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60 出ます

 バタバタしてたけど、今って夏休みが始まったばかりなんだよ。知ってた?




 知ってるけどね。分かってるけどね。でも少し忘れかけてた。僕は金欠だ。誰だ、貴族の中に紛れ込むために礼服を2回も借りたのは。僕だよ! 分かってるよ、でも仕方ないじゃないか……! 結果的にランカスター家のことを知れたんだ! 金欠でも僕は後悔しないぞ……しないんだ……。


 というわけで久しぶりにレジーにくっついて小遣い稼ぎに奔走することになった。レジーとテッドと僕の3人で王都の外へと出てきている。6人でやっていたころが懐かしい。他の3人は何をやってるんだろう。どうして僕はお金がないんだろう……。


「クリスがいるから楽になるなー」


「ああ……ただ、すまん、今回のは……」


「いいよ、気にしてないよ」


 今回の依頼は調査というか、捜索というか、捕獲というか……。最近王都の周辺で「出る」らしいので、どうにかしてくれという、なんとまあ、うん、どうしろと……。


「今日は受けられる依頼がな……」


「うん、何度も聞いたよ」


 レジーが申し訳なさそうにしてる。僕のわがままでくっついてきてるんだからそんな気にしなくていいのに。それにいろいろ集めたり狩ったりするのに比べれば楽だからいいと思う。調べたっていう体で報告すればいいだけだ。見つけてしまえば見つけたって報告すればいい。まあ、「出た」ら大変かもしれないけど。


「大丈夫だってー」


 テッドがレジーにじゃれつくように軽く体当たりをしている。申し訳なさそうな顔をしたままのレジーにすぐに引きはがされる。その様子を見ながら王都の西に位置する森へと向かう。



 今年に入ってから「出る」と言われている場所は王都内も含まれているけど、王都の外、特に森の中で目撃された場合には必ずと言っていいほど同時に見つけられる怪奇現象も相まってついにギルドに依頼されるまでになった。


 それでその目撃情報だけど、正体不明の「黒い影」が多くの人に確認されているらしい。初めは見間違いかと思うほどに一瞬で視界から消え去る黒い影。ただ、それもみんなが見ていれば間違いではないだろう、ということで若干気味悪がられていた。しかも最近、その黒い影が見られた近辺で大量の血と戦闘跡だけが残っていて死体も何もないというさらに不気味な現象まで起きているのが確認され始めた。


 これで誰かいなくなってるなら大問題だけど、不思議なことに誰もいなくなっていない。いったいこの血は何なのか。これは黒い影が起こしているのか。黒い影は何者なのか。不気味だけど危険なのか分からない。そして先日、ついに王都内でも同様の事件が起きた。もちろん誰もいなくなってはいないものの、その凄惨さは誇張されて王都内に広がり、不安を煽ることとなった。


 王都の人達からの不安の声を受けて依頼は出したけど、ランクの高いギルド員に受けてもらえるほどの問題だとは言い切れない。しかし初心者に受けさせて死なれても困る。という訳で強くも弱くもない層のギルド員から、毎日一定件数こなしてもらっている、という状態のようだ。


「ま、ここまで来たんだ」


 黒い影に関して王都に流れている噂なんかをレジーとテッドから聞いていると、不意にレジーが立ち止まった。前を向けば、もうすぐ森に入ろうかというところだ。レジーが僕の方を向いてニヤリと笑う。


「ちゃんと稼げよ?」


 うん? いや、依頼は黒い影の件しか受けてないのに、それで稼げってどういう……あ、あれ、もしかして、もしかするのか。いつの間にか先に森の中に入っていたテッドが跳んで戻ってくる、かと思えば僕に向かって何かを投げてくる。咄嗟に受け取った何かを見れば……これは……。


「なんかあった! それ食えんの?」


 指先程度の小さな実がいくつか連なっている。懐かしいな、これ、ここにもあるんだ。王都に来る前の生活では独特の甘酸っぱさが好きで、森で見つけてはよく食べてた。ベレフ師匠もこれでお酒を作ってたっけな。でもねえ……。


「どう見ても熟してないでしょ……」


「え、そうなの」


「緑色で硬いのに食えるか」


 それもそうかー、とテッドが頭を掻いている。あと1,2か月で赤くなってただろうに、ごめんなさい、秋の実り。心の中で謝罪を告げてから捨てようとしたところで、テッドが僕の手から緑色の硬い果実を受け取る。何か気になることでもあるのだろうか。


「熟してなかったらどんな味すんのかな」


 止める間もなく噛り付く。すぐに表情が固まり、吐き出す。何かを叫びながら跳んでいった。何してんだ。


「馬鹿だな」


 レジーが目を細めてテッドが姿を消した方向を見ている。苦いか酸っぱいか味がしないか、それにしても熟していない実を食べるだなんて……。都会育ちは一味違うってことなのだろうか。


「手伝う気はあるみたいだから、うまく使ってくれ」


 もちろん、俺も手伝うからな、と僕の頭をくしゃっと撫でてからレジーが森へと入っていく。さすが、みんなの頼れる兄貴ィ!


 この時期に採って売るなら、何があるだろうか。いくつか薬草を思い浮かべながらレジーに続いて森の中へと入っていく。はっきり言って、依頼のことは頭から消えかけてた。



「見てコレ。ビックリでしょ」


 突然テッドが黒い何かを抱えて僕の目の前まで持ってきたのを見てビックリした。何捕まえてんの。

ギ、ギリギリ隔日以上更新維持ですよォ……ヘヘヘ……。

え、明日、31日? や、やだなあ、冗談キツイっすよォ……。

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