第1章 十人十色の強制ミーティング PART4
4.
……これが本当に政府のやり方なのか?
横暴すぎる、とても独身税を払っている者に対する仕打ちだとは思えない。
怒りを隠さずマネージャーを睨みつけながら想像する。仮に二回目の投票で男性陣に自分が選ばれ、女性陣に零無が選ばれたら、強制的に結婚しなければならないのだ。
こんなこと、まかり通っていいはずがない。
「はぁ? 何よ、それ。私達はハムスターじゃないっつーの」
赤の女が大げさにジェスチャーを加えながら嘆いている。
「同じ部屋にいきなり押し付けられても子供なんてできるわけないじゃん。冗談にしてもないわー萎えるわーありえないわー」
……全くの同意見だ。
彼女の言葉に頷き、共に生活することを想像する。
この女と同棲すると考えるだけで体の底から震えがきている。彼女のように何でも感情を表に出す女は苦手だ、自分の領域に裸足で踏み込んできては荒らし、何でも自分の都合がいいように解釈してしまうに違いない。
こんな女と一緒に住むことなどできるはずがないっ!
「……一つ、訊いてもいいですか?」
隣にいる参浦が静かに手を上げた。
「もし結婚したとして……その後、夫婦生活が上手くいかなかった場合、離婚はできるのでしょうか?」
「原則でいえばできません。しかし新婚期間、三年の間に子供ができない場合は特例として認めることがあります」
シロウは穏やかな表情で答える。
「あくまでも子供がいる環境を重視していますので、お互いの生活が上手くいかなければ認められるケースもあります。もちろん先ほどもお答えした通り、子供を作ることに重点を置いて頂きますので、その可能性は低くなります」
「……なるほど」
「月日を追う毎に、政府から用紙が送られることになっておりますので、最終的には体外受精で子供を作る可能性まで出てきてしまいます」
「……つまり、子供を作る方法は性行為だけではないということですね?」
「そういうことです」
シロウは胸を抑えながら続けていく。
「私も心苦しい部分はあります。しかしここで4組のカップルが決まることは確実なのです。であれば、皆さんに少しでも好条件の中で結婚して頂きたいと思っております」
マネージャーは悲痛な胸の内を訴えている。自分がそのメンバーに含まれていないにも関わらず熱を持って話している。
「この中には面識がある方がほとんどだと思います。制服の色で担当部署はご存知でしょう。ですが皆さん、詳しくはご存知がないと思いますので、皆さんでパネルを見ながら簡単な自己紹介をして貰いましょう」
シロウがパネルに手を添えると、再び電源が入った。個人の席にある映像機器だけでなく彼の横に巨大な液晶パノラマが作動していく。
「順番は……零無さんから時計回りでお願いします。時間がないので手短に。一時間までに第一投票が行われなければ、《《次の条件》》が発動されしまいます」
全員に戦慄が走る。どうせ、時間を追う毎に悪条件が重なっていくのだろう。言い逃れする時間もないという訳だ。
「……わかりました。では私から事故紹介をさせて頂きますが、その前に一言いわせて頂きます」
零無が彼の言葉を受けて無愛想に席を立った。
「私はウェディングプランナーをしておりますが、生涯結婚するつもりはございません。全力でこの危機は回避させて頂きます」