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【第78話 市民合唱祭の朝】
市民合唱祭の朝がやって来た。
彼方が練習場所まで送ってくれた。車を降りる前、彼方はハンカチを持たせてくれた。
「最後まで楽しむから」友紀はお礼を言って、練習場所へ消えていった。
練習場所は少しわかりにくい部屋だった。何とかたどり着くと、成美先生たちが待っていた。
少し早めの昼ごはんを囲む。鞄の中にキリュウが入れてくれたのは、野菜サラダとおにぎり二つ。友紀は食べるスピードがいつもよりゆっくりだった。
いつもは賑やかな昼ごはんの時間が、今日は静かだった。
今日の指揮はボイストレーナーが務める。高橋先生は九州の方に指揮をしに行っていた。しかし、最後まで友紀のことを可愛がってくれていた。
練習は2時間。それさえあっという間に終わった。
あっという間に移動時間になった。部屋を片付けていると、段々と空っぽになる部屋に寂しさが襲ってきた。
友紀は首を振った。「最後まで泣かないもん」
そう言って、何とか涙を耐えた。
この2年間で、友紀は大きく変わっていた。




