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前哨戦

台風にトラウマがある方はご注意ください。

 これは女子大生が文字通りの嵐に立ち向かう戦いの歴史である。


 ごくありふれた普通の女子大生キョーカは一人暮らしを始めてこのかた、アニメざんまいの日々を送っていた。

 今日の動画配信サービスときたらけしからん。一話見終わると、自動的に次の話が再生される。まさにエンドレスなのである。

 暇さえあったらアニメ、暇がなくてもアニメ、アニメ、アニメ。それは今となってはキョーカの生活になくてはならないものとなってしまった。

 キョーカはテレビを見る暇も惜しんでアニメを観た。矛盾していると思われるかもしれないが、実際そうなのだ。彼女が利用しているのはタブレット端末にインストールされた某動画配信サービスアプリである。キョーカの視線は専らタブレットに釘付けで、彼女は次第にテレビをつけるという動作をしなくなったのである。

 それは畢竟、社会との隔絶を意味する。

 キョーカはネットサーフィンをするたちではないし、SNSにも疎い方である。それ故に、テレビでニュースを見なくなったキョーカは、社会情勢というものにとことん鈍くなってしまった。

 そうこの時、彼女はすでに足元にまで忍び寄っていた脅威に全く気づいていなかったのである…。


 20XX年十月大学内にて、キョーカの友人であるキノとスウちゃんの二人がこのような会話をしていた。

「今度の台風やばいよね。一人暮らしだから心配…」

「私、食料と水買い置きしちゃった。あと、何が必要?懐中電灯とか土嚢とかかな…?」

 それに対するキョーカの返答は

「え、何?台風来てるの⁇」

 であった。

 天気悪いのやだなぁなどとのたまうキョーカを、友人二人はギョッとした面持ちで見遣った。

 そしてキョーカはようやく知ったのである。

 明日に迫った台風が十年に一度と言われる超大型台風だということに。

 それでもなおキョーカの反応はのほほんとしたものだった。今テレビをつければどこも台風に対する警戒情報で持ちきりだ。地域によってはすでに被害も出始めている。これらのニュースを見ていれば誰であろうと事の重大性に気がつくはずだ。しかしキョーカは一度も見ていなかった。友人たちがいくら言い募ろうと、心配性だななどとトンチンカンなことを考えていたのである。

 そんなキョーカにスウちゃんは言った。

「いい?今度の台風はマジやばいから。ほんと気をつけて」

 うんうんと頷く(わかってない)キョーカに言い含める。

 今日中に食料を買っておくこと、避難場所の確認、自転車もできれば部屋の中にしまうこと、何かあれば連絡することなどなど。

 そして最後に友人二人は口をそろえて言った。

「とにかくニュースを見なさい」


 いい友達を持ったものである。後にキョーカはこの二人に心の底から感謝することになる。


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