【第2話 不思議なお婆さん】
友紀は、初めての一人暮らしに挑戦していた。小さなアパートの片隅には、彼女が揃えたお気に入りの家具が並び、彼女なりに頑張っていたのだ。だが、家族の健康問題が彼女の心に重くのしかかり、早く一人前にならなければという焦りが、不安を増幅させていた。
ある雨の降る日、友紀は勤務先の鶏串屋「二田店」に向かっていた。外は大雨で、彼女の心もどんよりとしていた。友紀は清掃の任務を果たすため、傘を片手にしっかりした足取りで歩いていた。
その途中、道すがらふと、誰かに呼ばれたような気がして顔を上げた。すると、アパートの一室の窓辺に白い服を着たお婆さんが立っていた。そのお婆さんは、友紀をじっと見つめながら言った。
「あなたがフラフラ歩いているから、ぶつかりそうだったので呼びましたよ。」
友紀は驚きつつもお礼を言い、再び歩き出そうとしたが、お婆さんは依然として彼女の方を見ていた。しばらくの間の静寂。すると、お婆さんは不思議なことを話し始めた。
「右肩に小さな龍神がいる。きっとあなたのことを守ってくれるはずよ。」
その言葉を聞いた瞬間、友紀の心は不思議な感覚で満たされた。小さな龍神が本当にいるのなら、その存在と話をしてみたいと願った。彼女の心に、未来への希望が少しずつ広がっていくのを感じた。
「本当に龍神がいるんですか?」友紀は思わず尋ねた。
「もちろん、信じる気持ちが大切よ。」お婆さんはにっこりと笑った。「龍神はあなたの心の強さを見込んで、そばにいてくれるの。」
その言葉で、友紀の心はほっと軽くなった。大雨の中でも、彼女は少し背筋を伸ばして歩き出した。何かに守られている気がして、胸が高鳴った。
職場に着くと、雨で濡れた気持ちが一掃されたように感じた。同僚たちとの何気ない会話の中で、友紀は少しずつ笑顔を取り戻していた。心の中に小さな龍神がいるという思いが、彼女を一人前に近づけてくれる気がして、その日一日を乗り越える力を与えてくれた。