【第33話 悔い無き別れを】
このはの練習に参加していた友紀は、市民合唱祭への出演が決まり、ドキドキしながらピアノ合わせの日を迎えていた。アルト下のパートに少しずつ慣れ、団長の成美先生やリーダーの里美からの温かいサポートを受けながら、日々成長していた。
その日、練習が始まると楽しい曲が続き、皆が笑顔で歌っていた。
ところが、「夕焼け」という曲に差し掛かると、どこからか嗚咽の声が聞こえてきた。高橋先生がちらりと友紀を見て、顔を曇らせる。友紀の様子がおかしい——誰もがそう思った瞬間だった。
「今から休憩を取りましょう」高橋先生が指示を出すと、友紀はこらえていた涙を流し始めた。
近寄ってきたピアノの先生の顔には心配の色が浮かんでいた。成美先生が友紀を励まし、優しく背中を撫でた。「よく耐えていたね」
友紀はついに打ち明けた。「実は、おばあちゃんが亡くなったんです……」
声は震え、涙が止まらなかった。キリュウも寄り添い、心強く彼女を支えた。
成美先生は静かに語り始めた。「私も夫を亡くしたことがあるの。その時、友紀のように泣いた」
友紀は顔を上げた。
「でもね、こんな話を聞いたことがあるよ。肉体は亡くなっても、魂は生き続けるの。そして、悔いのない別れができれば、その魂が護り神となって見守ってくれるんだって」
「悔いのない別れ……」友紀は真剣な表情で耳を傾けた。
「明日が通夜で、明後日が告別式だね。友紀からお礼を伝えようね」
周りからも「お祖母ちゃんは見ているよ」と温かい声が飛んできた。
友紀は涙を拭い、みんなの励ましに感謝した。高橋先生の号令で、全員が一分間の黙祷を捧げた。龍神ズも頭を垂れた。
このはは大きなコンサートを控えており、練習は続いた。友紀が少しずつ泣き止むと、皆は安堵した。
「夕焼け」の曲では、友紀は涙をこらえながら一生懸命に歌った。その心には、おばあちゃんへの思いが詰まっていた。
明日、友紀はしっかりとお別れができるだろうか。祖母に、ちゃんと感謝の気持ちを伝えられるだろうか——。




