爽快! グルメラブ・レボリューション! 〜恋を呼ぶレモン塩焼きそば〜
「はい。海鮮塩焼きそば!」
「え?」
爽やかな笑顔で差し出されたそれに、私は戸惑いを隠せなかった。
昼休み。
外の暑さにも嫌な顔ひとつせず、会社の後輩がランチの買出しを申し出てくれた。
明るくて人懐っこく、いつでも一生懸命の槙君。
ワンコ系男子とでもいうのだろうか、そんな八歳下の心優しい彼に「あっさりとおソバで」と頼んだのが20分前。
夏真っ盛り。“お”ソバと言ったら、冷たい蕎麦では?
確かに、ソースよりはあっさりかもだけど。
あ! これって、もしかしてウケ狙いとか?
大真面目に受け取ったら、冗談も通じない先輩ってことに……。
「も、もう!」
試しに冗談っぽく拗ねてみると、
「ははっ、柊さんの反応が見たくて、つい。その“もう!”可愛かったです」
やはりそうだったかと安心しかけたものの、密かに意識している彼から不意打ちの可愛いは、反則だ。
「柊さんには、はい! レモン塩焼きそば」
……天然か!?
思わず彼を凝視するも、その屈託のない笑顔は本物だ。
「もしかして僕、間違えましたか?」
一瞬固まった私に、途端にワンコがしょんぼりしたような顔の槙君。
可愛いっ!
無性に撫でたい衝動にかられたが、それはセクハラだ。
慌てて我に返るとお礼を言い、手を合わせて熱々を頬張った瞬間。
なにこれ!
「美味っ!」
絞られた生レモンの香りと酸味が麺の旨味をぐっと引き立てており、減退気味だった食欲も刺激され、お箸が進んじゃう。
このレタスの食感と大葉のアクセントも良いし、刻まれた野沢菜が独特の塩気と風味を醸し出しているのもまた憎い演出だ。
すっかり夢中の私に、
「そのお店、夜はまた特選メニューがあるので、今度二人で行きませんか?」
ぐっ!
槙君から突然のお誘いに、絶品レモン塩焼きそばが喉に詰まる。
社交辞令かもしれないのに、すぐ真に受けてしまう私。
「最近、食欲なかったでしょ?」
もしかしてそれを気遣って、あえてこのメニューに?
槙君の心遣いに感動しかけた、けれどその時。
「7日前から柊さん、常温から冷たい飲み物に変わっていたので、胃腸の冷えが心配で」
ん?
「僕が知る限りの、柊さんのここ一週間の摂取カロリーを計算すると、十分な栄養が取れてないですし」
んん?
やけに詳しいことに一抹の不安が過るも、悲しいかな忘れた頃にやってきたそれに期待の方が膨らんでしまう。
彼との歳の差に勘違いしちゃだめ、と言い聞かせてみても……。
槙君のワンコのような眼差しに、私の胸は高鳴るのだった。