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とある女子大生の戦記  作者: 深森鏡花
VS名前を言ってはいけないアレ
1/10

第一回戦

虫が嫌いな方はご注意ください。

 これはとある女子大生と()()()()()()()()()()()()()()()との手に汗握る戦いの歴史である。


 事件は、20XX年四月、春季休暇明けに起こった。


 ごくありふれた普通の女子大生キョーカは、実家帰りでしばらく空けていた自分のアパートの扉を開けた。

 その時、なんの前触れもなく、ヤツは突然キョーカの前に姿を現したのだ。

 ヤツとは、そう、まるで人に悲鳴を上げさせるために生まれてきたかのようなフォルムを持ち、その黒光りする体躯は見る者に形容しがたいほどのおぞましさを感じさせ、いつも六本の足を使って高速で移動するくせして忘れた頃に飛行し翅があることを見せつけてくる、あの!

 通常物陰に隠れて隅をカサコソと移動するはずのヤツは、廊下のど真ん中を悠々と歩いていた。

 ヤツは、完全に油断していたのだ。

 キョーカがショックに呆然としていた時間はわずか三秒に満たなかった(と自分では思っている)。

 しばらく人の出入りがなかったとはいえ、ここはキョーカのアパート。まごうことなき自分の住処である。決してヤツの天下などではない!

 キョーカはすぐさま必殺兵器を手に取って、ヤツに向かって構えた。

 キョーカだってなんの備えもなくのうのうと暮らしていたわけではない。いつか来るヤツとの戦いのために備えをしてきたのだ。

 キョーカは必殺兵器キ○チョール(スプレー型)をヤツめがけて噴射した。

 今更逃げようったってもう遅い!

 キ◯チョールから噴射された死の霧は狙いを外れることなくヤツに襲いかかった。キョーカは動きの鈍ったヤツをすぐさま箒とちりとりでビニール袋に入れ、固く口を縛った。

 ヤツは弱りながらもビニール袋の中でもぞもぞと動いている。

 驚異的な生命力を誇るヤツは、一度キ◯チョールを浴びせられたくらいでは絶命しない。キョーカもそんなことは十分承知していた。

 しかし、キョーカはあえてとどめを刺さず、生きたままのヤツが入ったビニール袋をゴミ捨て場にペイっと放った。

 ここで読者の皆様にはキョーカを冷徹非道な女だと思わないでやってほしい。彼女はヤツに対してせいぜい苦しんで死を味わうがいい、などと考えたわけでは決してないのだ。

 ヤツを完全に絶命させるには、ある程度の力で叩いて潰すほかない。しかし、ただでさえ気色悪いヤツを潰してその××を××(あまりの気持ち悪さに自主規制)することなどキョーカには到底不可能だったのである。


 まあ、これにて事件は一件落着と思われた。

 ヤツに完全勝利を収めたかのように見えたキョーカも、しばらくヤツのことなど忘れて日々の生活に邁進していた。

 しかし、この出来事は後に起こる悲劇の序章に過ぎなかったのだ。

 キョーカはすぐにそのことを思い知ることとなる…。


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