【第81話 それぞれの願い】
合唱団このは退団から数日、友紀は龍神ズを連れて旅館出雲を訪れた。
友紀は身を清めるため風呂に入った。近々、正幸とデートすることになったのだ。今度は素直な自分を出していこう——そう決めていた。
キリュウの体調は完全回復し、アカネもすくすく成長していた。アカリューとキリュウは慣れない育児に奮闘中だったが、友紀たちも手伝うので安心して子育てができていた。
旅館出雲は毎日きれいになっていたおかげで、お客さんがたくさん来てくれるようになり、儲かっていた。
しかしその頃、正幸に思わぬことが起きていた。
正幸は取締役に呼び出されたのだ。
「体調が戻ってきたならば、社長令嬢と再婚するように」
正幸ははっきりと答えた。「体調の件は元気になってきましたが、私の居場所は大阪支社です」
取締役は驚いていた。まさか正幸がはっきり断るとは思わなかったのだ。
そもそも社長令嬢と正幸が結婚したのは、実家のお好み焼き屋が流行り病の影響で経営難になっていたからだった。結婚することで支援を受けていたが、元々二人は合わなかった。正幸は慣れない環境と心労で体調を崩したのだ。
取締役はそのことを知らなかった。
ちなみに、お好み焼き屋は今では持ち直している。ハクリューと契約を結んだ後、改善点を洗い出し、本社で学んだことをフル活用したからだ。ハクリューも黒龍の兄と相談し、友紀たちも繁忙期に接客や清掃で応援に入った。
そんな中、大龍神は友紀に言った。「今度、正幸を連れてくるように」
正幸も守衛に調べられて龍神の里に入れることになり、面会が許されることとなったのだ。




