彼が彼女で彼女が彼で
ある日、それは天井からつーと糸を伝ってキョーカの目の前に降りてきた。
キョーカは思わずそれに向かって掌を差し伸べる。すると、驚いたことにそれはピョンっとキョーカの掌に乗ってきたのである。
控えめに言って可愛すぎる‼︎
あまりのキュートさでキョーカの心臓をロックオンしたそれは、茶色くてふわふわしていて、一見塵と見紛うほどの大きさしかなかった。そう、チャーリーの半分にも満たない小さき小さき生き物。これは…
「ま、まさか、子リザベス⁉︎」
色と大きさの違うチャーリーとエリザベスを見たときは種類が違うのかな程度にしか思わなかった。しかし、もしかしたら…
キョーカはスマホを手に取り、インターネットでハエトリグモと検索した。すると、衝撃な事実が発覚したのである。
チャーリー(雌)、エリザベス(雄)
「そんな⁉︎彼が彼女で彼女が彼だった…⁉︎」
そう、あろうことかキョーカがチャーリーと名付けた茶色っぽいハエトリグモが雌で、エリザベスと名付けた黒っぽいハエトリグモが雄だったのである。
名付けてしまったものは仕方がない。キョーカは以後も呼び名を改めることなく、茶色い方をチャーリー、黒い方をエリザベスと呼び続けたのだった。
キョーカは可愛い子リザベスの出現を喜び、祝福した。しばらくの間は…
喜んでいたのも束の間、キョーカは少しばかり困った状況に陥ってしまったのである。
次回 お別れの時