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新ウサギとカメ

作者: べんけい

    新ウサギとカメ


 或る朝、カメは快晴の下、野道をのんびりと散歩していました。と言うより亀の中でも、のろい部類の亀なので元々走れませんし、歩くのが遅いですからそう見えるだけで、いつもの通り、のろのろと散歩していました。 そこへウサギがピョンピョン跳ねながらやって来ました。

「おはよう、カメどん!」

「おはよう、ウサギどん!」

「今日は何してるんだい?」

「何してるって見りゃ分かるだろ、散歩だよ」

「散歩?君の場合は散歩とは言えないよ。這ってるって言うんだよ」

カメはむっとしました。

ウサギは愉快そうに言いました。

「で、今日は何処まで行くんだい?」

「いや、ただの散歩だからあの丘の上までだよ」

「ただの散歩ったって君の足じゃあ日が暮れちまうよ」

「幾ら何でもそんなにはかからないよ」

「いやいや、君の足じゃあ日帰りじゃ帰れないよ」

「馬鹿にするのも好い加減にしろ!昼までには帰って来れるさ」

「嘘だあ、法螺吹くのも大概にしろよ」

「法螺じゃないよ!嘘なんかつくもんか!」とカメがいよいよ向きになると、ウサギは面白そうに言いました。

「じゃあさあ、あの丘の向こうの森まで駆けっこしようよ!そんでもって僕に勝ったら君が嘘をついてないと認めてやるよ」

こう言われてカメは向きになってしまったことを後悔しました。勿論、勝ち目がないと思ったからです。けれども騎虎の勢いで引っ込みがつかなくなっていた彼は、ウサギとの駆けっこに応じました。

それでよーいドン!でスタートしましたが、ウサギはカメからすれば、一足飛びに進んで行って、それを繰り返すようなものですからカメが敵うはずがありません。

案の定、一息に丘の上まで辿り着いたウサギは、振り返ってみてカメが自分の百分の一も進んでいないのを確認すると、少し疲れたので木陰で昼寝を始めました。

それから何分か経った後、カメの後方に爆撃機が投下したと思われる爆弾が落ちて、その爆風で、あっという間に丘の上まで吹き飛ばされたカメは、ガメラみたいに飛んでいる間、身の危険を感じて本能的に頭と四肢と尻尾を甲羅の中に引っ込め、落ちた所から森に向かって、ころころと勢いよく転げ落ちて行きました。

一方、爆弾の爆音に驚いて覚醒したウサギは、それ以上に驚いて転げ落ちるカメを刮目し、うわあ!すげえはえ~!と思わず唸り、こうしちゃあいられねえと思うや、立ち上がって直様、駆け下りて行きました。

しかし、カメの転がり落ちる速さは凄まじくウサギは必死に追いすがりましたが、カメが一足先に森の中へ転がって行きゴールインしてしまいました。

森の中から目を回しながらふらふらと出て来たカメにウサギが言いました。

「いやあ、転がる手があるとはねえ、僕は捨て身で勝負に勝った君に脱帽だよ」

カメは何の事だか、さっぱり分かりませんでしたが、嘘つきと悪態をつかれませんので自分が勝ったんだと気づき嬉しくなりました。

世の中、何が幸いするか分かりません。

 


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