【第18話 友紀、涙のデビュー前練習】
この日、友紀は日曜日にもかかわらず中学校にいた。デビューまであと1週間という大切な時期だったからだ。彼女の目は真剣で、歌が大好きであることがうかがえた。
一方、オパはハクリューと一緒に宝尼へ行く用事があった。キリュウとスイリュウは、友紀の部屋を掃除しながら「少しでも早く寝られるように」と気を遣っていた。
友紀の頑張りは合唱団「このは」にも伝わっていた。彼女は3曲に挑戦し、難しさにも負けずにしっかりとついていった。仲間たちからの応援も受けながら、友紀はコツコツと努力を重ねていた。
昼休み、友紀はキリュウが作ったお弁当を一人で食べていた。周りは賑やかで、次第にアルトメンバーたちの輪ができてきた。
「美味しそうなお弁当だな」
高橋先生が声をかけると、友紀はドキッとした。彼女は人付き合いが苦手で、学生時代にこのような経験はほとんどなかったからだ。
和やかな雰囲気の中、昼食後、友紀は洗面所で歯を磨いていた。そこへアルトリーダーが声をかけてきた。
「デビューなんだから頑張らなければね!」
そのプレッシャーが友紀を襲った。すると、アルトリーダーは優しく微笑んだ。
「でも、もう十分頑張っているじゃない」
その言葉に、友紀の緊張の糸が切れた。涙がこぼれ落ちた。嬉しさで泣いてしまったのだ。
アカリューが魔法でハンカチを取り出した。友紀が涙を流して戻ってくると、高橋先生はびっくりした様子だった。
周りの仲間たちが「友紀ちゃん」や「チビスケ」と呼び始める中、高橋先生は何も言わず、ただ友紀の涙を静かに受け止めていた。
アルト下リーダーが説明した。
「友紀は認めてもらえて嬉しかったと言っています」
高橋先生は少し考えてから言った。
「じゃあ俺が『はい、そこまで』と言ったら泣き止んでくれる?」
みんなが笑い出した。
そして1分後、高橋先生が「はい、そこまで」と言うと、友紀は約束を守り、涙を拭いて微笑んだ。
「泣かないことが強いとは思わないよ」
高橋先生が励ますと、友紀は徐々に緊張がほぐれ、午後の練習にしっかり取り組むことができた。
練習後、アカリューが声をかけた。
「みんなに認めてもらえてよかったね」
「泣いてしまって申し訳ない」
友紀が謝ると、アカリューは優しく言った。
「感謝の気持ちを込めて、これから歌っていったらいいんじゃない?」
朱雀寮に寄ると、オパとハクリューが友紀に全員分のチケット代を渡した。
「デビュー戦の宣伝をつい忘れていた…」
友紀が気づくと、オパが声をあげた。
「来れる人全員来てください!」
結果、両親を含む合計8人が来てくれることになった。さらに、美しい黒のドレスと銀のチャンキーヒールの靴も用意してもらった。その姿が美しく、周囲から歓声が上がった。
自分のアパートに戻ると、部屋は綺麗に片付けられており、いつでも寝られる状態になっていた。
アカリューは微笑みながら友紀の涙のエピソードを語り、龍神たちも笑顔で聞いていた。友紀は、自分の感謝の気持ちを大切に、これから歌っていく決意を新たにした。
「デビュー、本当に楽しみだな!」
友紀は目を輝かせていた。仲間の支えが何よりも大切だと感じた瞬間だった。




