BIBLE OF THE 13 十日目
―3日前―
夜も更けて来た事もあって、シスターはランタンで道を照らしながら散歩を兼ねて見回りをしていた。
「誰ですか、後ろに居るのは」
シスターは夜の孤児院の見回りの最中、そう告げた。
「相変わらずだな………四天王が一人。シスター」
「お久しぶりですね。ジン」
現れたのはフードの男、元四天王の一人、ジンだった。
「あのラクダでお疲れでしょう、空いている部屋で休んでは?」
「俺は夜が好きなんだ………」
「そうですか、相変わらずですね。
ですが休んだ方が良いですよ。
あしたはご馳走ですから」
ぐう。とジンのお腹が鳴る。
「ふふっ、相変わらず食いしん坊なんですね」
「シスター……今だから言えるが…」
「はい」
「俺は、お前のことが好きだった。イェクルスナウトに嫉妬した」
「何故、いまそんなことを?」
「ここ一日、そんな気分だったのさ」
「新しい素敵な恋人を探してくださいな」
「フラれたか……まあ良いだろう……」
「では、明日は孤児院にある食料をほぼ使いますので、昼には起きていてくださいね」
シスターは、それを言ったあと……
「ジン、やはり散歩に付き合って下さい」
「良いが、どうして?」
「傷心というものがどういうものかを聞きたくて」
そうして二人は裏庭の茂みを巡回しつつ、どうでもいい話などをした。
「なんで、私に告白しようとしたのですか?」
「同じ質問をするな」
「あなたらしくないと思いまして」
「人間は枷を身に着けて、余計な義務感を背負い過ぎている。
だが、そんな枷を外して気ままに、獣のように生きるお前に惹かれたのさ」
シスターはぷっと笑って
「私は獣だと?」
ジンもくすりと笑い
「やりたい事をやる為に、なんでも利用し、自分の好きなように生きようとする。これが獣でなくなんだというんだ?」
あはは、そうシスターは心からころんと笑って
「分かりました。
あなたは私を好きなのではなく、羨ましかっただけなんですね」
「そうかも知れん」
「ディシプルなど、どうですか?まさに獣ですよ」
「無垢で綺麗なものは汚したくない」
「先ほどから裏を返せば私の悪口ばかりですね」
「フラれたんだ。八つ当たりもしたくなる」
「子供なんですね」
「そうかも知れん」
「では、子供らしく早寝しますか」
「そうするか」
ランタンを持って二人は孤児院に戻るのであった。