第3話 チュンチュン、お泊りの準備で頭から煙を出す!
~ 翌週、チュンチュンはヒデの部屋でお泊りすることに ~
「へー、そうなんだ! チュンチュンおめでとう! それじゃ、今週末は人生の一大イベントだね。応援するよ!」
「うん、ありがとね。‥‥‥だけど、ほら、私、(声を潜めて)‥‥‥初めてだから、全然勝手がわかってなくて‥‥‥、そういうのの、常識とか、気の持ちようとか、上手なやり方とか、エッチの先輩に教わりたいの。ね、教えて、お願い!」
ヒデ君に私をあげるって約束した二日後の火曜日、私は、学食でヒデ君を待ちながら、エッチな先輩のアドバイスにすがっていた。
「ふふーん、そう。じゃ、なんでも聞いてちょうだいよ」
「うん、あ、あのね、まず、当日は何着てったらいいのかな?」
「別にかわいい服なら何でもいいんじゃない。どうせ脱いじゃうんだしさ」
「いや、そうじゃなくってね……し、下着のこと……」
「あ、そういうこと! 『勝負』ってやつか(笑)。うーん、そうね、いかにもだけど、初めてならシンプルな白がいいかもね。清潔感あって」
「うーん、やっぱりそうなるのか」
「だけどチュンチュン、あんた、すごい色白で、スタイルもいいんだから、黒の小さいのが似合うと思うよ。髪も綺麗な黒髪だしさ。それこそ紐パンとか」
「ひ、紐パン。まさかサイドが細い紐になってて、蝶結びにするやつ?」
「そうよ。だから紐パンって言うんじゃないの(苦笑)。セクシーだし、脚長く見えるし、あれいいと思うよ」
「うーん、そうか……。持ってないから、ちょっとお店で見てみるか。あと何か持ち物あるかな。着替えと洗面のほかに、あの、その、‥‥‥ゴムとか……」
「それは彼が用意するでしょ、いくらなんでも。だけど、チュンチュンはそれでいいの?」
「?」
「初めてなのに、ヒデ君との間にゴムなんか挟まっていいの? 私なら嫌だけどな」
「‥‥‥それは私だって嫌よ。ちゃんと一つになりたいし、最後まで全部私の中で受け止めたいよ」
「そっか、じゃ、私が使ってるアフターピルあげるよ。あれ、終わったあとすぐ飲めば、ゴムより避妊効果高いよ。あんたもうすぐ生理だって言うし、まず大丈夫でしょ」
「うう……ありがとう。恩に着るわ」
持つべきものは友達ね。私、思わず、友達の手を両手で握って、ブンブンしちゃった。
私だって、ヒデ君をそのまま受け入れたいもん。
よかった。懸案が一つ解決したぞ。
「あ、あとね、私、いざそうなったら、二人でベッド入ったら、どうしたらいいの? 何をしたらいいの?」
「そんなの、ヒデ君に任せておけばいいんじゃないの。きっと、経験豊富なんだろうし」
「‥‥‥やっぱり、そう思う? ‥‥‥うっ、うっ」
「わっ! 泣いた! あんた、しっかりしなさいよ。まったく。ほんとにヒデ君に夢中なのね(呆)」
「だって、だって、私はヒデ君が初めての相手なのに、ヒデ君は違うんだって思うと、もう胸がキューって苦しくて(泣)。もう、もう、ヒデ君のバカー、エッチ、スケベ、女の敵ー……」
「あんなカッコよくて、優しくて、性格もいいんだから、仕方ないでしょ。女なら大抵誰だって惚れるわよ。あんたが彼女じゃなかったら、私が欲しいくらい(笑)。これからあんたがガッチリと心と身体で繋ぎ止めたらいいでしょう?」
「うん、そうね、そうよね……」
「そう思ってるなら、なにかヒデ君が喜びそうなことしてあげたら? まあ、無理する必要はないけどさ」
「喜ぶこと?」
「うーん、初めからだと、ちょっと大胆だけど、お口でしてあげるとか」
「お、お口? って動画でよく見るあれ?」
「そうよ。それ。知ってるんじゃない(笑)」
「そ、そんな、私、やり方分かんないし‥‥‥」
「そんな難しいことないわよ。(口を耳に寄せて)親指と指二本で根本優しく握って、上下させながら、お口でね……ゴニョゴニョ」
私、それ聞いて、両手でほっぺをグニューってして、口をアヒルにして、真っ赤になっちゃった。頭からプシューって煙出てる感じ?
