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街道を東に歩いていると一つの町に到着した。
まだ昼頃だったのでそのまま進むと、今度は大きな堤防にぶつかった。
堤防の上まで登ると目の前には広大な砂利が広がっていた。
「これは……川……?」
「うん。これはグランリバーって言う川だよ」
「砂利ばっかりで水が無いけど」
「うん。でも、川だよ」
「これ、このまま渡れるんじゃない?」
「うーん。どうかなあ」
「兄ちゃん兄ちゃん、やめときな」
唐突に、男が会話に割り込んできた。
初期装備に近い半袖半ズボン。
そこから筋肉がガッチリ付いた、日に焼けた手足が出ている。
「悪い悪い。話が聞こえたもんでね」
「俺はこの村で川の『渡し』をやってるラリーってもんだ」
「この川、今は水が無いけどな、3日前はこの堤防ギリギリまで水があってゴウゴウ流れてたんだぜ」
ラリーは上流に見える高い山を指さした。
「あっちで雨がザーザー降るとよ、その次の日のグランリバーは水でいっぱいいっぱいになるんだ。その辺の砂利だけじゃなくて、でっかい岩や木なんかもゴンゴン流れてくる。橋を作ってもバンバン流されちまうもんで、ここには橋が無いんだ」
「雨が止んでもしばらくは水があるんだが、やっとここまで引いたんだ。俺の見立てでは明日には渡れるぜ。悪いことは言わねえから今日は村で泊まりな」
この村は川を渡る客を相手にした宿場らしい。
アイ姉と相談して、ここで一泊することにした。
ラリーに紹介された宿に向かう。
宿の紹介もラリーの仕事の一つなのだろう。
「いらっしゃいませ、お疲れさまでございました」
「2人なんだけど」
「どうぞどうぞ、良いお部屋が空いてますよ。お二人一部屋でよろしいでしょうか?」
「……」
「あ、それでお願いします」
僕が答えに躊躇していたら、後ろからアイ姉が答えた。
「かしこまりました。まずはご一泊で承ります」
「まず?」
「失礼いたしました。まずは、と申し上げましたのは、明日には川が渡れそうだという話が『渡し』の方から来ていたものですから、もう明日にはお立ちになるのではないかと察した次第でして」
「うん、まあ、そのつもりだけど」
「ええ、ええ、それで、ごくたまにではあるのですが、『渡し』を付けずに川を渡ろうとなさるお客様がいらっしゃるのです」
「『渡し』を付ける?」
「さようでございます。『渡し』というのは川の専門家でございます」
「『渡し』は、その日その時の川の流れを読みまして、より安全な道を案内いたします。また、水のある所ではお客様のお荷物をお持ちしたり、水が深い時にはお客様を肩車したりしてお運びします」
「そのようなわけでして、川を渡お渡りになる方はお一人につき『渡し』を一名付けるというのが原則でございます」
「ただ、渡し賃が必要でして、それをお嫌いになるお客様が無理に川を渡ろうとなさって……」
「流される、と」
「さようでございます」
「お流されになられたお客様は、翌朝、当方のベッドでお目覚めになられます」
「それでもう一泊となるわけだ」
「そのとおりでございます。まず、と申し上げたのはそのような次第でございます」
「川に水が全く無い日であれば『渡し』がいなくても渡れるのではありますが、明日ではまだ相当に水が残っていると存じます。差し出がましいようですが、ぜひ『渡し』をお付けください」
「さっきラリーって人に会ったんだけど」
「ラリーでしたらよろしいかと。最近『渡し』になったものですが、足腰しっかりしておりますし、流れの読みも的確です」
「わかった、ありがとう。明日渡るつもりだから、ラリーに頼んでみるよ」
「そうなさってくださいませ」
「長々と申し訳ございません。こちらがお部屋の鍵でございます。お食事は1階奥の食堂でいつでもどうぞ」
僕とアイ姉は2階の部屋に向かった。
僕は少しドキドキしていた。
ギルドの宿舎は狭いながらも一人一部屋だった。
初めての旅、初めての二人部屋。
できないのは先刻承知の上だが、女の子と二人っきりだ。
ダブルベッド?
二組の布団が並んでる?
それとも……
「二段ベッドだったか……」
「ショータ、上と下、どっちが良い? わたし寝相悪いから下がいいなー」
「じゃあアイ姉は下ね」
「ありがとー。ショータ」
……それで良いんだけどさ……




