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断章Ⅰ
耳鳴りのような音が聞こえる。
弘仁十一年。平安の世。虫も鳴かないような夜。降りしきる雨の中、一人の男が一条の堀川にかかる橋の上でうずくまっている。
その腕の内で、彼の妹が死んでいた。
冷たい雨は、少しも苦悶の無い少女の表情の上をすべり落ちる。対して、彼女の首から流れる夥しい量の血は、黒く凝りながら男の狩衣を濡らし、雨に流れ、橋に染み込んでいった。
男は動かない。彼の震えるその手には、長大な刀が握られている。
耳鳴りのような音が聞こえる。
弘仁十一年。平安の世。虫も鳴かないような夜。降りしきる雨の中、一人の男が一条の堀川にかかる橋の上でうずくまっている。
その腕の内で、彼の妹が死んでいた。
冷たい雨は、少しも苦悶の無い少女の表情の上をすべり落ちる。対して、彼女の首から流れる夥しい量の血は、黒く凝りながら男の狩衣を濡らし、雨に流れ、橋に染み込んでいった。
男は動かない。彼の震えるその手には、長大な刀が握られている。
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