BIBLE OF THE 13 一日目
かつてシスターは、教会の人間であったが…
ある事件をきっかけに出奔し、孤児院を経営していた。
そんなシスターを取り巻く人たちと、復讐すべき敵のお話。
ようやく対峙した。
私の”敵”と………。
「シスター…私はあなたに、愛されたかった…」
シスターと呼ばれた私は、それだけで虫唾が走った。
「そうか、私は死ぬのか…」
「さようなら」
一刀両断。汚らわしい血が噴き出る。
もうこの場には用はない。
帰ろう、私の家へ―――。
―12日前―
―朝―
「おっはようございまーす!」
甲高い声が響く。
いつもの朝だ。
「ディシプル、元気なのは良いですが、まだ日が昇ったばかりですよ」
桃色の髪が良く似合うディシプルはいつも元気だ。
この子は落ち込んだりしないのだろうか。
紹介が遅れたが、私は孤児院の経営をしている。
ディシプルは年長組で18歳の誕生日を迎えたところだ。
「はい、おはようございます!!」
反省はしないようだ。
「きょうはハムエッグでいいですか?」
「食べられればなんでも良いですよ」
ぶっきらぼうに答える私にディシプルは鼻歌交じりに台所へと向かった。
庭先に出て軽く伸びをする。
太陽は神羅万象すべてに良い思いをさせてくれる。
孤児の様子を見に行こうと思ったが、もう一人の年長者アグネスがやってくれているだろう。
私は洗濯物を見に行く事にした。
……と、その矢先に、ラグダに乗ってこちらへ来る影を確認した。
―ビリーだ。砂漠から来たのだろうか?
彼は一定期で食料とお金を置いて行ってくれる。
この孤児院の創設者であるらしいが、本人がちゃらんぽらんなので怪しいところだ。
「よう」
「どうも」
「今日はディシプルは居る?」
「いつも居ますよ。」
「会えるのが楽しみだなぁ!ロリ巨乳!」
「また嫌われますよ」
「ははは。まあそれは置いておいて、洗濯物の竿を聖杖にするところはシスターらしいわな」
「使わなければ単なる棒ですよ。仕込み杖なのですがね。」
そう、聖杖と呼ばれる強力な魔力を宿している物も使わなければ意味がない。
私はそれを洗濯物をかける棒の代わりにしていた。
「じゃあ、今度また鍛冶屋に持っていくよ」
「近々、やりたいことがあるので助かります」
「法皇のことか?」
「えぇ。殺します。
そうだ、ディシプルはハムエッグを作っているので検食してみては?」
「いいねぇ、じゃあシスター、またあとで」
「ラクダってハムエッグ食べるんですか?」
皆で食事を囲んでいる時、ふいにディシプルが口にした。
「食べるんじゃないですの?」
テキトーに返事をしたのは黄金色の髪が良く似合うアグネスだった。
彼女は他の孤児に夕食を食べさせている。
アグネスとディシプルは犬猿の仲だ。
その適当な返事にディシプルはちょっとむくれた顔をした。
「大丈夫、ディシプルちゃんが作ったものはラクダが食わなくても俺が食う!」
「それはなにより」
またぶっきらぼうに返したのは私の方だった。
続けて
「あなた達には孤児院を守るためだけの力をつけて頂きます。
明日から修道服で来るように」
「…は、はい!」
どもりながらも二人は返事をした。
私はそれを確認していつものざんばら頭のビリーに目配せをする。
夕方になって見てみると、ラクダはハムエッグを食べていたようだ。
今度はもっと肉を用意してあげようか。
そんな事を考えながら私はラクダの頭を撫でた。