【第94話 幸せになれ。黒龍、オパ】
友紀とオパが龍神の里にやって来た。
「友紀様、よく来てくださいました。さぁオパ、大龍神がお待ちです」守衛が言った。
オパは叔母に「龍神ズの制服に着替えるように」と言われた。友紀は白い肌着の上に紺の服と水色のスカート、黒のハイソックスに着替えた。
館の中には、龍神ズの全員が制服姿で座っていた。正幸は青の光沢のあるネクタイにスーツと、非常に改まった装いだった。何か大切な話が行われる予感がした。
大龍神が口を開いた。「みんなを集めたのは他でもない。今から言うことの証人となってほしい」
「出雲黒龍、並びにオパ。あなたたちに幸せになるよう命令する」
大龍神は続けた。「このままでは、互いのことを思いやりすぎて、取り返しのつかないことになってしまうと判断した」
「オパ、あなたは黒龍とは釣り合わないと思ったそうだね。しかし黒龍は、あなたの良いところも悪いところもひっくるめて、これからの人生を一緒に歩むと言っている。あなたの頑張りは、友紀と龍神ズが保証する」
「そして黒龍、あなたもよく人間界で更生してきた。例え旅館出雲を継げなくとも、十分素敵な龍神に成長した」
大龍神の言葉に、オパは感涙した。
何かを決意したように、オパは言った。「黒龍さん、返事をしても良いですか?」
友紀やキリュウ、スイリュウが促した。
黒龍はオパの真正面に来た。
オパは頭を下げて言った。「私を、黒龍さんのお嫁さんにしてください」
「もちろんだ」
黒龍は微笑み、オパをしっかりと強く抱きしめた。
黒龍の不安だった気持ちが、抱きしめる勢いで友紀たちにまで伝わってきた。オパは黒龍の温もりと愛おしさに、声を上げて泣いた。
友紀も、キリュウも、スイリュウも、涙を流していた。
「オパが泣くのは分かるけど、何で友紀たちまで泣くの?」大龍神は呆れていた。
オパの頭を撫でながら、黒龍も涙を流した。「本当に良かった……」
「黒龍、妹のことを頼む。幸せになれ」ハクリューは黒龍と握手をした。
祝い酒が振る舞われた。友紀の合図で、一斉に乾杯した。
大龍神は、引き続き友紀のもとで働くという契約書に一筆書いた。
後日、友紀がその時のことを黒龍に聞いたところ、こう答えた。
「人生で一番緊張したよ。オパからの言葉で、一気に楽になった」
友紀はそれを聞いて思った。なんかいいな——。




