ミラちゅーが秘めているメッセージ①
特撮史上に燦然と輝く偉業を成し遂げたミラちゅー。
その作品全体を貫くテーマとは何か。三池監督の口からはっきりと述べられています。
「子供を元気にする事で世の中を元気にしたい」
この監督の想いはそのままアイドルである主人公達の想いとなり、それを5人の少女達が見事に演じきりました。少女達の魅力はそのまま作品の魅力となり、その姿と振舞い、歌声、あらゆる要素で子供達は勿論のこと、多くの大人をも強烈に惹き付けました。
「自分の演技と歌とダンスでたくさんの人を笑顔にしたい」という生身の彼女達自身の強い意思から生じるモチベーション。それを絶やすことなく最後まで全身で感動的なパフォーマンスを発揮しつづける事が出来た背景には、撮影現場に「少女達が夢を叶えられる舞台にしてあげたい」という総監督の心配りが隅々まで行き渡っていた事が大きい、その事は想像に難くありません。
その点で三池監督は現場の総指揮者としては存分に力を振るい大成功を収めたと言えます。
マネジメントの優秀さは疑うべくもない総監督。では、ミラちゅーのテーマを実現させる為に、表現者として演出面で行った事は何か。その事を考察します。
注目したいのは重要な設定のひとつ、ハーモニーエネルギー(HE)についてです。
HEはアイドル戦士が敵を浄化する為に必要不可欠なエネルギーだという事になっていて、アイドルとして人々から応援される事で変身アイテムをタンク代りにして蓄積されます。
蓄積されたHEは戦闘時、武器アイテムを媒体として光弾等に姿を変え射出され、敵を攻撃したり、敵の放つネガティブオーラを相殺したり、敵に洗脳された人々の洗脳効果を解除したりするのに役立つわけです。
つまり、アイドル戦士が戦闘で用いる手段は全てHEを必要とし、HEがなければ一切の戦闘行為が行えないことになります。
故にアイドル戦士はHEを獲得すべくアイドル活動を絶え間なく行い、そこで得たHEでもって敵と戦う。HEに関係したやり取りがミラちゅーという物語の骨格を担っているのです。
HEが蓄積される描写は度々劇中に登場します。主人公達がライブやイベントを行った時、または道すがらに集まってきた人々から激励の言葉をかけられた時など、応援する気持ちが光となって変身アイテムに集積されていく様子がフルCGで描かれています。
これは尺をとって表現するべき事柄である、または尺を稼ぐ事自体に意味がある。どちらにもとれますが、この描写によって日常パートにおけるアイドル活動と、戦闘パートにおける戦いがうまく関連づけられていると言っていいでしょう。同時に変身アイテムの露出を増やす事で玩具の宣伝を行う意味もあると考えられます。
ここで、HEとは単に玩具の露出を増やす目的の設定ではないかと疑ってみることにします。
戦闘シーン以外で変身アイテムにスポットがあたる場面として、HE以外にはリズムズとのコミュニケーションや索敵、ネガティブオーラのスカウティング等があります。特にネガティブオーラが人間には目視できない事などは変身アイテムの重要性を増す為にあえてそうしているのではないでしょうか。この設定がなくても、例えばアイドル戦士に選ばれたものはネガティブオーラを黙視できる、という設定でも物語上の不都合は発生しないからです。
変身アイテムを際立たせるこれらの機能は実際の玩具にも搭載されています。つまり、玩具と連動した演出なのです。
ではHEはどうか。
実のところ発売されている玩具にはリズムズに餌を与えたり、ネガティブジュエラーを探す機能はあっても、HEに関連するような項目は一切ありません。何度画面を操作してもHEという語句すら出てくる事はないのです。
この事から、本考察ではHEが玩具の露出を増やす目的の演出に過ぎないという疑いを捨て、物語上重要かつ必要な演出であるという事を前提に話を進めていきます。