじり付くなよ。フヒャヒャ、やめろー!」


 よかった。すっごく嬉しい。

「そうか、ヒデ君。初めてだったのか」

「そうだよ。お前もそうだろ?」

「そうよ。だから、この一週間、すっごく緊張してた。ヒデ君も同じだったって思ったら、いっぺんに安心しちゃったわ。‥‥‥あとね、私、ヒデ君の幻の元カノに、すっごいやきもち焼いてたの。胸が苦しくて、泣きそうだったの。今になってみるとバカみたいね。ふふ」

「なんだよー。そんなこと考えてのか(呆)」

「だって、ヒデ君、すごいもてそうなんだもん」

「いや、俺、あんまり女の子に軽くないから。心が通ってないと、話しもできないから。だけどお前は最初から気が合ってビックリしたんだぜ。『これは、絶対放しちゃいけない!』って、繋ぎ止めるのに必死だった」

「へー、嬉しい。私もそうよ。この人なら自然に、一緒にいられるって思ったの」 そんなこと言い合って、私とヒデ君は、ニマニマしながら見つめあった。だけど、


「‥‥‥ヒデ君、私たち、二人とも初めてなのは嬉しいけど、そんなんで上手くできるのかな?」

「大丈夫だよ。今日上手くいかなくてもさ、またやり直したらいい。チャンスは毎週あるんだから、いつかきっとできるよ。最初はへたくそかも知れないけど、ちょっとずつ二人で作っていけばいいんだ」

「うん、そうね、そうよね! ……うふふ。やっぱりいいな。ヒデ君、私ね、ヒデ君のこと、すっごく愛してる!」

「俺もそうだ。これまで会った誰よりチュンチュンを愛してる」


 そう言って、ヒデ君は背中に手を回し、今度は上手くホックを外して、私をきつく抱きしめてきた。ああ、すごく暖かいな。身体がピッタリ合わさってる。だけど、もっと、もっと中に。


 ヒデ君と私は、お互い深く舌を絡めあって、激しいキスを交わし、そして、ヒデ君は、首筋にそっと唇を這わせてきた。ツーって、耳から肩まで、唇と細い舌先でなぞっていく。私は、思わず、びくっと身体を反らせて、こらえきれずに細い声を漏らしてしまう。


 ヒデ君は、身体を起こして、私を上から眺めながら、ブラを外した胸を眺めて、

「チュンチュン、大きくて柔らかくて、綺麗な胸だな。こんな綺麗な身体が俺のものになるなんて、すごく幸せだ」ってささやきながら、そっと両手を伸ばし、優しく胸を揉みしだき、桜色の先端を軽く嚙んでくる。


