【第48話 友紀の珍しい失敗】
いつも舞台では失敗のなかった友紀。恩師やこのはのメンバーからも、しっかりついていけていると評価されていた。
ところが、今回はいつもと違った。
両親と朱雀寮のメンバーだけでなく、教育係とサブリーダー、その同僚、さらにその彼女まで観に来るという。しかも教育係は「付き合いたいから、ご家族に会わせてほしい」とまで言ってきた。正幸なら友紀の家族に会ったことがあり、父からも「正幸君、久しぶり」と声をかけられるほどの仲だが、教育係は違う。
友紀に想いを寄せる人が現れたという話は、このはのメンバーにも伝わっていた。
今回の舞台は、著名な作曲家も来場される。友紀はアルト下に慣れてきたとはいえ、曲は難しく、千晶が「苦労している顔をしている」と心配するほど、やつれていた。
本番前、友紀は初めてオパに弱音を吐いた。
「緊張で吐きそう……」
それでも友紀は、来てくれた人たちのために一生懸命歌った。しかし、その必死さは、観客には辛そうに見えてしまったようだ。
「自信がなくて笑顔が全くない」
アンケートにそう書かれていた。
友紀は衝撃を受けた。来てくれた人たちにプレゼントを渡したが、その顔には悔しさが滲んでいた。
「舞台が怖くなったか?」
高橋先生が尋ねた。
友紀は唇を噛んでから答えた。
「はい……。でも、もう一度できるなら挽回したいです」




