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ホワイトワールドへようこそ! -フルダイブRPGでアイと生きる-  作者: お鶏飯
第1話 ホワイトワールドで働きませんか?
2/55

1-1

 スマホのアラームが鳴った。

 いつものように一時停止。

 二度寝するかどうかを少し悩んでいたら昨晩のことを思い出した。


 はっと体を起こして部屋を見回す。


「テレビが消えてる…」


 ノートパソコンはキーボードを叩いても反応がなかった。

 スマホもいつものホーム画面が表示された。


「なんだったんだ……っと」


 近くにあった紙に覚えていた電話番号をメモした。

 妖精が示していたフリーダイヤルだ。


「……なんだったんだ?」


 立ち上がって玄関に向かったがドアの鍵はかかっていた。

 部屋の反対側、窓もしっかりしまっていた。

 そのまま冷蔵庫から牛乳を取り出してこたつに戻る。

 パソコンを立ち上げる。


 牛乳を飲みながらメモの電話番号を検索してみた。

 web検索、掲示板検索、SNS検索、迷惑電話データベースと試してみたけど、これといった情報は見つからなかった。

 結局、電話番号については何もわからなかった。


「……かけてみるか?」


 このまま放っておくのも気持ちが悪い。

 最寄りの駅まで行って、公衆電話から電話をかけることにした。


 メモを見ながら番号を打ち込む。


「お電話ありがとうございます!」


 呼び出し音が鳴るか鳴らないか、とにかく一瞬で電話がつながった。

 女性の明るい声だ。ニコニコしている雰囲気が受話器越しで伝わってくる。


 沈黙を続けてみた。


「お電話いただきまして、ありがとうございます!」


 電話の女性がくり返した。


「また、昨晩は驚かせてしまい、誠に申し訳ありません」


 今度は声のトーンが低くなった。

 声の調子から女性が頭を下げていることが伝わってきた。


 昨晩? もちろん金縛りにあった夜のことだ。そこまではわかる。

 いろんな人に一斉にあのメッセージを送ったのか?

 いや、ネットで検索しても全く出なかった。

 俺を特定してる?何者だ?疑問が次々と浮かんだ。


「重ねて申し訳ありません。こちらの情報は、今はお伝えできません」


 俺の思考を読んだかのような言葉が続いた。


「その上で、翔太様にお願いしたいことがございます」


「な!?」


 驚きで声が出た。


 俺の名前を知ってる! それだけじゃない!

 公衆電話なのに特定されてる!

 監視されてる?


 受話器を持つ手に冷や汗が出てきた。

 周りを見回しながら、受話器をゆっくりと電話本体に戻そうとする。


「お待ち下さい! 翔太様にお時間をいただきたいのです! お願いします!」


 離れた受話器から必死な声が聞こえてくる。

 少しの間固まったあと、受話器を耳元に戻した。


「……続けてください」


「……ありがとうございます!」


「翔太様に短期アルバイトの勧誘をさせていただきたいのです。ここで詳細はお話できないのですが、詳しく説明する時間を下さい。もちろん、いただいた時間の対価はお支払いします」


「目安として、まず守秘義務の説明に30分、この段階でお断りになられても5万円お支払いします」


「5万円」


「はい。さらに、秘密保持にご理解いただいて説明を続けさせていただける場合、時間のめやすは2時間。お時間代として10万円お支払いします。説明の後でお断りいただいてもお支払いします」


「10万円」


 バカみたいに金額をオウム返ししてしまった。


「はい。それで勧誘をお受け頂ける場合は、説明でお示しするアルバイト代による契約となります」


「いかがでしょうか。翔太様。説明する時間をいただけないでしょうか」


 女性が緊張している。

 声のトーンで受話器の向こう側の様子がいちいち伝わってくる。

 きっと素直で素敵な人なんだろうなあ、と思う。顔はわからないけど。


「お姉さんが説明に来るの?」


「申し訳ありません。説明には専門のスタッフが伺います」


 謝っているが、顔はちょっと笑っているっぽい。

 気の利いたイケメンなら仕事が上がる時間を聞くんだろう。


「……わかりました。いいですよ」


 悩んだ時間は意外と短かった。

 お金は魅力的だし、電話の向こう側の女性を喜ばせたいというサービス精神もあった。


「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」


 女性はピョコンと立ち上がって深くお辞儀をしているようだ。


「それで……その説明はいつから?」


「あっ、そうですね、翔太様のご都合をお聞かせください」


「今からでもいいの?」


「もちろんです!今すぐ手配します」


 そのあとの話はとんとん拍子で進んだ。

 近くの珈琲店でモーニングを食べながら待っていると、黒いズボンにワイシャツネクタイ、グレーのウィンドブレーカーを羽織った男が店に入ってきた。

 男は店を軽く見渡したあと、迷わず俺に向かってきた。さすがにもう驚かない。


「こんにちは。翔太さんですね。来てくださってありがとうございます」


 俺が何かを言う前に、男が対面に座って言葉を続けた。


「さっそくですが、これ、お時間いただくお礼です。どうぞ」


 男は封筒を差し出してきた。


「どうぞ、お納めください」


 封筒には電話の女性が言ったとおり5万円が入っていた。


「すみません。それでね、最初に難しい話をさせてください」


 男はそう言って、カバンから一枚の紙を出した。

 紙には、「これから話すことは何ひとつ外に漏らさないで欲しい」ということが書いてあった。

 そして、親兄弟であっても万が一漏らした場合は「可能なあらゆる措置を講じる」という脅し文句が続いていた。

 「可能なあらゆる措置」は大きく太文字下線で強調してある。

 なお、相手の個人名・社名・団体名などは何も書いていなかった。


「…で、そちらさまは、どちらさまで?」


 対面の男は苦笑いをした。その先がもう守秘義務の対象らしい。


「もう少しお話させていただきます。電話のオペレータから、短期のアルバイトと説明があったと思います」


「ええ」


「アルバイト期間は1ヶ月、その間の衣食住は全てこちらで用意します。住み込みの仕事です」


「はあ」


「仕事の内容は現時点では申し上げられませんが、誰にでもできる仕事ではありません。翔太さんだからできる仕事です。それなので、このような強引な勧誘をさせていただいています」


「ん~、なるほど、さっぱりわかりません」


「そうですよね。そうだと思います」


 対面の男は少し笑った。


「もう少しだけお話しますと、当方は誰でも名前を知っているような企業です。それ以上は本当に言えませんが」


「我が社の重大プロジェクトに参加していただきたいのです」


「なんで俺?」


「……申し訳ありません。お話できる内容はここまでです。なお、アルバイト代は十分にお支払いします」


「話を続けて良いかどうか、ご判断ください」


……第一関門らしい。


「今までの話は守秘義務対象じゃ無いんですよね?」


「ええ、ここまでの内容は秘密ではありません。ネットで拡散というのは控えていただきたいところですが、それも強制ではありません。お願いレベルの話です」


 男はまっすぐこちらを見ている。

 1ヶ月の住み込みバイト。

 今は大学4年の冬。卒業は確定していて、むしろバイトを入れて引っ越し代を稼ぎたい。

 守秘義務は、まあ、守れば良いだけだ。


「……わかりました。続きを聞かせてください」


「……守秘義務を守るということでよろしいでしょうか?」


「はい」


「ありがとうございます」


 男はしばらく頭を下げたあと、レシートを持って立ち上がった。


「では、場所を変えさせてください」

1月27日 文字を削ったりしました。内容に変更ありません。

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