「あんっ!」って、私、思わず全身を震わせて、ヒデ君の首に夢中で掻きつく。

 ヒデ君のカチカチになったあそこが、私の白い内腿に当たってくる。


 そして、次第に、ヒデ君の顔が、私の下の方に降りていったと思ったら、

「ああ、これ? なるほど」って、なにか納得したような声がした。もう、やっと分かったのね。


「そうよ。今日のために用意したの。これ、銭湯じゃセクシーすぎるでしょ?」

「はは、そうだな。でも、すごく綺麗だぞ。チュンチュンの身体のラインが綺麗に出てる」

「そう、ありがと。思い切って着てきてよかったな。‥‥‥ああ、そうだ、言い忘れてた」

「何?」

「ヒデ君、今日は大丈夫だからね、ゴムしないで、そのまま最後まで中にしてね。私、ちゃんと全部受け止めるから」

「あ、そうなのか。それは嬉しいな。間になにか挟まるの嫌だもんな。是非そうしよう」


 そして、いよいよクライマックス。

 私は、ベッドの上に軽く両手を広げ、片膝を少し立てて、横を向いて赤くなってる。ヒデ君がショーツを脱がせて、私の中に入って来るのを待っている。

 私、初めてなんだけど、さっきから、もう、すごく濡れてるのが、自分でも分かる。早くヒデ君を受け入れたいって、心と身体が叫んでる。


 ヒデ君は、「チュンチュン、本当に、すごく綺麗だ。ずっと見てたいけど、そういうわけにもいかないよな」って言ったあと、


「……チュンチュン、さあ、大人への最後の階段、手を繋いで一緒に登ろう」


 ってささやいて、私の首筋にキスしながら、ギュっと抱きしめてきた。


 そうして、ヒデ君は、ショーツの蝶結びに、手を掛けた。


******


 私とヒデ君は、その夜、無事に結ばれた。

 初めてだったけど、割とスムースにヒデ君が入ってきて、私の中がヒデ君で満たされて、もちろん痛かったんだけど、身体が引き裂かれそうだったんだけど、それより嬉しい方が、幸せな気持ちの方がずっと大きかった。

 

 最後は、ちゃんと、ヒデ君の全部を、私の身体の一番奥で受け止めて、最後まで離さずにきつく抱きしめて、私は、とても満たされた思いで、胸がいっぱいになった。

 やっと、大人に、女になったって、本当に思えた。


 果てたあとも、二人とも、気持ちがどんどん、あとからあとから溢れてきて、止まることがなかった。だから、少しして、ヒデ君がまた元気になってから、もう一度激しく愛し合った。

 私、その時、すごく自然に、ヒデ君のこと、お口でしてあげられた。ちっとも怖い事なくて、恥ずかしいこともなくて、お口でしてあげながら、ヒデ君が「くっ」って声を漏らすのを見てると、すごく可愛いなあって、もっと気持ちよくしてあげたいなあって、心からそう思った。


 そうして、そのあと、二人は、裸で抱き合ったまま、朝まで眠った。

 私は、横を向いて、ヒデ君の胸に顔を埋めて、すごく安心して、ぐっすり眠れた。

 もう、怖いものはないな。この人は私のものになったんだな。

 ずっと、ずっと、離さないんだから……。


 そして、多分午前6時ころ、眼を覚ましたあと、どちらからともなく、また求めあって、抱き合って、愛し合った。

 私、最初ほど痛くなくなってきて、もちろんヒリヒリはしたんだけど、きっと、そのうち、とってもよくなりそうな、そんな予感がすごくした。


 きっと、私とヒデ君、身体の相性もピッタリなのね。ふふふ。



******


 朝ご飯は、昨日の残りのお肉とおつゆだった。


「おいしー、焼肉おいしー。ご飯バクバク食べちゃう」

「ほんとだなー。‥‥‥しかし、一晩抱き合って、翌朝二人で焼肉食べてるって、なんかイカニモですごい感じだな」

「あはは、そうね。まあ、私達らしくていいじゃない。気取ってなくて」

「そうだな。今日から大人編のスタートか。チュンチュン、これからもよろしくな」

「うん、こちらこそ!」って言いながら、だけどお口が焼肉だから、私は、ヒデ君のほっぺにチュってした。


 そしたら、あはは、やっぱりカルビの脂がついちゃったわね。


 私はウェットティッシュで、ヒデ君のほっぺを拭いてあげる。


 もう、ほらー。って、私がしたんだけどね。


 ふふ、私の男。私だけの男。


 ヒデ君。大好き。


 私、あなたを愛してる!



         「黒い髪の人魚」スピンオフ  ~ 終電なんて大嫌い ~ (了) 




 

 

 

 

 読者の皆様 いつも拙作をお読み頂き、ありがとうございます。

 今回で、チュンチュンとヒデ君の日本での物語は一旦終わりになり、次回からは、二人が別れたあと、上海で生活するチュンチュンのお話しになります。上海からヒデ君を想う、ウェットな物語になりますので、せつないラブストーリーがお好きな方は是非どうぞ。

 本作、全く人気がなく、どうも一日3人くらいの読者の方しかお読み頂けていないようですがw、読んで下さる方がおられる限り、最後まできちんと書く所存です。

 もし気に入って頂けたならば、いいねやブクマ、評価して頂けますと、喜びこれに勝るものはありません。

 それではまた!

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