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覚醒イベント?要らない子ですね

決意を新たにグッと握りこぶしをつくっている間にも歩き続けていた一行は街道に合流した。

ここまで来れば大丈夫だな。


「パパ!」

「おっと」


パパの腕に遠慮なく抱き着く。

体勢を一切崩すことなく受け入れたパパ。

うむ、やっぱり私のパパはすごい。

あ、抱き着いたのは利き腕じゃない左の方ですよ、念の為。


「あれ、クルト怪我してない?」


剣士の一人、クルトの手の甲に血が滲んでいるのを発見した。


「あー、これっすか。大丈夫っすよ」

「ダメでーす。ヒール」


万が一やばい菌が入ったら大変でしょうが。

ということで治癒をかける。

もちろんパパにひっついたままです。


「こんくらい、舐めときゃ治ったのに」

「いいですか、森は色んなものがあるの。それこそ毒になるものとか。そういうのが傷口に付いてたらまずいでしょうが」


その点、聖属性魔法のヒールは消毒も同時にしてくれるようなので素晴らしい。

ただし、体内に入った毒の(たぐい)はキュアという解毒魔法を使わなければいけない。

魔法って便利なのか不便なのかよくわからん。


ところで、乙女ゲームでヒロインが光の魔法とか聖属性の魔法とか使う場合、覚醒イベントってやつがあるパターンが多いじゃないですか。

この世界のモデルになったらしき乙女ゲーム、”あなたとなら、世界も救える”、略してあなせかも、ご多分に漏れず覚醒イベントで聖属性が発現する。

ヒロインが14歳になった時に、ヒロインの父親が魔物討伐で大怪我を負うのだ。

四ツ目熊の討伐中に、メンバーの一人を庇って。


はい。

さっきサクッと……いや、ゴシャッッと殺りましたね。

パパはこの通り、かすり傷一つありません。


私に覚醒イベントは要らない。

だって、3歳の時に自力で覚醒させたから。


パパが大怪我しないと覚醒できなかったとか、ゲームのヒロインは根性が足りないと思います!

そして何より、パパへの愛が足りないと思います!!!


パパが魔物討伐で時々ちっさいけど怪我こさえて帰ってきてただろうが!

いたいのいたいのとんでいけーで覚醒したぞ、私は!


「シャル」

「はっ!?」


いつの間にか街の門までやって来ていたようだ。

ハンターたちはギルドカードを提示、パパと私は領主から派遣された戦力として討伐に参加したので顔パスで通り抜ける。

領主から派遣されたとか言っておきながら領主本人とその娘だがな!


ハンターギルドは門から徒歩で約5分。

すぐにたどり着いた。


「おかえりなさいませ、領主様、お嬢様」

「おーう。依頼達成の手続きを頼む」

「ただいまー」


受付のお兄さん、テスさんがにこにこして出迎えてくれる。

めっちゃいい人。


「あと、買取りも頼む」

「了解しました。こちらにお出しください」


四ツ目熊の素材を一つずつ出していくパパ。

全部まとめて出すとカウンターに収まりきらないので。

途中で狩ったその他の獲物は子爵家(うち)のご飯になります。


「はい、合計で12万8000ミールですね」

「半分は雷鳴の依頼達成の報酬に上乗せしてくれ」

「かしこまりました」


雷鳴とは、あの3人のパーティ名である。

剣士クルト、剣士アーク、槍士ビスタというとんでもなくバランスの悪い雷鳴。


そんな彼らのパーティランクは白金(プラチナ)

どれくらいの実力かというと、まず見習いの青銅(ブロンズ)

その上が(アイアン)で、ここから正規のハンターとなる。

(スチール)(カッパー)(シルバー)(ゴールド)ときて白金(プラチナ)

そのさらに上に妖精銀(ミスリル)があるが、妖精銀級(ミスリルランク)は正直言うと人外レベル。

なので実質的な最高ランクは白金(プラチナ)なのだ。


つまり雷鳴は実質的な最高ランク。

世の中不思議なこともあるもんだね。

ちなみに(シルバー)が一番人数の多いランクだ。

私は(シルバー)、パパは限りなく妖精銀(ミスリル)に近い白金(プラチナ)

さすがパパ。


そんなパパに大怪我を負わせるはずだった四ツ目熊、実は白金級(プラチナランク)1パーティが推奨戦力のかなりヤバイやつなのだ。

推奨と言っても最低限だし、1パーティの一般的な人数は4~6人。

さっきのメンバーは本当に最低限の戦力しか無かったわけです。


それくらいヤバイやつにそうホイホイ出て来られても困る。

実際四ツ目熊は数年に1回くらい目撃情報がある程度の出現率。

ゲームでパパに大怪我負わせたのはさっきの個体で間違いないだろう。


やったね、パパの大怪我フラグは回避したよ!

今まで頑張ってきた甲斐があった!

具体的には修行とか、修行とか、修行とか。

聖属性の覚醒は頑張るまでもなかった。


ゲームのヒロインはもっと頑張れよ。

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