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8 愚痴ります

今話もよろしくお願いします。

本日も2話投稿します。

 師匠との王都での暮らしは続いている。




 ジュディさんとの剣の修行や、ベレフ師匠との魔法の修行は相変わらず続いていて、師匠の助手みたいな立場は、研究室で過ごしているからか、本当に助手みたいになってきた。


 そのわりには本とか資料とかを広げまわしたりしないから、片づける必要が無くて暇だし、たくさんの報告書とか、手紙とかも、整理するけど中身は見ちゃいけないし、中身が見れないとベレフ師匠が何を研究しているかも分からないし、つまり暇。


 だったら研究室から出ればいいじゃん、って話だけど、この研究所って広いから迷子になる自信があるし、仮に研究所から出れても、王都内で迷子になる自信がある。


 だったらジュディさんとの修行が終わったら、そのままジュディさんにくっついてればいいんじゃん、って話だけど、ベレフ師匠に提案してみたら、あまり乗り気じゃなかったから強く言いづらい。


 それに仮にくっついていって王都を巡った後、研究所までジュディさんに送ってもらったら、今度は研究室まで送迎が無いと迷うから、迎えに来てもらわないといけない訳で、僕がふらふらすればするほど師匠の迷惑になるってことで、つまり師匠にくっつくしかなくてすごい暇。


 狩りはもちろんしてないし、薬も作ってないから売らないし、それで食材も買わないし、しかも料理もしないし、でも助手みたいな仕事はあるんだけど、僕がしたいのはそういうことじゃないっていうか、とにかく暇だし、単刀直入に言えばつまらない。


 今日もジュディさんとの朝練が終わったら、研究所までジュディさんに送ってもらって、研究所の入口からはベレフ師匠に研究室まで連れて行ってもらって、師匠が朝食の準備をする間に、資料室まで指定された資料を取りに行く日々が始まるよおおおおん。つまんなああああい。


「クリス、おはよう」


「あ、おはようございます」


 いかにも研究者!って感じの、髪の毛伸ばし放題ボサボサ紺色頭のトッシュさんは、ベレフ師匠と研究範囲が被ってるみたいで研究室が近いし、資料室も共有してるからよく会うんだけど、目つきが悪いし口数が少ないし、恐いなあ、って思ってたら、ちゃんと挨拶してくれるし、資料室で背が届かなくて途方に暮れてたら代わりに取ってくれるし、実は優しい人なんじゃないかなあ、って思ってる。


 でも、だからって気軽に話していい相手な訳が無いし、その内容が、研究室暮らしつまんなーい、だったりするわけで、そんなこと絶対に研究者のトッシュさんには言えないし、って悶々としていたのが顔に出ていたのかもしれない。


「何かあったか」


 長い前髪を結んでピンで留めてるからおでこが全開になってて、険悪な目つきが丸見えだし、眉を顰めてるのもハッキリと見えて心臓に悪いけど、心配してくれてるこの優しいかもしれない人に……愚痴るのか?愚痴っちゃうのか?ガキの戯言として流してくれるかな?もういいやどうにでもなーれ!軽く流してくださいお願いします!


「えっと、たいしたことじゃないんですけど」


 険悪な目つきが続きを促している。心臓に悪いなあ。


「僕、最近王都に来たばっかりで、道を覚えてなくて、王都どころか研究所内も1人で出歩けなくて」


 口に出すとめちゃくちゃ情けない。泣ける。


「そうか」


「道を覚えて出歩けるようになってもししょ……ベレフさんを手伝わないといけないから結局外に出れないんですけど……でも、外、出たいなあ、なんて」


 思ったよりも暗い声が出てしまったし、あはは、なんて笑ってみても頬が引き攣ってるし、トッシュさんの険悪な目つきに憐れみが込められてきているし、なんだかどんどん惨めになってきてないかなあ。ああ、きっと僕はこのまま研究所の地縛霊になっちゃうんだ。なんちゃって。どんどん悲しくなってきた。


「ごめんなさい、朝からこんな話しちゃって……失礼しますね」


「いや……ベレフコルニクス先生にも相談しろよ」


 ですよねえ、ベレフ師匠に言わないと始まらないですよねえ、でも研究者に研究所つまんなーいなんて言えないじゃないですかあ、それに外に出たいって話は王都に来てすぐにしたし、1週間経ってまた言うのもなあ、って思うと結局言えないんですよお。


「はい、ありがとうございます」


 そんなこと言えないけどね。それにトッシュさんの雰囲気からして、憐れみはしても僕を邪険に扱ってる感じはなかったし、トッシュさんはやっぱり優しい人みたい、って分かっただけで僕は嬉しいよ、またねトッシュさん。




 僕が外に出れるようになった。


 もしかしてトッシュさんがベレフ師匠に何か言ったのかな、って内心焦ったけど、どうやら最初に師匠に相談という名の愚痴をこぼした時に、師匠がすぐに助手と僕の護衛を手配したみたいで、それならそうと言ってくださいよ、って文句を言えば、きょとんとした顔で、言ってなかったっけ、って返されてどっと疲れた。


 僕が自由に外を歩き回る記念すべき初日、僕が朝練から帰ってくる時間に合わせて、研究所の入口で助手と護衛と僕とベレフ師匠が集まるっていうから、どんな人なのかなあ、ってわくわくしてたら、助手がジュディさんで護衛がトッシュさんだった。意味分かんない。


「トッシュさん、よろしくお願いします!」


「よろしく」


 外出するときのトッシュさんはローブを羽織っていて、なぜかフードまで被っていた。前髪は下ろしていて、銀縁メガネでいくらか目つきの悪さが緩和されているといっても、フードを被ったローブ姿の男が少年の後ろをつきまとってるって、どうなの……。



 出発してすぐに警備隊の人に呼び止められた。ですよね。

ありがとうございました。次話もよろしくお願いします。

外出……もしかしてわんわんおチャンス……?!

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