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4-1

 街道を東に歩いていると一つの町に到着した。


 まだ昼頃だったのでそのまま進むと、今度は大きな堤防にぶつかった。

 堤防の上まで登ると目の前には広大な砂利が広がっていた。


「これは……川……?」


「うん。これはグランリバーって言う川だよ」


「砂利ばっかりで水が無いけど」


「うん。でも、川だよ」


「これ、このまま渡れるんじゃない?」


「うーん。どうかなあ」


「兄ちゃん兄ちゃん、やめときな」


 唐突に、男が会話に割り込んできた。


 初期装備に近い半袖半ズボン。

 そこから筋肉がガッチリ付いた、日に焼けた手足が出ている。


「悪い悪い。話が聞こえたもんでね」


「俺はこの村で川の『渡し』をやってるラリーってもんだ」


「この川、今は水が無いけどな、3日前はこの堤防ギリギリまで水があってゴウゴウ流れてたんだぜ」


 ラリーは上流に見える高い山を指さした。


「あっちで雨がザーザー降るとよ、その次の日のグランリバーは水でいっぱいいっぱいになるんだ。その辺の砂利だけじゃなくて、でっかい岩や木なんかもゴンゴン流れてくる。橋を作ってもバンバン流されちまうもんで、ここには橋が無いんだ」


「雨が止んでもしばらくは水があるんだが、やっとここまで引いたんだ。俺の見立てでは明日には渡れるぜ。悪いことは言わねえから今日は村で泊まりな」


 この村は川を渡る客を相手にした宿場らしい。

 アイ姉と相談して、ここで一泊することにした。


 ラリーに紹介された宿に向かう。

 宿の紹介もラリーの仕事の一つなのだろう。


「いらっしゃいませ、お疲れさまでございました」


「2人なんだけど」


「どうぞどうぞ、良いお部屋が空いてますよ。お二人一部屋でよろしいでしょうか?」


「……」


「あ、それでお願いします」


 僕が答えに躊躇していたら、後ろからアイ姉が答えた。


「かしこまりました。まずはご一泊で承ります」


「まず?」


「失礼いたしました。まずは、と申し上げましたのは、明日には川が渡れそうだという話が『渡し』の方から来ていたものですから、もう明日にはお立ちになるのではないかと察した次第でして」


「うん、まあ、そのつもりだけど」


「ええ、ええ、それで、ごくたまにではあるのですが、『渡し』を付けずに川を渡ろうとなさるお客様がいらっしゃるのです」


「『渡し』を付ける?」


「さようでございます。『渡し』というのは川の専門家でございます」


「『渡し』は、その日その時の川の流れを読みまして、より安全な道を案内いたします。また、水のある所ではお客様のお荷物をお持ちしたり、水が深い時にはお客様を肩車したりしてお運びします」


「そのようなわけでして、川を渡お渡りになる方はお一人につき『渡し』を一名付けるというのが原則でございます」


「ただ、渡し賃が必要でして、それをお嫌いになるお客様が無理に川を渡ろうとなさって……」


「流される、と」


「さようでございます」


「お流されになられたお客様は、翌朝、当方のベッドでお目覚めになられます」


「それでもう一泊となるわけだ」


「そのとおりでございます。まず、と申し上げたのはそのような次第でございます」


「川に水が全く無い日であれば『渡し』がいなくても渡れるのではありますが、明日ではまだ相当に水が残っていると存じます。差し出がましいようですが、ぜひ『渡し』をお付けください」


「さっきラリーって人に会ったんだけど」


「ラリーでしたらよろしいかと。最近『渡し』になったものですが、足腰しっかりしておりますし、流れの読みも的確です」


「わかった、ありがとう。明日渡るつもりだから、ラリーに頼んでみるよ」


「そうなさってくださいませ」


「長々と申し訳ございません。こちらがお部屋の鍵でございます。お食事は1階奥の食堂でいつでもどうぞ」


 僕とアイ姉は2階の部屋に向かった。


 僕は少しドキドキしていた。


 ギルドの宿舎は狭いながらも一人一部屋だった。


 初めての旅、初めての二人部屋。


 できないのは先刻承知の上だが、女の子と二人っきりだ。


 ダブルベッド?


 二組の布団が並んでる?


 それとも……


「二段ベッドだったか……」


「ショータ、上と下、どっちが良い? わたし寝相悪いから下がいいなー」


「じゃあアイ姉は下ね」


「ありがとー。ショータ」


……それで良いんだけどさ……

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