【第10話 合唱団このはへ入団】
ある日のこと、友紀はコンサート会場で、「このは」に所属している中学校時代のコーラス部の先生から声をかけられた。
「友紀、ちょっとお話しようか」
その瞬間、友紀の心臓はドキドキし始めた。友紀は「このは」という高いレベルの合唱団に憧れていたが、自分の歌唱力に自信が持てなかった。先生からの入団の打診は嬉しい反面、その期待に応えられるのか不安でいっぱいだった。
「友紀と一緒に歌いたい」
先生の言葉が心に響く。これが背中を押すきっかけになった。友紀は体調を整え、最近の不調で増えた体重を絞る決意をした。
友紀は両親を説得し、「このは」の入団許可を得ることに成功した。母親は「頑張ってね」と笑顔で送り出してくれたが、父親は「本当に大丈夫なのか?」と心配そうだった。友紀は自分の思いをしっかり伝え、入団への意気込みを見せた。
そして、待ちに待った体験入団の日。友紀の緊張はピークに達した。高橋先生に自分の歌声を聴いてもらう瞬間、足が震えて思わず声が震えた。しかし、高橋先生は優しい視線を向けてくれた。
「アルトも聴いてみてもいいか?」
その言葉に、友紀は少しびっくりした。「朝長さんの歌声が聞きたい」と言われ、自信が揺らいだ瞬間、思わず大きなあくびをしてしまった。
「その喉の開きで歌って」
高橋先生が励ましの言葉をかけてくれた。友紀は緊張を打ち消し、アルトの低音に合わせて力強くも優しい声を絞り出した。
高橋先生の目がキラッと光った。
「アルト、訓練すれば素晴らしい素材になるぞ」
その言葉に、友紀は胸が熱くなった。こうして、彼女はアルトとしての入団試験に合格したのだ。
新しい仲間たちと共に、友紀はのびのびとした歌声を披露するようになった。高橋先生の予言通り、徐々にソプラノの音域まで出せるようになったものの、高い声を出し続けられなくなったことには少しショックを受けた。
しかし、友紀はアルトの仲間たちに支えられ、声の出し方を見直した。喉からではなく、腹式呼吸を意識するようになり、背筋を正すことで舞台でも揺るがずに歌えるようになった。
アルト全体に愛されながら、友紀は合唱団の中で成長し続けた。「このは」での仲間との絆は深まり、共に歌う喜びを知ったことで、彼女の心も大きくなったのだ。
友紀はただの歌い手ではなく、仲間と共に歩む人間としても成長していった。合唱団「このは」は、彼女の人生の新たなステージとなったのである。




