プロローグ
初投稿となります。下手くそな文章ですがどうかよろしくお願いします。
「海斗、帰ろーぜ」
幼馴染みの1人、圭に声をかけられ、俺は顔を上げる。
「ちょっと待って」
「急いで、早く帰ろー」
もう1人の幼馴染みの七海に急かされる。
「よし、帰ろ」
机の上を片付け2人に声を掛け、教室を出る。
圭と七海とは家が近く、小さい頃からの付き合いで、高2になった今でもその関係は変わらない。多少ギクシャクしたことはあるが、次の日には元に戻っているので仲は良い方だと思う。正直高校でもこの3人で一緒に過ごせると思っていなかった。どこの高校に受験するのか聞いた時に2人が自分と同じ所を受けるとは思っていなかったから、凄く驚いた記憶がある。
帰路を3人で歩いていると
「ねえ今度の土曜遊びに行こー」
と七海が提案してきた。
「どこに行くんだ?」
「映画見に行こ!」
「俺は行けるぞ、海斗は大丈夫か?」
「うん、行ける」
土曜日に用事は無かったはず
「何見るの?」
「一昨日からやってる恋愛映画!」
確か原作のアニメだか漫画だかを実写化したやつで、監督の原作愛が凄く、原作ファンからも大絶賛のやつだ。
「分かった」
「よし、決まり!あー楽しみー」
そういえば、映画行ったら貯金とか大丈夫かな、バイトも考えないといけないなとかそんなことを考えていた時だった。曲がり道から出てきた男の人とすれ違った瞬間、右胸を押され倒れてしまった。
「海斗!」
圭が寄って来て、七海は顔を真っ青にしている。倒れたぐらいで心配性だなと言おうとしたが、口から出たのは言葉ではなく赤い液体だった。顔を上げ胸を見れば包丁が刺さっていた。その包丁は運悪くあばら骨を避け、肺を貫いていた。それに気づいた瞬間に凄まじい痛みが走る。
ああ、死ぬのかな。そう思える程の痛みだった。呼吸をする度に口から血が溢れ、呼吸が難しくなる。全身の力が抜けていく。意識が朦朧としてくる中で最後に見たのは、真っ青な顔をした圭と七海だった。
「こっち!」
私達は姉について行き逃げ惑う。周りはどこを見渡しても火の海。爆発音や建物が崩れる音に紛れて、人の悲鳴が聞こえる。こんなの嘘だ。
ここは地獄だ、あの物語のような一騎当千の英雄なんていない。もう逃げることなんて出来ない。嫌だ死にたくない。
なんでこの国の人は戦争なんて始めたの?
どうせ老害共なんて自分達の欲望を満たすことしか考えていない。国や、ここに住む人達のことなんて、一度も考えたことなんかないんだ。
「きゃあ!」
正面から爆風が吹く。姉は私達を庇って熱風を一身に受けた。
「……お姉ちゃん!」
私は叫ぶ。多分普段は働かない表情筋もこの時だけは働いていたと思う。
顔が触れ合いそうなほど近いけど、こんな轟音の中じゃ叫ばないと何も聞こえない。なんで私はこんなに弱いの?お姉ちゃんに守られて私は怯えてばかり。家族を守れる力が、勇気が欲しかった!
「……大丈夫よ、心配しないでセナ」
顔を見れば痩せ我慢だとすぐ分かる。
今の爆発に乗って大小様々な瓦礫も飛んできている。私達を庇った姉に当たってないはずがない量だった。
正面を見ると薄い砂煙の向こうに隣国の兵士達がゆっくりこちらに歩いてきているのが見える。彼らが持っているのは、数年前に隣国の技術者が開発した「銃」という物だ。この兵器のせいで私達の国は戦争を始めた。
銃は訓練を行っていない一般人でも兵士を殺すことが出来る恐ろしい兵器だ。あまり強くなく人口が多いことだけが取り柄の私達の国は、これに目をつけた。
技術を盗み、威力は劣るが銃を量産することに成功したこの国は、早速資源を求めその隣国に戦争を仕掛けた。銃を一般人に持たせ、数で押せば勝てるとでも思っていたのだろう。
そしてその結果がこの有様だ。
国の兵士として戦争に出れば自己判断での敵前逃亡は許されない。そして、戦争は敵とはいえ人を殺さなければならない。戦争に出て初めて銃を持つ人達が、ましてや戦いなんて知らない平和に暮らしていただけの人達が死を恐れず戦い、人を殺せる訳がなかった。まともに戦える訓練された兵士達もすぐに蹂躙された。
そしてその被害が私達のような戦争に出なかった女子供や年寄りにも及んでいる。国の防衛なんて一切考えず、国にいる男や兵士を招集し戦争に行かせた。そのため国に侵入されれば為す術なく蹂躙されるだけだった。
本当に貴族共は馬鹿だ。さっさと死ねばいいのに。
刻一刻と迫る死の瞬間を感じながら、私がすることは懺悔でも後悔でも無く、戦争を始めた奴らへの罵倒だった。
顔を上げれば、銃がこちらを向いていた。
ああ、本当に私は死ぬんだ。
もっと生きたかった。
結婚して幸せな日々を送りたかったなぁ。
来世があるとするならば、私は家族を守れる人になりたい。
こんな国に生まれたくなかった。
戦争なんて嫌いだ。
戦争を始めた貴族共も嫌いだ。
本当に死ぬと確信してから、後悔する気持ちが溢れた。走馬灯なんて無い。
理不尽に殺される者に残るのは、恨みと後悔だけだった。
真っ白い建物の中で1人の女性が立っていた。
女性の目線の先には2つの人形が座っている。
そこに2つの何かが寄ってくる。
「これが貴方達の新しい体よ。さあ、入って頂戴」
そう言うと、それらは人形の中に入っていく。
すると、人形が大きくなりどちらも170cm程になった。そして2つの人形は光り始め、数秒後光が収まると人形は2人の人となっていた。
1人は黒髪黒目の17歳程に見える男子に、もう1人は白髪に服を着てしまえばあるのか分からなくなるぐらいの大きさの胸、眠そうな目をした男子と同い年ぐらいの女子になっていた。
ああ、やっと……やっとこの日が……そう呟いた後、目に溜まった少しの涙を指で拭い
「おはよう、私の子供達」
女性は微笑みながらそう言った。
こうして海斗とセナは神の使徒となった。