【第86話 気持ちの整理】
友紀は正幸と喧嘩してしまった。
しかし、友紀はあの同僚のことを好きだと意識したことなど一度もなかった。
翌日、友紀はしっかり仕事をこなした。それでも、ふとした瞬間に泣きそうになった。あの仕事のできる同僚に比べて、自分には足りない部分が多すぎる——そんな劣等感が友紀を包んでいた。
ベテランスタッフがたばこを吸いに外へやって来た。友紀が床道具を洗いながら、涙をこらえて必死に戦っているのが見えた。
「寒くて鼻をすすってるのかと思ったよ」ベテランスタッフは温かい麦茶を淹れながら話しかけた。
「大事な人と喧嘩してしまったんです」友紀が答えた。
「大事な人とは正幸君のことか。昨日のやり取りを見ていたが、お節介なことをしよって」ベテランスタッフは若干怒りを込めて言った。「あの同僚は昔から知ってるが、友紀が彼女になるには難しいよ。何故なら、ゲームにしか興味がないからね」
友紀はクスッと笑った。
「隣の芝生は青く見えるもんだ。でも逆に、友紀の仕事ぶりを評価してくれている人がたくさんいるんだよ」
お茶を飲むと、少し落ち着いてきた。
仕事が終わると、幹也から電話が来ていた。「正幸は龍神の里に行ったから、今日は朱雀寮に帰ってこい」
友紀は朱雀寮に帰った。
「お付き合いのことなんだけど、目線を見て嘘だと分かったよ」幹也が言った。
「むしろ友紀の苦手なタイプだろうね」凛が続けた。
「とりあえず正幸さんと仲直りしないことには始まらないからね。気持ちを書き出して」彼方が白い紙を差し出した。
友紀は自分の気持ちを書き出した。飾り気のない、ピュアな手紙の出来上がりだった。
その日、正幸は龍神の里に泊まった。龍神ズとゆったり過ごしたおかげで、落ち着いてきていた。
「友紀の正幸さんを見る目に注目してみたらいいよ。キラキラしてるから」ハクリューが言った。
大龍神は言った。「明日、友紀も呼ぼう」




