【第3話 龍神オパと熊野神社】
友紀は、鶏串屋「二田店」で働く普通の女の子だった。しかし、彼女の肩に乗っているという「龍神」の存在が、彼女の日常を少しだけ特別なものにしていた。ある日、彼女は謎の老婆から「右肩に龍神がいる」と告げられ、その言葉を真剣に受け取ることにした。友紀は不器用ながらも、必死に自分を磨こうと心がけた。
だが、努力はなかなか実を結ばず、友紀は次第にもどかしい思いを抱えるようになった。そんなある日、「お婆さんがいたアパート」に行く決意をした。自分の肩にいた龍神の秘密を知って、少しでも心のモヤモヤを解消したかった。
アパートに着いてみると、世間話をしながら掃除をしている住人に出会った。「お婆さんはいないわよ、その部屋は長い間空室なの」と、さらりと言われた。友紀の顔から一瞬、血の気が引いた。しかし、ひょっとしたら「龍神の存在を知らせるために現れたのではないか?」という希望が心に浮かんだ。
その日は春の日差しが心地よく、そんな気持ちを抱えつつ、住人が教えてくれた「熊野神社」へ行くことにした。坂道を登ると、左右には青々とした竹藪が広がっていた。そこに差し込む太陽の光は、友紀に温かい青い輝きを贈っているようだった。
「ぷはぁー」と、子供のような声が聞こえた。驚くことに、友紀の手のひらには小さな龍神が現れていた。小さな体で、まるで元気を持ち運んでいるかのようだ。「あなたが私の肩にいた龍神さん?」と尋ねると、その龍神は頷きながら語り始めた。
「あなたのそばにいたけれど、顔が暗くて近づけなかった。でも、会いに来てくれたから、話したり、あなたを見ることができるようになったんだ。」
友紀は、感動のあまり泣きそうになった。「名前をつけるように」と言われたことで、友紀は自分の誕生石のオパールを思い出し、「オパ」と名付けることにした。オパもとても気に入ったようで、友紀の右肩に乗り、彼女をずっと見つめていた。
その瞬間、友紀の心の中のもやもやが少しずつ晴れていくのが感じられた。彼女はオパと共に、心の底からの清々しい気持ちで仕事を終えることができた。