【第5話 アカリューとキリュウ。運命を変える二体】
友紀は、別作業を頑張っていた。しかし、思うような成果はまだ現れなかった。それでも、彼女はオパに話した気持ちを思い出し、前向きに変わりたいと真剣に努力していた。声に出して確認することで、ミスも少しずつ減っていった。
そんな彼女の様子を見ていたトレーナーは、「午前中の作業を午後まで引き延ばす?」と考えた。実はトレーナー、友紀の不調の中にもほんの少しの素直な気持ちが隠れているのではないかと信じていたのだ。
その時、友紀に会いたいと申し出てくれたのが、龍神のアカリューだった。彼は、天狗が住むと言われている太郎坊宮に住んでいる存在である。友紀は思い切って、太郎坊宮へ出かけてみることにした。
しかし、太郎坊宮へは742段の急な石段を登らなければならなかった。母を助け、自分の生き方を変えたい一心で、友紀は742段を一歩一歩、確実に踏みしめながら登っていった。
「ああ、汗か涙かわからないけど、ここは頑張るしかない!」と声を出しながら、彼女の顔はぐちゃぐちゃになった。しかし、友紀は最後まで登りきった。その様子を見たアカリューは、「彼女には根性がある」と感じた。
アカリューは、天狗の父と龍神の母を持っている。友紀のぐちゃぐちゃな顔を見て思わず笑みを漏らした。しかし、母のことや作業に関する会話が進む中で、友紀が非常にピュアな心を持ち、根性と粘り強さを兼ね備えていることに気づいた。
「次は室生龍穴神社のキリュウを訪ねると良い」とアカリューの父が言った。アカリューの母は友紀に指輪を渡し、「きっとお母さんは好転するわ」と励ましの言葉を贈った。
その日、友紀はオパと共に近江牛コロッケを食べて帰宅した。あれほど登った石段を思い出しながら、友紀は心の中で「これからも頑張るぞ!」と決意を新たにした。
数日後、少しずつ別の作業で奮闘していた友紀が、疲れ果てて帰宅していると、突然雷の音が響いた。なんと、雲が龍の顔に変わり、その雲がアカリューに姿を変えた。友紀とオパのもとに現れたアカリューは、名前の通り赤いたてがみにオレンジの体を持っていて、オパの何倍もの大きさがあった。
「乗って!」とアカリューは言って、友紀とオパを自分の背中に乗せた。そして、雷雨から無事に生麦市のアパートへと送り届けてくれた。
アカリューはその後、通常はオパと同じくらいの姿になり、友紀とオパと会話もでき、必要であれば空も飛ぶという”契約”を交わした。
そして、翌週には室生龍穴神社へ行くことが決まった。キリュウも“友紀に会っても良い”と申し出てくれた。友紀は、ワクワクしていた。