生徒の成績と塾
教師は出世のために、生徒の成績を上げようとしているわけではない、読んでいただけたでしょうか。
では、塾の場合は?
成績を上げれば、塾の宣伝になるのでは。微妙なところですね。
中間テストの数学が40点代だったのに、塾に入ったら、期末で90点になった。
こんなの、よくありますよ。もちろん、本人も母親も大喜びです。でも、定期テストで一回だけ良い点を取ったくらいで、それを吹聴してまわる人はあまりいません。直接宣伝には繋がらないですね。
ただし、塾に対する信頼度は、アップしますよ。百パーセントにね。人間関係が好転すれば、全てがうまく流れる。どの世界でも共通だと思います。
これをチラシに書けば。これも微妙です。
本当にあったことは、広告には書きづらいのですよ。なにしろ本人が嫌がりますからね。
何も知らない親戚とかに、絶対に見られたくないですよね。知り合いが読めば、90ではなくて、40点のほうに関心が行きますからね。
センター試験の時に妊娠していた。つわりで、気持ち悪かった。試験監督がやって来て、「大丈夫?」と聞いてきた。「妊娠しているんです」と答えたら、試験監督が逃げて行った。結局、受験せずに中絶して、浪人した。生まれて来れなかった赤ちゃんのためにも、頑張ろうと思った。ここから大逆転が始まった。
こんなの書けませんよ。いくら真実でもね。書けば、本人に訴えられちゃいますよ。
奇跡の合格、なんてのもありますよ。でも、それが奇跡であれば、あるほど、前の状態はボロボロなわけで、公表されたら困るんです。
第一話がああいう内容になったのも、不正入試をやっていた人達は、お亡くなりになっている方が多く、苦情が来ることはないだろう、と判断したからです。
この文章は、私の経験を書いていくつもりなので、当事者がいます。その方々は、私の正体をすぐにお気づきになると思いますが、どうぞ、お見逃しになってください。お願いいたします。
でも、成績を上げれば、塾なら全てうまく流れるのですよね。
一時期だけはね。
夢が叶えば日常になる。それがおきるのです。
40から90点になったら、基準も90点になるのです。次に60点を取ったら、大騒ぎです。もともと、40なのだから、60点でも良い点だ、とは、ならないのです。30点下がった、と、なってしまいます。これは痛いですよね。
地元のトップ校に奇跡の合格を果たした人がいます。不合格後の進路を話合うために、発表の日に、父親が単身赴任先から帰ってきました。私以外、誰も受かるとは、思っていなかったようです。
高校に入学すると、いきなり学年で最下位でした。定期テストも赤点だらけです。奇跡の合格だから当たり前なのですが、合格に浮かれて、入学後の準備をしておかなかったのもあります。
当然、塾も止めていきました。
塾の経営を考えると、成績を上げようとか、良いところに受からせようとか、冒険はしないほうが良いです。ひたすら安全策をとり、確実に受かる学校に入れれば良いのです。奇跡の合格も、一つの合格だし、受かる見込みのない、見栄だけの記念受験も不合格には変わりがないのです。
では、何故成績を上げようとするのか?
それは、教師や塾講師になる前から、もともと、そういう価値観だった、ということです。
得するどころか、損すると解っているのに、つい、習性から抜け出せずに、やってしまうのです。
塾業界では、こういう規則が有るところが多いです。
生徒に勉強しろと、言うな!
生徒の成績を上げようとすると、塾は潰れてしまうからです。




