【第9話 治る希望と新たなる挑戦】
友紀は、電話が鳴るのを見つめていた。画面には、父の名前が表示されている。心臓がドキドキしながら電話を取る。声は少し緊張していた。
「母の治療が、かなりうまくいき、退院できるようになった。」
その言葉を聞いた瞬間、友紀の胸はしっかりと撫で下ろされた。これで少しは肩の荷が下りる。もう一度実家に戻ることにするが、実はその理由は少し複雑だった。
友紀と両親の関係はあまり良くなかった。彼女は自分から連絡を取ることができず、余裕のない日々が続いていた。互いに一触即発の親子喧嘩をしているような状態だったのだ。そんな中、甘え下手な友紀は、親に素直に甘えることできず、一人で抱え込んでしまった。それを見ていたアカリューが少し呆れた様子で言った。
「なるほどね…。そういうことか。」
キリュウは優しい言葉を掛けてくれる。
「お母様が元気になってよかったね。」
スイリュウは、少し真剣な表情で言った。
「まずはお父様と仲直りしてね。」
実家に帰ると、両親が揃っているのが見えた。友紀はまずは謝ろうと決心した。
「お父さん、ごめんね。」
すると、父も「こっちこそごめん」と返してきた。その瞬間、何かが解けたような気がした。アカリューたちは、友紀の父が作ったご飯を美味しそうに食べる友紀を見て、ニコッと笑っていた。平和な時間が戻ってきたのだ。
友紀の母は、医者から「根治もあり得る」と聞いたことを説明し始めた。その話を聞いて、友紀は今までの活躍を思い出し、涙が溢れてきた。アカリューはそれを見て、泣くのをぐっと堪えているようだった。
キリュウとオパは優しい笑顔で「よかったね。」と言ってくれた。スイリュウは、少し真面目な顔で言った。
「母の病気は油断大敵だから。気を引き締めるように。」
そんな時、スマホが鳴り、友紀のラインが届いた。中学時代の顧問の先生からだった。合唱団「このは」のセカンドコンサートの話が来ていて、行ってみることになった。友紀は一瞬戸惑ったが、ふと思った。
「これが新たな扉を開くかもしれない。」