【第26話 黒龍、家族と和解する】
黒龍は旅館出雲の玄関先に立っていた。数年ぶりの家族との再会に緊張している様子だった。
彼の帰りを待っていた家族たちが、玄関から飛び出してきた。
「坊っちゃんが帰ってきた。旦那さま!」
中居が声を上げる。
黒龍の父は厳しい表情を浮かべているが、その裏には深い愛情が隠されている。母は優しさを感じさせる笑顔を浮かべ、兄は才色兼備で優秀さを誇示するような雰囲気をまとっている。兄嫁もまた、彼に劣らぬ美しさを持ち合わせている。
「優秀な兄と比べる黒龍の気持ちもわかるな」
アカリューは心の中で思った。やっぱり、兄と自分を比べるのは辛いよな…と。
「どこに行っていたのか。心配していたんだぞ」
父が口を開く。黒龍はその言葉に胸が締め付けられた。
「やっぱり家族は心配するんだな…」
友紀が呟くと、父は彼女に目を向けた。
「なぜ人間がここにいるのか?」
「黒龍が家族と和解できるよう、お手伝いに来ました」
友紀は毅然とした口調で答えた。
玄関先で立ち話をしていると、なんとなく緊張がほぐれ、家の中に招かれることになった。友紀は黒龍に対する思いや、自分が龍神と契約した理由、そして今の状況を一生懸命に説明した。
すると、兄が口を開いた。
「旅館出雲を継ぎたいと言ったのは事実だが、黒龍が継げないだろうとは言っていない」
母が尋ねた。
「人間界では何をしているの?」
友紀は最初、自分のことだと思い答えた。
「清掃スタッフを宝尼でやらせてもらっています」
黒龍が続けた。
「現在は素戔嗚神社で働かせてもらっています」
素戔嗚尊は「もう十分反省しているから、働かせてあげよう」と言い、現在黒龍は神社の草むしりや掃除、洗濯など、献身的に働いているのだ。
「親御さんに許可を正式に取ったうえで、契約書を取り交わすことになっています」
友紀が説明すると、父は言った。
「素戔嗚尊に迷惑をかけて申し訳ない」
素戔嗚尊に話が事実だと聞くと、父は少しずつ安心の表情を見せた。
「一生懸命反省して仕事を頑張っていると素戔嗚尊に聞き、安心した」
父は契約書にサインした。
「これからも息子の事をよろしく」
「こちらこそお世話になります」
友紀は頭を下げた。
兄も言った。
「怒ってすまなかったな。気をつけて」
その場を後にする二人を見送った。
旅館出雲を出る際、黒龍と家族はお互いに憑き物が落ちたような顔をしていた。ハクリューは、そんな様子を涙ぐみながら見守っていた。
「やっと和解できたんだ」
友紀は胸を撫で下ろした。次はオパの叔母夫婦の家に向かうことに。
家族の絆が少しずつ修復されていく様子に、友紀は温かいものを感じずにはいられなかった。




