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死より怖いドロドロ紅茶

 前回は、我が人生の師、不登校の彼が、

 死にたい

 と言ってることを書くつもりだったのですが、話がズレてしまいました。

 不登校の彼だけではなくて、今の若い人に明るい未来なんか感じないんですよ。私は。

 まあ、今の若者に未来がないのは、我々の世代の責任なんですけど。

 それに、

 男は強くなければ、生きていけない

 生きていくのに資格などいらない、邪魔するものがあったら全て叩き潰せ

 という考え方ですから、

 死にたい人は死んじゃっていいんですよ。

 本来なら死んじゃっている、無茶苦茶ラッキーな私からすると、

 生命の尊厳

 なんて有りません。

 なお、

 本来なら死んじゃっている

 の話は、「闘病生活入門」に書いていくつもりなので、読んでみてください。

 死にたい

 と、不登校の彼に言われちゃうと、塾は困るんですよね。勉強させる方法がないから。

 明るい未来のない彼に、勉強させても

 無駄

 なんですよね。

 それでも、

 死にたい

 というのは、

 人生をナメた行為

 ですからね、言ったんですよ。

 「今は医療が発達しているから、死にたくても、そう簡単には死なせてくれないぜ。

 何十年も闘病生活を送ることになる」

 これには、彼も食いつきましたね。っていうか、その時たまたま教室にいた浪人の受験生も興味津々でしたね。

 大体の受験生が、人生とか進路とかを、

 真剣に、自分に正直に考えるようになる

 のは、高三の二月頃ですね。つまり、受験戦争の敗北が見えた頃です。

 自分が本当にやりたいことは何か?

 なんて、大きな挫折がないとわからないんですよ、普通の人は。

 浪人の彼も、高三の二月くらいから、浪人の四月くらいまで、いろいろと考えていたようです。

 不登校の彼も、彼も馬鹿ではないですからね、

 このままの生活を続けていけば、生活習慣病になる、

 というよりも、

 もう、十五年も学校に行ってないわけですから、すでに生活習慣病になってる

 というのが、頭の片隅にあるんでしょうね。

 死なせてくれない

 は、昭和天皇の崩御を念頭に言ったんですけど。

 あの時、東大の医学部の教授が、

 大量の血液さえあれば、人間は死なない

 ことが、初めてわかった、と言ってました。

 崩御はベストなタイミングでしたね。北朝鮮のミサイルと同じで、国民生活にあまり影響を与えないように。まあ、北朝鮮のミサイルは、

 都議選で自民党が敗北したから

 なんでしょうけど。自民党にとっては、

 悪い流れを変えて

 くれましたね。

 話をもとへ戻すと、その当時は、「朝鮮人と私」の第一話で書いた、

 病院には、北朝鮮よりも人権がない

 実態を、まだ、目撃していなかったんですよ。だから食事制限の話をしただけです。

 彼らに話した内容は、

 「闘病生活っていうと、ガンが悲惨だけど、ガンは痛くて苦しいけれど、何十年も続くわけではないよね。

 希望通り、早く死ねるよね」

 「何十年も続く地獄といえば、生活習慣病の食事制限、その中の水分制限がこの世の地獄だよね。

 人間の体の大部分は水だからね、人間にとって最も必要なものは水なんだよ。

 水よりも欲しいものなんて、人間にはない。それは、風呂上がりに、ビールとかジュースとか水分をとったときの

 あの、うまさ

 で、わかるよね。

 その水が、水分制限がつくと、一日800グラムとか、しか飲めなくなるんだよ。ごはん、とか、食事にも水分は含まれているから、それも合わせて、800グラムなんだよ。この世の地獄だろ?

 水分制限は経験したことないから、どのくらい地獄かは、わからないんだけれども」

 「その次に悲惨なのは、タンパク制限かな。タンパク制限がつくと、一日30グラムとか、しかタンパク質がとれない。

 医者の話によると、イクラを食べる時に、数を数えて食べるのだとか。イクラ嫌いだから関係ないけど。イクラ嫌いで本当によかったよ」

 「例えば、ファミレス行って、ハンバーグを頼む。150グラムのハンバーグって、大きくないよね。それでも五分の四残さないと、30グラムにはならない。

 ハンバーグ30グラムって、こんなものだよ」

 と言って、指で円を作ったら、二人とも顔を引き攣らせていました。

 ハンバーグ、五分の四残せ

 って、若い人には地獄ですよね。

 「ハンバーグ、五分の四残しても、それでも、30グラムを軽くオーバーしちゃう。

 30グラムっていうのは、あくまで一日の量で、一回で食べて良いものではない。しかも、タンパク質は、ハンバーグだけではなく、ごはんとか他の食材にも含まれているからね。

 もう、ほとんど、

 ハンバーグ食うな!

 っていう世界だ」

 「肉、魚、卵、乳製品には、大量にタンパク質が含まれているから、大体、これと、似たような状況だ」

 「タンパク制限がつくと、まあ、カリウム制限もつくね。カリウムは野菜や果物に多く含まれるから、例えば、野菜を食べる時、野菜をわざわざお湯に浸したり、お湯で洗ったりして、

 栄養やうま味成分を流す

 んだよ。頭いかれてるだろ?」

 この時は言わなかったのですが、「料理のさしすせそ」と呼ばれる

 砂糖、塩、醤油、味噌

 は、使ってはいけません。酢自体は害がないのですが、酢はほとんど水分なので、量が問題となります。

 砂糖、塩、醤油、味噌も極少量なら良いのですが。

 この条件で、美味しい料理が作れたら、まさしく、

 神

 ですよね。

 「ほとんど食う物がないから、カロリーが足りなくなっちゃうんで、紅茶に片栗粉などの、砂糖ではない粉を入れて補うわけ。紅茶は比較的カリウムが少ないから、飲んでもいいらしくて」

 「この前、入院したら、食事に紅茶がついていたんだけれども、カロリー合わせるために粉入れ過ぎちゃって、 

 紅茶がドロドロ

 だったんだよね」

 と言ったら、二人とも引いていました。

 それから、我が人生の師、不登校の彼は

 死にたい

 とは、言わなくなりました。


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