無理無理、それ無理ですから!
恥ずかし死にしますから!
そしたら、うわー、
「お待たせー。授業伸びちゃった。腹減ったー‥‥‥ってチュンチュン、なんでアッチョンブリケしてるんだ? ピノコみたいだぞ。はは」って、ヒデ君が来ちゃった! こんな顔見られちゃった。でも急に平静に切り変わんないよー。えー、どうしよう?
「う、うん。なんでもないの」って、しどろもどろになってたら、友達が、
「ふふ、ヒデ君、女同士はね、内緒話があるものなのよ。ちょっと外しててくれる?」って、フォローしてくれた。
「なんだそれ、つれねーなー(笑)。ま、そしたら俺、先にお昼買ってくるよ」って言いながらヒデ君は、食券売り場の方に行っちゃった。
私、真っ赤なほっぺが落ち着くまでちょっと待ってから、友達に「ありがとね!」って言って、ヒデ君を追いかけてって、隣に並んで、ギュって腕組んだ。
「ごめんね! お話終わった。お昼食べよ。私もヒデ君と同じのでいいわ!」
「へー。ガッツリいくね。それじゃ、スタ丼肉ダブルご飯大盛を二つと。あと卵も。ピッとな」
「ゲっ!」
******
その日、大学の帰りに、駅ビルのデパートに寄った。
すっごく恥ずかしかったけど、下着売り場で、黒の紐パンと、それに合わせた黒のレースのブラを買った。Eの70あるかなって心配してたけど、ひとつだけあった。よかった。
早速、女子学生寮に帰って、部屋で着て、鏡を見てみたら‥‥‥す、すごっ‥‥‥。
なにこれ、超すごいんですけど。なんか、黒いマスクが貼り付いてるくらいの面積しかないんですけど。
サイドの紐は靴紐くらいの太さしかないし、後ろだって幅2㎝くらい。もう「ほぼ全裸」みたいに見えるんですけど‥‥‥。
こ、これはだめだ。正視できない。私は鏡に背を向けて、机に片手ついて、スーハーと息を整えた。
(が、しかし)、と私は思い直し、また意を決してガバと飛び起き、鏡に向かう。
‥‥‥うん、よくよく見ると、これは、割と私に合っているんじゃないか?
黒い下着と白い肌のコントラストがいいし、広い肩から細いウェスト、そしてお尻に続くラインも、邪魔がなくて綺麗に見えるな。それに、タイトなスカートでもショーツのライン出ないし、いいんじゃない?
よし! せっかく買ったんだから、勇気出して、これで勝負するわよ!
だけど、すごく小っちゃいから、サイドは当日にムダ毛処理が必要ね。てか、全身ちゃんとやろう。あと、出がけにお風呂も入って行こう。
私は、そう決心したあと、ちょっと調子に乗って、前傾姿勢でお尻をツンと突き出し、長い髪をかき上げるボーズを取って、鏡の中のすごーくセクシーな私に、ニッコリ笑いかけた。
が、やはりすぐに、「あー、ダメダメ。これ絶対私じゃない……」と羞恥の限界に達し、また頭からプスプス煙を出し、後ろを向いて片手ついてスーハーしてしまった。
うう、なかなか慣れることがないな‥‥‥。
ていうか、こんなんでヒデ君喜んでくれるのかな?
これまでのヒデ君の彼女、どんな子だったのかな? どんなことしてあげてたのかな?
ああ、胸が苦しい。もう、私をこんなにして、ヒデ君のバカ……。